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パラレルタイム

第16話 - 星に願いを

4,462

2019年06月06日

#ファンタジー

#短編集

テラーノベル

イズミ

（…どうしてこんなことになっちゃったんだろう？）

イズミ

（オリンピックも夢じゃないってコーチに言われてたのにさ）

イズミ

（ああ、もうサイアク！）

イズミ

（誰か助けてよ！）

イズミ

（…あ、流れ星）

イズミ

（流れ星にお願いをしたら、なんとかなるかな？）

イズミ

（お願いします！）

イズミ

（もう一度、飛び込みができるように──）

イズミ

え？なに？

イズミ

流れ星がこっちに近づいてくる？

イズミ

…嘘？

イズミ

流れ星じゃない？

イズミ

…UFO？

イズミ

（え…どういうこと？）

イズミ

（なにこれ？）

イズミ

（上空にUFOが浮かんでるんだけど）

イズミ

（UFOから誰か飛び降りた！）

イズミ

（あんな高さから飛び降りたら死んじゃうよ！）

宇宙人

イズミ

（目の前に落ちてきたけど…）

イズミ

（え…もしかして死んじゃった？）

宇宙人

イズミ

あの…大丈夫ですか？

宇宙人

はろー、にーはお

イズミ

うわ、立ち上がった！

宇宙人

ぐーてんたーく、こんにちは

イズミ

こ…こんばんは…

イズミ

あんな高さから落ちてきて、怪我ひとつしてない…

宇宙人

当然だ

イズミ

しゃ、喋った！

宇宙人

あの程度の高さから降りて、ケガなんかするわけないだろう

イズミ

（あの程度って…高層ビルくらいあったけど）

イズミ

（でも、本当に全然大丈夫そう。体の作りが違うのかな…）

イズミ

（まさか本当に宇宙人！？）

宇宙人

私の言葉、わかるか？

イズミ

は、はい…

宇宙人

よかった、翻訳機は正常だ

宇宙人

ここへ来る前に立ち寄った星では、
言葉が通じなくてとても苦労したからな

イズミ

あの…やっぱり宇宙人さんなんですか？

宇宙人

いかにも

イズミ

うそ…見た感じ普通の人っぽいのに…

宇宙人

どうやらこの星の生物は、我らと作りが似ているらしいな

イズミ

もしかして地球を侵略するためにやって来たとか？

宇宙人

馬鹿を言うな

宇宙人

銀河の片隅にあるこんなちっぽけな星にはなんの興味もない

イズミ

…じゃあ、なにをしに？

宇宙人

宇宙船を動かすために必要なエネルギーがあと少ししかない

宇宙人

困り果てていたとき、この星を見つけた

宇宙人

この星にはその燃料が豊富にある

宇宙人

はるか上空からでも、大量の燃料を確認することができた

宇宙人

少しだけ分けてもらえると嬉しいのだが

イズミ

（石油とか石炭のことかな？）

イズミ

ちょっとくらいならかまわないと思うけど…

イズミ

でも、どうして私のところに？

宇宙人

おまえの発する巨大な思念パワーに引き寄せられてしまったようだ

宇宙人

なにか大きな悩み事があるのだろう？

宇宙人

タダで燃料をもらうのも申し訳ないから

宇宙人

お礼として、おまえの悩みを解決してやってもいいぞ

宇宙人

一体、なにをそんなに悩んでいるんだ？

イズミ

宇宙人さんがお悩み相談？

宇宙人

なんだ？不満なのか？

宇宙人

我々の星の文明はひじょうに進んでいる

宇宙人

原始惑星に住む下等人種の悩みなんて、
たやすく解決できると思うが

イズミ

わかりました

イズミ

じゃあ、聞いてください

イズミ

…私、水泳の高飛び込みの選手なんです

イズミ

オリンピック出場も夢じゃないと言われて頑張ってきました

イズミ

でも練習中、着水に失敗して背中を痛めてしまって…

イズミ

怪我はたいしたことなかったんだけど

イズミ

それ以来、飛び込むことが怖くなってしまったんです

イズミ

飛び込み台にのぼると、脚ががくがく震えて

イズミ

立っていることさえできなくて…

宇宙人

もう一度、飛び込めるようになりたい

宇宙人

そういうことか？

イズミ

はい…

宇宙人

そんなのは簡単だ

イズミ

え？

宇宙人

今からおまえの額に手を当てる

イズミ

ちょ、ちょっと…

宇宙人

心配するな

宇宙人

頭の中から、おまえの恐怖心を取り除くだけだ

イズミ

宇宙人

終わったぞ

宇宙人

これでもう大丈夫だ

イズミ

え？

宇宙人

なんだ、その表情は？

宇宙人

疑っているのなら、今から飛び込んでみればいい

イズミ

だけど、こんな真夜中にプールには入れないし…

宇宙人

なんの問題もない

宇宙人

物質転送装置を使って、おまえをプールに転送してやろう

イズミ

え…ここはプール？

イズミ

いつの間にか水着姿になってるし…

イズミ

なにこれ、どういうこと？

イズミ

あたし、夢でも見てるのかな？

イズミ

…飛び込み台

イズミ

宇宙人さんの話が本当だとしたら…

イズミ

…試してみようかな？

イズミ

…怖くない

イズミ

飛び込み台の上に立っても全然怖くない！

イズミ

これならきっと飛び込める！

イズミ

宇宙人さん、ありがとう！

イズミ

あたし、今から飛び込んでみるね！

イズミ

えいっ！

宇宙人

願いがかなってよかったな

宇宙人

じゃあ約束どおり、宇宙船を動かすための燃料──

宇宙人

この星では『水』というのか？

宇宙人

ちょうどこの場所にいっぱいあるみたいなので、
これをすべてもらっていくことにしよう

宇宙人

転送装置を使えば一瞬だからな

イズミ

あ…

宇宙人

飛び込めたみたいだな

宇宙人

まったく、その程度の高さになにを怖がっていたのやら

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高層ビルの高さから落ちて平気な宇宙人だから、飛び込み台の高さでは死なないと思ったんだろうね。

フォローしました！！

すごすぎる。めっちゃうまい！！

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