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透明エレジー

1 - 透明エレジー

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2018年08月19日

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八月9日学校の最上階

そうここは屋上だ

そこに君が1人

揺れる影がずっとずっとずっと

一ノ瀬楓

僕らの愛はもう見つかりはしないでしょう

ーーーーーーーーーーーーー

私は思わず息をのむ

楓が屋上から飛び降りた

その事実が受け止められずに

私は呆然と立ち尽くしていた

一ノ瀬紅葉

あ………あ……

一ノ瀬紅葉

か……えで

次第に教師達が集まってくる

そんなことも知らずに

私はその場を去ろうとする

私に気づいた教師が近づいて来て

私に話しかけていた

そんなことまるで気づいて居ない様に

階段を降りようとする

一ノ瀬紅葉

楓が…待ってる…

一ノ瀬紅葉

楓が…家で

いつものように待っている

そう思っている私に

その教師は現実を突きつけてくる

教師

楓さんは!さっきここから飛び降りた!

教師

紅葉さんも見ていただろう!

一ノ瀬紅葉

い…や…

一ノ瀬紅葉

いやぁぁぁぁぁ!!!

私は倒れた

気がつくと白い天井が目に入る

次に周りを見渡す

周りには誰もいない

心には何かぽっかりと穴が空いたような感覚がある

そんなことも気にせず

私は帰路をたどる

街中に1人

いつもは2人で帰っていた道

今ではひとりだ

楓を失ってからの生活は

私にとってはとても苦痛だった

生まれてからずっと一緒で

お互いのことはなんでも知っていると思っていた

………でも

そんなことはなかった

私は楓が学校でいじめられているのを知らなかった

なんで気づいてあげられなかったんだろう

いや…

心の奥底では気づいていなのかもしれない

一度、楓の足を見たとき痣があった

一ノ瀬紅葉

楓?どうしたの?その痣

一ノ瀬楓

あー、ちょっとこけちゃってさ

一ノ瀬紅葉

そうなんだ

一ノ瀬紅葉

気をつけなよ?

一ノ瀬楓

…うん

その後も体の所々に痣を見つけることはあった

だが私はなにも言わなかった

私はそんな自分がとても憎かった

どうしてあの時声をかけてあげられなかったんだろう

こんな生活ならもう死んだ方がまし

楓のいない生活なんか

そんな世界から消えたい

八月九日

楓が死んだ日

私は楓を探しに屋上に来た

楓を見つけた時

私は驚いた

楓はフェンスの向こう側に立っていたから

一ノ瀬紅葉

かえで……?

一ノ瀬紅葉

なんで…そんなところにいるの?

一ノ瀬楓

そんなの飛び降りるからに決まってるじゃない

一ノ瀬紅葉

なんで……!?

一ノ瀬楓

気づいてなかったの?

一ノ瀬楓

僕、クラスの奴らにいじめられてたんだ

一ノ瀬楓

だから今日死んであいつらに罪を受けてもらう

一ノ瀬紅葉

だからって死ぬことないじゃない!

一ノ瀬楓

嫌い…

一ノ瀬楓

もうみんな嫌い!

一ノ瀬楓

言っても無視する教師も!

一ノ瀬楓

いじめるクラスの奴らも!

一ノ瀬楓

気づかないふりをしてる紅葉も!

一ノ瀬楓

みんな……嫌い!

一ノ瀬紅葉

かえで!!!!

楓が飛び降りる瞬間

楓が何か言ってもいるのが見えた

でも

もうそんなことは関係ない

楓が死んでから二年後

私は屋上に来ている

死ぬために

一ノ瀬紅葉

……楓…ごめんね

一ノ瀬紅葉

私も今行くから

私が飛び降りようとしたその刹那

後ろから腕を引かれた

一ノ瀬紅葉

え……?楓…?

一ノ瀬紅葉

なん……で…

一ノ瀬楓

紅葉までは死ななくていいのに

一ノ瀬楓

あの時はごめんね

一ノ瀬楓

僕からなにも言ってなかったのにね

一ノ瀬楓

ほんと…ひどいよね…

一ノ瀬紅葉

……楓

一ノ瀬紅葉

私こそなにも言ってあげられなくてごめん

一ノ瀬紅葉

ずっと言いたかった!

一ノ瀬紅葉

ずっと会いたかった!

一ノ瀬楓

うん、私も…

一ノ瀬楓

でも、もう時間だから…

一ノ瀬紅葉

これでさようならなんていやだよぉ!

一ノ瀬楓

紅葉なら大丈夫

一ノ瀬楓

きっと…大丈夫…だから

一ノ瀬楓

笑って!

一ノ瀬楓

前を向いて!

ーずっと!生きて!ー

一ノ瀬紅葉

かえで…!

手を伸ばしても届かない

彼女はもう行ってしまったから…

でも…

私の中には彼女がいる

だから…

ーずっと一緒だよ?ー

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