大人達は顔の同じ少女二人を 強引に引き離そうとしている。
だが、色の眼の少女は もう片方の少女の しっかり握りしめている。
ドンッ
色の眼の少女は 女性の手を振り払い、 もう1人の少女に近づく。
彼女は 紫色の目の少女を 優しく抱きよせる。
いっしょにいくよ。
なかないで…
きっとこわくない。
おねえちゃんが
まもってあげるから。
第68話
『姉妹』
夜桜
夜桜は刀を地面に 刺し、身体を支える。
夜桜
夜桜
夜桜は背後から 名前を呼ばれ、振り返る。
そこには 起きて地面から立つ 朝花が映る。
夜桜
朝花
夜桜は刀を杖代わりにして 朝花にゆっくり近づいた。
夜桜
大丈夫か?
夜桜
痛いところは…
夜桜
消化液のようなのは
何もついてないな。)
朝花
朝花
朝花
朝花
夜桜
離れた場所から 緑髪の少女がこちらに ゆっくり近づいてくる。
…チカ……ナ…
シュルッ
壊れかけた白い板から 細い蔦がゆっくり3本出現し、 夜桜達に近づく。
朝花
夜桜
できてなかったか。)
夜桜
厳しいだろう。)
夜桜
あっちに出口がある。
夜桜
ここから出ろ。
朝花
夜桜
後から出る。
朝花
夜桜
夜桜
完全に破壊する。)
グイッ
夜桜
朝花は夜桜の右腕を 首にかけ、支える。
夜桜
朝花
一緒に逃げましょう。
夜桜
朝花
放って行けない!
夜桜
夜桜
俺ら2人とも死ぬぞ!
朝花
夜桜
頑固なんだ。)
夜桜
掴んでて離なせん。)
夜桜
こんな事してる内にも
あれが来ている。)
夜桜
夜桜
夜桜
先程、近づいてきた 蔦がなぜか少女の後方の地面で 静止している。
夜桜
夜桜
…イモ…ト?
夜桜
夜桜
夜桜は刀を持った手を 前に出し歩いてくる 少女に向ける。
だが、何もしてこず 少女は無言のまま 二人の1m前で止まった。
夜桜
見ているが、
何もしてこないな。)
夜桜
朝花
美鳥ちゃん?
夜桜
朝花
確か6年前に…
バコンッ!
朝花
2人は音の方へ同時にみる。
視界の先には 白い板が破損し、魔法陣が 消えていくのが映る。
夜桜
朝花
いつの間にか先程の少女は そこにはいなかった。
夜桜
夜桜
朝花
朝花が夜桜をその場で 地面へ降ろす。
すると、夜桜はそのまま 朝花の座る方に もたれかかった。
朝花
流れてるからかしら?)
朝花
救急の用具は…
朝花
どうかしら?)
朝花
夜桜
朝花
朝花
夜桜
夜桜は渋々、 朝花の背中に覆い被さる。
朝花は背中に夜桜を乗せ、 彼女の両脚を持ったまま 立ち上がる。
そして、 朝花は夜桜を背負いながら 小走り気味で歩き始めた。
朝花
夜桜
夜桜
朝花
朝花は救急マークの ついた箱か机の上に あるのを見つけた。
彼女は夜桜を ゆっくり床に降ろし、 箱の中身を確認する。
朝花
朝花
手当てするわね!
夜桜
朝花
夜桜が座りながら、 何かを見つめている。
朝花も不思議に思い、 夜桜の目線の先の方へ 眼を向けた。
朝花
夜桜
朝花
あの中にいるのって…
2人の前には円柱の透明な カプセルが設置されていた。
カプセル内は赤黒い液で 満たされており、中には 小さな人らしきものが入っている。
さらにそれの頭には 複数のチューブの ようなものが刺さって 上に伸びている。
夜桜
朝花
夜桜
地下で人体実験を
していたんだ。
夜桜
子どもを使ってな…
夜桜
おそらく子ども。)
朝花
夜桜
生きてると思うか?
朝花
夜桜は刀を杖代わりに ゆっくり立ち近くの 机の上の紙を見る。
夜桜
夜桜
夜桜
見た紙と同じだな。)
夜桜
朝花
朝花は紙の束を手に持ち、 目を通す。
紙を黙読している中、 彼女の顔が少しずつ 暗くなっていく。
夜桜
朝花
実験内容が
書かれてるみたい。
朝花
「shadow clone」。
朝花
閉じ込め、設置した
機材から別の空間へ
姿を映す。
朝花
見えるけど、それは
映像であり本体に
攻撃が通用しない。
朝花
遠隔に扱える
ようになれば、
軍事に使えるだろう、って
夜桜
ようなものか。)
朝花
失敗してるみたい…。
朝花
被験者の脳に
負荷がかかって
死んでしまうらしいわ。
夜桜
朝花
被験者って全部
まだ幼い子じゃない。
朝花
失敗って…
朝花
夜桜
朝花
8年前に施設に
いた子なの。
朝花
出されたはずなのに…
なんで…
朝花
夜桜
さっきの子ども
じゃないか。
朝花
朝花
六年前に養子になったって…
夜桜
書かれてるな。
朝花
朝花はカプセルに目を向ける。
朝花
夜桜
朝花
幸せに暮らしてると
思ってたのに…
朝花
嬉しそうだったのに…
こんな酷い事っ…
夜桜
知り合いだったか。)
夜桜
朝花と会話した途端に
大人しくなった。)
朝花
夜桜
こいつは朝花を
守ってたかもな。)
夜桜
とっくに職員のように
殺されてるはずだ。)
夜桜
簡単に殺せただろう。)
夜桜
あの植物に隠したのも
手が出せないように、か…。)
…シテ…
夜桜
朝花
夜桜
夜桜は声のした カプセルの正面に立つ。
中を覗くと、先程の少女が 遺体に重なるように 薄ら浮かび上がる。
夜桜
魂の方もまだここに
囚われてるのだろう。)
夜桜
付与されてる魔法の
せいだろうか。)
夜桜
夜桜
もう生き返らない。
夜桜
死んでるからな。
ココ…イヤ…
オソト…デタイ…
タスケ…テ…
夜桜
夜桜
そうしよう。)
夜桜
これの開け方
書いてるか?
朝花
夜桜
夜桜
壊すしかないな。)
夜桜
夜桜は力を振り絞り、 刀を前に構える。
夜桜
魔力ならカプセルの
魔法諸共壊せるだろう。)
夜桜
夜桜
ブンッ!
ズバッ!
夜桜
…ピシッ…
ピシピシッ!
ガシャンッ!
夜桜が後ろへ離れた瞬間 カプセルの硝子が壊れた。
そして、赤黒い液体が 勢いよく流れ出す。
カプセル内にあった液体が 外に流れ出た後、 中から透き通った少女が ゆっくりと出てきた。
背後には彼女の痛々しい 遺体がある。
クルシク…ない…
少女は身体が白くなり、 元より一層透けていく。
朝花
もう、だいじょうぶ…
だね。
夜桜
少女は二人の方を向き、 にっこりと微笑んだ。
そして、数秒後 霧のように少女は その場から消えるのだった。
朝花
夜桜
夜桜
…フラッ
バタンッ!
朝花
夜桜が糸が切れたように 地面に勢いよく倒れる。
朝花
夜桜
朝花
朝花
どうしよう…
このままじゃ…)
夜桜
朝花
どうしたら…
夜桜
朝花
朝花
夜桜
夜桜
良かった。
朝花
朝花
朝花
朝花
生きてよっ!!
朝花
しないで…ううっ…
グウゥゥッ~~!
朝花
朝花は突然の音に 驚き、辺りを見回る。
朝花
夜桜
朝花
夜桜
グウゥゥ~~!
朝花
夜桜
朝花
朝花
食べ物は…って
あるわけないわ!!
夜桜
朝花
夜桜
夜桜の腰辺りを確認すると、 そこに小さな鞄が 巻ついている。
朝花
朝花は鞄に手を入れる。
そして、手に 当たったものを 丁寧に取り出した。
朝花
朝花
朝花
夜桜
朝花
駄目よ起きてっ!?
朝花
おにぎりっ!!
朝花
…10分後、
夜桜
夜桜は地面に正座し、 両手でおにぎりを持ち ゆっくり食べていた。
夜桜
正解だったな。)
夜桜
餓死してただろう。)
朝花
大丈夫なの?
夜桜
朝花
朝花は夜桜の頭に ガーゼを当て、白い テープで止める。
朝花
傷は浅かったのね。
朝花
死んじゃうと思ったわ。
夜桜
分かるだろ。
朝花
焦っちゃうのよ!
朝花
死んじゃうかと…
夜桜
夜桜
疲労もか…)
夜桜
夜桜
朝花
夜桜は小さい鞄から おにぎりを取り出し、 朝花の前に10個置く。
夜桜
朝花
おにぎり入ってるのっ!?
夜桜
ぐらいはある。
夜桜
動けないからな…
朝花
収納量すごいわね…。
夜桜
いくらでも入るようだ。
夜桜
どこで見つけたんだ?)
夜桜
だいたいは
あの吸血鬼か。)
朝花
美味しいわ~♡
朝花
夜桜
握っただけだ。
朝花
すごいじゃない。
朝花
寝てるか和菓子
食べてるしか見た
ことなかったし…
朝花
食欲もあるし、
健康的で安心したわ。
夜桜
しなくてもいいのに…)
朝花
夜桜
朝花
手紙に書いてた事
なんだけど…
夜桜
夜桜
書いたな。)
夜桜
つもりだったから、
内容はかんけつに書いた。)
夜桜
根掘り葉掘り
聞かれそうだ。)
夜桜
朝花
不幸になるって
思ってないわよ。
夜桜
夜桜は驚き、 口の動きを止める。
夜桜
夜桜
なかったか?
朝花
夜桜
夜桜
朝花へ この前の発言、 申し訳なかった。 かなりきつく言ってしまった。
あれは朝花が嫌いだから 言ったわけではない。 俺は朝花の事は大事に思ってる。
だが、あそこまで 言わなければ、 お前はずっと俺と一緒に いるだろう。 家でも施設でだって そうだったからな。
あればお前が離れる為に と思った方法だ。 施設の時に冷たくしてたのも その一つだ。
朝花は、俺と いない方がいい。 姉として俺の面倒を 見てきて、そのせいで 散々な目に遭っただろう。
俺を庇う事をしなければ、 お前まであの場所で 酷い目にあうことは無かったはずだ。 今頃母親と一緒に不便なく 暮らせてただろう。
いや、そもそも 俺がいなければ 良かったんだろうと感じてる。 そうすれば母親もお前も 困らなかったはずだ。
だから、もう俺に関わるな。 朝花をこれ以上、 不幸な思いを遭わせたくない。 俺の存在を消して 生きればいい。
今までありがとう。 俺はお前の妹で良かった。 朝花の幸せを願ってる。
夜桜
あの日以来か。)
夜桜
ので、朝花から字を
教えてもらって…)
夜桜
感謝を書いた。)
夜桜
伝わる事はなかった。)
夜桜
すぐにゴミ箱に
捨てられたな…)
夜桜
あいつにとって
厄介者でしか
なかったんだろう。)
夜桜
馬鹿な真似をしたな。
夜桜
絶対みるだろうな。)
夜桜
会うのを
諦めるだろうか?)
夜桜
…ビリビリッ
夜桜は書いた手紙を 2つに破り、ゴミ箱に捨てた。
そして、 新しい便箋を取りだし、 書き始める。
夜桜
朝花へ この前の発言、 申し訳なかった。 かなり言いずきた。
あれは別に朝花が嫌いで 言ったわけではない。
だが、これ以上 俺に関わるな。 お前に妹はいなかったと 思って生きればいい。 今までありがとう。
夜桜
夜桜
夜桜
気力が湧かない…。)
夜桜
夜桜
破いて捨てたはずだ。)
夜桜
朝花
お母さんの言葉を
気にしてるのよね?
朝花
言ってたから…
夜桜
そうだろう。
朝花
夜桜
お前は愛してた!
夜桜
施設に送られる
事はなかっただろうっ!
夜桜
俺を庇ってたせいで…
殴られて…
朝花
夜桜が責任感を持つ
必要ないわ。
夜桜
夜桜
施設に送る気はなかった。
夜桜
良かったのに…
夜桜
放っておけば
よかっただろ…
夜桜
むぎゅっ…
夜桜
夜桜は朝花の腕で 彼女の方へと寄せられ 抱かれる。
朝花
離れ離れになるなんて
おかしいでしょ。
朝花
朝花
大事な妹が傍に
いなくなるなんて
嫌だったの。
朝花
私も夜桜と一緒に
って思った。
夜桜
朝花
夜桜がいるから
不幸とは思った事
1度もないわ。
朝花
朝花
私を幸せにしてくれたのよ?
朝花
笑ってくれたりしたら
とても嬉しかった。
朝花
夜桜がいるから
私は頑張れるし、
元気になれた。
夜桜
朝花
自分を否定しちゃ
駄目よ。
朝花
言ってても
聞かなくていい。
朝花
生まれてきて
良かったんだから、ね?
夜桜
夜桜は朝花の肩に 顔を隠すように押し当てる。
彼女の頬からは 涙が流れ落ちる。
夜桜
朝花
朝花
夜桜の気持ちに
気づけなかった。
朝花
いいからね。
朝花は優しく微笑む。
そして、泣いている 夜桜の頭を優しく 撫でるのだった。