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【雪香 視点】

胸の奥がきゅうっと痛む

分かってる。琉依はもう、私のものじゃない

......いや、そもそも”私のもの”だった事なんて、一度もない

だけど___何で笑えるの

あんな顔、私には見せてくれなかった

同じ中学で、毎日隣にいたのに。私の事を見てるようで、どこか遠かった

...私が遠ざけたのかな。ちゃんと届かないままにしたのは、私?

気付かないふりをしてたけど。きっと、まだ終わってなかったんだ

『琉依への想いも、私の中で_』

夜の部屋で、私はまたオルゴールを開いた

蓋を開けても、音は鳴らない

溝口 蓮翔(みぞぐち れんと)

遠くに引っ越しちゃうから

溝口 蓮翔(みぞぐち れんと)

......これ、燐音に

幼なじみの蓮翔の声が、ふと浮かんだ

あの頃の私は、蓮翔が好きだった。ずっと一緒にいるって信じてた

風林 燐音(かざばやし りんね)

もう、違うんだな...

オルゴールは「過去の宝物」 町田くんは『今の私の気持ち』

風林 燐音(かざばやし りんね)

...

そっと蓋を閉じた

その音が、1つの区切りみたいに響いた

次の日の朝、登校中の交差点で偶然町田くんと会った

風林 燐音(かざばやし りんね)

おはよ

私が声をかけると、町田くんは一瞬キョトンとして、照れたように小さく頷いた

町田 琉依(まちだ るい)

......はよ

その声がやけに近くて。ほんの少しだけ、手を伸ばしたら届きそうで

風林 燐音(かざばやし りんね)

(この距離を大事にしたい)

放課後。私はぼんやりと風を感じていた

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

ねぇ

振り返ると、そこにいたのは雪香さんだった

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

少し、話せる?

雪香さんの表情は柔らかいけど、どこか決意が宿っていた

風林 燐音(かざばやし りんね)

う、うん

しばらく沈黙が続いた後、雪香さんがぽつりと口を開いた

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

琉依と、最近よく話してるよね

風林 燐音(かざばやし りんね)

......うん

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

楽しそうに見える。琉依、あんな顔するんだって、ちょっとビックリした

風林 燐音(かざばやし りんね)

.........、

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

でも...それ、私の方が先だったんだよね、本当は

その声は、思ったよりもずっと静かだった

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

中学の時、琉依の事......ずっとそばで見てた

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

でも、言えなかった。タイミングも、気持ちの強さも、全部が中途半端で...

雪香さんはゆっくり目を伏せた

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

だからって、文句言いたいわけじゃないよ

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

ただ、ズルいって思っちゃった。貴方、ちゃんと届いてるから

風林 燐音(かざばやし りんね)

風林 燐音(かざばやし りんね)

...それは、雪香さんが町田くんの事、すごく大事だったからだよ

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

私の言葉に、雪香さんは微かに笑った

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

優しいね。でも、同情されたくて言ったんじゃない

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

ただ、私がちゃんと向き合えなかったものを、

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

貴方は正面から掴みにいってるのが...ちょっと、悔しかった

その言葉が、胸に刺さった

風林 燐音(かざばやし りんね)

......ごめん。もし傷つけてたら...

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

...違う!

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

貴方は、何も悪くない。私が勝手に、止まっただけだから

風が吹いて、雪香さんの長い黒髪が揺れる

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

ただ、1つだけ言っておくね

雪香さんの瞳が、真っ直ぐに私を見た

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

琉依の事、半端な気持ちで好きにならないで

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

琉依、壊れかけた心を...ギリギリで抑えて生きてるから

風林 燐音(かざばやし りんね)

風林 燐音(かざばやし りんね)

......うん。私、ちゃんと向き合う

風林 燐音(かざばやし りんね)

町田くんの事、簡単に好きって言ったつもりないよ

その瞬間、雪香さんの表情がふっとほどけた

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

そうだね......その顔、嘘じゃないね

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

なんかもう、勝てないかもって思っちゃった

風林 燐音(かざばやし りんね)

勝ち負けじゃないよ

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

だね

そう言って雪香さんは、空を見上げて呟いた

平山 雪香(ひらやま ゆきか)

......ちょっとスッキリしたかも。ありがとう、話してくれて

風林 燐音(かざばやし りんね)

ううん

雪香さんの横顔は寂しそうだけど、前より少し軽くなってる気がした

壊れて、始まった

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