司
ハァッ、ハァッ、ハァッ
司
………ない
司
店が…ない…?!
司
なんで…確かにここにあったはず…!
司
このままじゃ咲希が…
司
…くそ、全部夢だったのか…?
司
…ッ
彰人
あのー…
司
!!
司
貴方…確かこの前の…?
彰人
はい。
司
どうしたんですか?
彰人
いや…あの、
彰人
あんた、かなり目立ってますよ。
司
え?
人々
え、何あの子。変な子ねぇ
人々
ままー、あの人何してるの?
人々
しっ、見ちゃ駄目よ!
彰人
…あー、ちょっと場所変えません?
司
?
司
えっと…俺に何か御用で?
彰人
ああ、まぁそうですね
彰人
あんたがこないだ行ってた店…なんですけど
司
!!
司
あの店の事を知ってるのか?!
彰人
はい。気になったんで行ってみました
司
(すごい行動力だ…)
彰人
んで、俺人の心読めるんですけど、
司
え?!
彰人
あ、さっきの「すごい行動力だ」もちゃんと聞こえてました。
司
?!?!
司
(そんな軽々と言うものなのか?!)
彰人
まぁ、超能力なんてそんなもんでしょ
司
…これ、心読まれるなら口に出してツッコんだ方がいいか?
彰人
どちらでも。どうせ聞こえるんで
司
むぅ…やりずらいな
彰人
すみません
司
いや、構わない。
司
えーっと…俺はサイコメトリーって能力を持ってるんだ。
彰人
へぇ、あの物から記憶読み取る的なやつですか?
司
そんなやつだ。
彰人
いいっすね。便利そう
司
まぁな。だが、不便な事もあるぞ。
彰人
例えば?
司
その物が持つ記憶が…良い物ではなかった場合の体と精神への負担が大きいんだ。
彰人
なるほど…超能力って、やっぱ良い事ばっかじゃないですよね。
司
だな。人の心が読めるってのも、大変だろう?
彰人
はい。そこら中から色んな本音が聞こえてくるので。
彰人
今だって、ほら、そこの女子2人。心の中でエグいくらいの暴言吐いてます
司
すごい仲良さそうに話してるのに…
彰人
そんなもんです
彰人
…
司
ん?俺の顔に何かついてるか?
彰人
いえ、何も。ただ、あんたは裏表無さそうだなと思って
司
裏表か…まぁ自分で言うのもなんだが、無いと思うぞ
彰人
へぇ、いいですね
司
いい…のか?
彰人
はい。あ、俺東雲彰人です
司
天馬司だ。
彰人
んじゃ司センパイでいっか
司
む、俺は何と呼べばいい?
彰人
彰人でいいです。呼ばれ慣れてますし
司
なら彰人。あの店に行ってどうだった?
彰人
え?まぁ、変な店だなーって思いました
司
…何か買ったか?
彰人
いや、どれも高かったんで買ってません。
彰人
司センパイはなんか買ったんですか?
司
契約をしたんだ。
彰人
へぇ、どんな?
司
寿命を買うという
彰人
…寿命?
司
ああ。対価は店の商品が持つ物語だそうだ。
彰人
そんなもんも買えるのか…
彰人
その契約って、あの無口な青髪の店員と?
司
いや、紫髪の店主の方だ。
彰人
ああ、あの人…
司
それより、店がないんだ。彰人も見たか?
彰人
はい。昨日あった場所にはなかったですね。
彰人
別の場所に移動したとかっすかね?
司
そんな事あるのか…?
彰人
それか、ただ単に俺たちが見えなくなっただけか
司
どう言う事だ?
彰人
そのまんまです。あの店、普通の人は入れないんですよ。
司
なら何故俺たちは入れたんだ?
彰人
俺は、司センパイがその扉から出てくる所を見たから、扉を認識できました。
司
俺は…
司
鍵だ。鍵の記憶を辿って来たんだ。
彰人
なるほど。呼ばれたみたいな感じですかね?
司
店主はそんな感じじゃなかったがな
彰人
ま、とりあえずもう一回行ってみます?
司
そうだな。
彰人
…ありませんね
司
ないな…
彰人
俺は別に問題ないっすけど、司センパイは必要なんでしたっけ?
司
ああ。契約してるからな。
彰人
うーん…定休日とか?
司
む、そんなものもあるのか?
彰人
いや、わかんないです
司
まぁ見つからないし、また明日来るとするか。
彰人
そっすね。
彰人
あっ、センパイこの後暇ですか?
司
予定はないが…
彰人
ちょっと遊びにいきません?
彰人
センパイやっぱこういう服も似合いますね。
司
な、なぁ、何故服屋なんだ?
彰人
え?いや、趣味です
司
そうか
彰人
あ、これいいな。会計するんで待ってて下さい。
司
ん?!俺の服なら自分で買うぞ?!
彰人
いいです。お礼って事で
司
??
司
俺は礼を言われるような事は何もしてないが…
彰人
あー、もうちょい右っすね
司
右?!このくらいか?!
彰人
あー、行き過ぎっす
彰人
あ、もうちょい上
司
う、うえ?!
彰人
あっ、奥です
司
どんな言い間違いだ!
彰人
なんとか取れましたね
司
ああ。しかし、案外難しいな…
彰人
あれ、ゲーセンとか初めてですか?
司
幼い頃行ったきりだな。最近は全く。
彰人
えぇ…あんた高校生でしょ?
司
ああ。高二だ。
彰人
俺一年です
司
む、年下だったのか。
彰人
一応敬語付けてるでしょ
司
確かに。だいぶ砕けてはいるがな。
彰人
友達と遊びに行くとかないんすか?
司
…
彰人
あー、地雷踏みました?
司
あ、いや、そんなんじゃないんだ。
司
えっと…妹が入院してて、まぁ色々…遊ぶ暇も無くてな。
司
友人はいるが、俺が毎度誘いを断るから、いつしか誘われなくなったんだ。
彰人
…なるほど。
彰人
俺とのこれはいいんですか?
司
いや、まぁ…暇だったし、それにあれは半ば強制だったろう。
彰人
嫌でしたか?
司
…嫌、では無かったな。むしろいい気分転換になった。礼を言う。
彰人
なら良かったです。
彰人
そろそろ帰りましょうか。俺門限あるし。
司
そうか。なら早く帰らないとな。
彰人
センパイは門限とか無いんですか?
司
あるが、破っても咎める人は誰もおらん。両親はどちらも不在だし、妹も病院だからな。
彰人
…なら、家来ます?
司
は?!
司
いや、俺たちほぼ今日初対面だろ?
彰人
え?けど一緒に遊んだじゃないですか
彰人
そんならもう友達でしょ
司
そんなもんか…?
彰人
そんなもんです
司
けど、いきなり家にお邪魔するわけには…
彰人
大丈夫ですって。もうすぐ夕飯だし、食べてって下さいよ。
司
しかし…
彰人
もしもし?母さん?友達連れて来たいんだけど…うん、さんきゅー
彰人
飯作って待ってるって
司
え…いいのか?
彰人
いいですって!遠慮しないで下さい。
彰人
ほら、行きますよ
彰人
ただいまー
司
お、お邪魔します!
東雲母
あら、いらっしゃい!
彰人
この人、電話で言った友達。
東雲母
そう!よく来てくれたわね!ご飯出来てるから、食べましょう。
司
ありがとうございます!
司
すみません、突然お邪魔してしまって。
東雲母
いいのよ。彰人なら良くある事だから。
東雲母
それに、食事は人数が多いほど美味しいからね。遠慮せずいっぱい食べてね!
司
…はい!
司
…美味しいです、!!
東雲母
お口に合って良かった。まだあるからね。
司
(こうやって誰かと食事するのもいつぶりだろう…)
司
(母さんの作り置きも美味しかったけど、こっちの方が温かいな…)
彰人
母さん、おかわりー
東雲母
はいはい。ちょっと待ってね
彰人
センパイは?
司
いや、俺は…
司
…すみません、俺もお願いしていいですか?
東雲母
もちろん!ちょっと待ってね!
彰人
母さん、料理するの好きなんですよ
司
そうなのか。道理で美味しい訳だ。
彰人
そうそう。で、良く作りすぎたりして余っちまうんですけど…
彰人
センパイ、良かったら偶に食べに来ませんか?
司
え?!
司
いや、そんなたくさんお邪魔するのも申し訳ないし…!!
東雲母
あら、私は大歓迎よ。
東雲母
それに、たくさん食べる子が増えるのは嬉しいしね!
彰人
育ち盛りなんでー
司
けど…
彰人
みんなで食べた方が美味しいでしょ
司
…そうだが、、
司
しょ、食事代は払わせて下さい…!
東雲母
え?!お金なんていいわよ?
司
母さんも最近忙しくて、デリバリーするためのお金だけ置かれてるんです。
司
タダで食べさせてもらう訳にもいきませんし、払わせて下さい。
東雲母
律儀な子ねぇ。けど、お金なんていいわよ。いっぱい食べてくれたらそれで十分だわ。
東雲母
けど…そうね。なら、食後の洗い物とかお願いできるかしら?
司
え、それだけでいいんですか?!
東雲母
ええ。それだけで私すごい助かっちゃう。
彰人
んじゃそれで決まりで。
東雲母
彰人もたまには家事してくれてもいいのよ?
彰人
えー
東雲母
「えー」じゃないの。司くんを見習いなさいな。
司
(いいなぁ、こういう親子みたいな会話…)
司
(最近、母さんとはメールでしかやり取り出来てないし…)
絵名
お母さんー、お腹空いたー
彰人
げ、絵名いたのかよ
絵名
はぁ?!いちゃ駄目なわけ?
絵名
ってあれ、彰人の友達?
彰人
そう。司センパイ
司
はじめまして、お邪魔してます
絵名
はじめまして。ゆっくりしてって下さいね。
東雲母
絵名もご飯食べる?
絵名
食べるけど、まだ作業するから部屋で食べる。
東雲母
そう。なら後で持っていくわね。
絵名
うん、ありがとー
司
彰人、お姉さんいたんだな
彰人
ええ、まぁ。
司
仲が良いんだな。
彰人
え?今のどこ見て思いました?
司
喧嘩する程仲が良いって言うだろう。俺は妹と喧嘩したことないからな。
彰人
ふーん、俺も可愛い妹が欲しかったです。
司
そんな事言うなよ。お姉さんも良い人だったじゃないか。
彰人
あれは外面です。家では怪獣ですから
司
ははっ、そうなのか。
司
今日はありがとうございました!
東雲母
一人で帰れる?泊まって行ってもいいのよ?
司
いえ、近いので大丈夫です!
司
夕飯、ありがとうございました。とても美味しかったです!
東雲母
それは良かったわ。また来てね!
司
はい!
彰人
じゃあセンパイ、また今度ー
司
ああ、またな!
「こうやって誰かと食事するのもいつぶりだろう…」
「母さんの作り置きも美味しかったけど、こっちの方が温かいな…」
「いいなぁ、こういう親子みたいな会話…」
「最近、母さんとはメールでしかやり取り出来てないし…」
司センパイから聞こえてきた声
彰人
(俺と住む世界が違うのかなー)
彰人
(ま、今日は楽しそうだったしいっか)
東雲母
あら、珍しい。洗い物?
彰人
気分だ、気分
東雲母
ふふ、ありがとうね
彰人
…おう
next