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四年二組の教室にチャイムの音が軽く響いた。
ざわざわと、そこかしこで行われる雑談が大人しくなり、皆席へ着く。
太陽が真上よりちょっぴり西から見える。
その光に照らされ、微かに残ったチョークの白い粉がきらきらと輝いて見える。
そんなある日の五時間目のお話です。
がらりと、扉が開く音が静かに響いて、担任の先生が入って来る。
桐野先生
先生が皆の方を向いて、そう微笑んだ。
起立、注目、礼。お願いします。
そんな、半ば流れ作業の様になった挨拶を終えて。
先生が軽くワイシャツの袖を捲り、先程の清掃で少し欠けてしまったチョークを手に取る。
さらさらと、お手本みたいな綺麗な文字で黒板に、今日の題名を書いて行く。
「ぬいぐるみの国のくらし」
そのファンシーな文字列を見てさくらは思わず目を丸くした。
さくら
その瞳はきらきらと輝いていた。
隣の席へ座るひかるもぽかん、と口を開いて。
ひかる
思わず教科書を開き確認するなんて柄にも無い事をする。
さくらの前の席で少し紺混じりに見える黒髪がゆら、と揺れた。
彼女の幼馴染のあおいである。あおいはぬいぐるみなど、可愛らしい物に目が無い。
無論、期待混じりにゆら、と微かに体を揺らしている。
先生はそんな教室をゆったり見回して。
桐野先生
桐野先生
桐野先生
先生がそう言えば、教室の空気は静かに、穏やかに聞く姿勢へとなった。
「ぬいぐるみの国は、世界のどこかにあると言われる、ふしぎな国です。」
「この国には人の代わりにぬいぐるみ達が暮らしています。」
その文は、やわらかな言葉選びで始まった。