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なんで…
なんであんなこと言っちゃったんだよぉぉおお!!
頭を抱えて、白瀬湊は机に突っ伏した。
大学の休憩スペース。
昼下がりのざわめきの中で、一人だけ世界の終わりみたいな顔をしている。
白瀬 湊
思い出すだけで、顔から火が出そうだった。
──数日前のことだ。
大学の講義がすべて終わった、夕方の17時頃。
キャンパスの空はオレンジ色に染まり、帰宅する学生たちの足音があちこちで響いていた。
そのときだった。
朝比奈 燐
聞き慣れた声に振り返ると、そこにいたのは朝比奈燐だった。
ゆるくセットされた紺色の髪に、どこか軽い笑み。
男女問わず人気がある、いわゆる “イケメン”。
白瀬 湊
朝比奈 燐
朝比奈 燐
いつもの流れだった。
コンビニで酒とつまみを買って、 「じゃあ近いし俺んち来なーい?」 という、なんでもない一言。
気づけば二人で、白瀬の家のソファに座っていた。
それから一時間くらい。
ビールの缶を開けながら、他愛もない話をしていた。
友達の噂話とか。
一年のときの学園祭のこととか。
ほんの少しだけ、将来のこととか。
酒が回って、空気もだいぶゆるくなってきた頃。
白瀬は、ふと思ったことをそのまま口にした。
白瀬 湊
白瀬 湊
燐は缶を傾けながら、少しだけ目を細めた。
朝比奈 燐
白瀬 湊
朝比奈 燐
あっさりした声だった。
そのときの白瀬は、もうだいぶ酔っていた。
頭もふわふわしていて、深く考える余裕なんてなかった。
だから──
冗談みたいな軽さで、言ってしまった。
白瀬 湊
白瀬 湊
一口ビールを飲んでから、続ける。
朝比奈 燐
白瀬 湊
言った瞬間、 ほんの一瞬だけ、部屋の空気が止まった気がした。
白瀬 湊
と、思ったときにはもう遅い。
燐は少しだけ驚いた顔をして、 それから、ふっと笑った。
朝比奈 燐
白瀬 湊
軽い調子で、そう言った。
まるで本当に、なんでもないことみたいに。
──そして今に至る。
机に突っ伏したまま、白瀬は小さくうめいた。
白瀬 湊
普通の男なら、こんなに悩む必要はないかもしれない。
探す必要もなくて、気楽にヤれる相手がいる。
でも──
白瀬は違った。
白瀬 湊
好きだから。
好きな人と、そんな軽い関係になんてなりたくなかった。
胸の奥が、じんわりと痛む。
白瀬 湊
あのとき。
変な冗談なんて言わずに。
ただ普通に。
「好き」
って言えばよかった。
本当に、それだけでよかったのに。
白瀬 湊
さっきまでの後悔が、頭の中でぐるぐる回っている。
思い出すたびに、胸の奥がぎゅっと苦しくなる。
朝比奈 燐
朝比奈 燐
びくっと白瀬の肩が揺れて、ゆっくり顔を上げる。
そこに立っていたのは、朝比奈燐だった。
紺色の髪が窓の光を受けて、わずかに青く透けて見える。
落ち着いた表情のまま、湊を見下ろしていた。
白瀬 湊
気の抜けた声でそう答えると、燐は少し眉を寄せた。
朝比奈 燐
一歩近づいてきて、湊の顔を覗き込む。
朝比奈 燐
その目は、いつもの軽さとは違って、ほんの少しだけ心配そうだった。
そして次の瞬間。
燐は当たり前みたいに、湊の隣の椅子を引いて座った。
白瀬 湊
白瀬 湊
距離が、近い。
肩が触れそうなくらいの距離。
ほんのりと、柔らかい香りがする。
白瀬 湊
余計に意識してしまう。
湊は視線を机に落としながら、心の中で頭を抱えた。
白瀬 湊
白瀬 湊
小さく息を吐いて、ぽつりと口を開く。
白瀬 湊
燐がちらりと視線を向ける。
朝比奈 燐
湊は机に頬杖をついたまま、どこか投げやりな声で言った。
白瀬 湊
一瞬だけ、周りのざわめきが遠くなった気がした。
白瀬 湊
そう言ってから、ちらっと横目で燐を見る。
白瀬 湊
白瀬 湊
少し笑ってみせるけど、その笑いはどこか弱かった。
白瀬 湊
言い終わってから、自分の指先に視線を落とす。
本当は。
本当は聞きたくなかった。
でも、聞かずにはいられなかった。
湊の指先が、机の下で小さく震える。
朝比奈 燐
白瀬 湊