二人きりの夜には
ゆっくり話しでもしようか
妻
あなた……
妻
そんな目で見ないで
妻
気恥ずかしいわ
夫
だって
夫
そんな遠い目をして……
夫
あなたは何を考えているの?
妻
何も……
夫
たまには
夫
あなたの事
夫
話してくれないかな?
妻
話す?
妻
話すことなんか何もないわ
妻
こうして
妻
旦那様に寄り添っているだけで
妻
私は幸せなんだから
夫
また、はぐらかしたね
夫
僕はね
夫
妻であるあなたの事が
夫
もっと知りたいだけだ
妻
知ったところで
妻
何も変わらない
妻
私は私だと思わない?
夫
僕は
夫
あなたのことを愛している
夫
あなたの事を知ったら
夫
もっと深く愛せると思う
夫
いけないことだったかい?
妻
……
夫
ほら
夫
そうやって、すぐに
黙りこんでしまう……
黙りこんでしまう……
妻
……
夫
結婚して三年が経つ
夫
そろそろあなたの口から聞きたいな
夫
あなたの事を
妻
私
妻
昔の自分はあまり好きじゃないの
妻
それに…もし話したら
妻
きっと光さんは私を嫌いになるわ……
夫
そんなこと僕に限って
夫
あるはずないだろう?
妻
私
妻
愛を失うのが怖いの
夫
バカだな
夫
こんな素敵な妻を
夫
僕が捨てるわけがない
夫
だから
夫
勇気を出して話してごらん
妻
本当に?
妻
本当に私の事を捨てない?
夫
ああもちろんだとも
夫
結婚式、神様の前で誓っただろう
夫
死が二人を分かつまで
夫
僕らは死ぬまでずっと一緒だ
妻
お願い
妻
もう一度誓ってくれる?
夫
ああもちろんだとも
夫
何度でも誓おう
妻
それなら小指を出して
夫
小指?
妻
ええ
妻
小指
夫
ほら
妻
こうやって
妻
私の小指をからめる
夫
これって
夫
幼いころにした
夫
指切りげんまん?
妻
ええそう
夫
相変わらず
夫
七奈美は可愛いなぁ
夫
こんな可愛らしい誓いだったら
夫
お安いご用だ!
夫
何回でもするよ
妻
光さんたら
妻
私……
妻
真剣なんだから
夫
そうか
そうか
そうか
夫
そうだ
夫
我が家の黒猫ちゃんに証人なってもらおう!
妻
そうね
それがいいわ
それがいいわ
夫
ココア
夫
よく見ていておくれ
(ФωФ)ニャア~
妻
誓うわね
妻
指切りげんまん
妻
嘘ついたら
妻
針千本
妻
飲ーます
妻
指切った!
夫
さぁ
夫
これで誓いの儀式は終わった
夫
あなたに何から話してもらおうか
妻
そんな目で見ないで
妻
なんだか
妻
怖いわ
夫
ふふっ
夫
そうだ
夫
あの日のことを聞きたかったんだ
妻
あの日?
妻
あの日って?
夫
ほら
夫
僕らがまだつき合う前
夫
銀行から出て来た僕と
夫
走ってきた、あなたがぶつかったあの日
妻
ええ
妻
よく覚えているわ
妻
あの時、私たちはまだ付き合っていなかったわ
妻
あの日の私は
妻
あわてていたの
夫
そうだったね
夫
突然の出会いだったね
夫
鉢合わせしたあなたは
夫
天から舞い降りた天女かと思うくらい綺麗で
夫
僕は一目惚れしたんだ
妻
まぁ
妻
恥ずかしい……
夫
あの時ほんの一瞬頭をよぎったのは
夫
あなたは誰かから
夫
追われているように見えた
夫
いったい誰から逃げていたの?
妻
……
夫
約束したよ
夫
話してごらん
妻
逃げていたんじゃない
妻
追いかけていたの
夫
誰を?
妻
光さんのこと
夫
えっ?
夫
僕の事を追いかけた
妻
そう……
夫
それはいったいなぜ?
妻
こんなこと言うの
妻
本当に恥ずかしいのよ
妻
私……ずいぶん前から光さんの事が好きでした
妻
いつも遠くから光さんを見ていて……
夫
それ本当?
妻
本当のことだわ
夫
でも
夫
あなたみたいな美人
夫
この僕が気がつかないわけがない
妻
それは……
妻
以前の私とは違うからよ
妻
私……
妻
自分の名前が嫌いで
妻
あの日
妻
ようやく改名が認められたの日なの
妻
だから
妻
その足で
妻
光さんに、告白しようって決めて
妻
勢いあまって
妻
鉢合わせになってしまって……
夫
そうだったの?
夫
名前が嫌いだったなんて
夫
改名するほど嫌いだった?
妻
ええ
妻
大嫌いでした
妻
私は改名して
妻
新しい人生を手に入れたかったの
夫
そこまで
夫
思い詰めていただなんて
夫
とても
夫
考え深いものがある
妻
ねえ
妻
光さん
妻
覚えているかしら?
夫
何をだい?
妻
小学生の時によく遊んだ
妻
竹内宗一郎
夫
もちろんだとも
よく覚えている
よく覚えている
夫
転校しちゃったんだよな
夫
しばらく寂しくて
夫
でも、なぜ七奈美が知っているの?
妻
私の旧姓は?
夫
竹内七奈美
夫
あっそうか
夫
宗ちゃんの親戚?
夫
もしかして腹違いの妹だったとか
夫
もしくはお姉さんの方?
妻
いいえ!
妻
私が
妻
竹内宗一郎
妻
でーす
へっ?
夫
えっ
夫
冗談よしてよ
妻
本当よ
妻
幼いころ光さん私に言ったわ
妻
俺たちいつまでも一緒だって
妻
私の初恋は、光さん、あなたなの
夫
それ……
夫
それ……
夫
ちょ
夫
ちょっと
夫
ちょと
夫
ちょと待って
夫
あなたが
夫
その宗ちゃん
妻
ええそう
夫
えっ
夫
えー
夫
え━━━━━
夫
い、一緒に
夫
立ちションした
夫
宗ちゃん?
妻
もう
妻
そんな……
(/-\*)
(/-\*)
妻
恥ずかしい
夫
名前を宗一郎から七奈美に変えた???
夫
だとしたら
夫
名前どころか!
夫
その
夫
か、か、か
夫
身体・・・・は?
妻
もう私たち結婚したんだから
妻
やめましょうよ
妻
これ以上は深く追求しないでくださいな
妻
お・ね・が・い
妻
そんな昔の話
Twitterのお題から
『二人きりの夜には』に始まり
『そんな昔の話』で終わる
を書きました。
お粗末さまでした。
m(_ _)m







