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冬馬からのメッセージが届いたのは バイトが終わった直後だった。
スマホの画面を見つめながら、私は少しだけ迷う。
最近、冬馬と会うたびに 心のどこかがざわついていた。
それでも、会いたいと思う気持ちは消えなくて。
千夏
結局、私は返信してしまう。
冬馬の部屋に行くと 彼は適当にベッドに寝転がりながら私を見上げた。
冬馬
千夏
実際にはそんなに時間は空いてない。
でも、私の中では 少し距離を置こうとしていたつもりだった。
冬馬
千夏
冬馬
冬馬はそう言いながら、私の髪をくしゃっと撫でる。
優しい仕草。優しい言葉。
なのに
それが全部どこか上辺だけのものに感じてしまう。
私は冬馬の隣に座って、恐る恐る聞いた。
千夏
冬馬の手が止まる。
冬馬
冬馬
千夏
沈黙が落ちる。
冬馬は困ったように笑って、少しだけ身を起こした。
冬馬
千夏
千夏
やっと言葉にできた。
ずっと曖昧な関係を続けてきたけど 本当は不安で仕方なかった。
私は、冬馬にとって特別な存在になれているのか。
それとも、ただの都合のいい相手なのか——。
冬馬は少し考えるふりをして それからゆっくり言った。
冬馬
冬馬
それは、『彼女だよ』ではなかった。
でも、そう言われると、何も言い返せなくなる。
大事だなんて、そんな言葉 嘘でも嬉しくなるに決まってる。
だから私は、それ以上何も聞けなかった。
ただ、冬馬の隣にいることを選んだ。
翌日のバイト終わり 真尋と一緒に帰ることになった。
真尋
何気ない会話の中で、真尋がぽつりと言う。
千夏
千夏
真尋
優しい言葉。
私は、その優しさに甘えたくなる自分がいた。
——冬馬じゃなくて 真尋みたいな人を好きになれたらよかったのに。
そんなことを考える。
でも、気づいてしまった。
私はもう 冬馬の沼にどっぷり浸かってしまっている。
簡単には抜け出せない。
だけど——もし、手を引いてくれる人がいたら?
もし、誰かが本当に私を大切にしてくれたら?
私は、その手を取ることができるんだろうか——。
まだ答えの出ないまま、夜の街を歩いた。
冬馬の「大事だよ」という言葉にすがるように 私はまた彼のもとへ通う日々を続けていた。
会えば優しくしてくれる。
だけど、それが本心なのかどうか もう私にはわからなかった。
ある夜 冬馬の部屋でいつものように映画を見ていると 彼のスマホが鳴った。
ちらりと画面が見えて、私は息を呑む。
心臓がぎゅっと締めつけられる。
千夏
千夏
無意識に聞いてしまった。
冬馬は一瞬だけ動きを止めて、すぐに笑った。
冬馬
冬馬
何もない——。
それを信じていいの?
千夏
千夏
本当は問い詰めたかった。
私だけを見てほしいって、泣きたかった。
でも、もしそこで嫌われたら?
『めんどくさい』って思われたら?
私は冬馬のそばにいられなくなるかもしれない。
怖くて、何も言えなかった。