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リビングで朝食を終えたあと、ゆいは食器を抱えてキッチンへ向かった。 「手伝います」と言う前に、すでに誰かの気配が近い。
水音と立ちのぼる湯気の向こう。 視線が、確かにあった。
サンズ
いつの間にか隣に立ち、ゆいの手元を覗き込んでいる。 骨の指が伸び、洗い方を直そうとした瞬間、ゆいは反射的に身を引いた。
サンズ
一拍置いて、低く、諭すように続ける。
サンズ
“そばにいる” その言葉が、なぜか命令のように響いた。
――コツ、コツ。
廊下から足音。
フェル
低い声。 ゆいが別の食器に手を伸ばすと、フェルサンズも距離を詰め、無言で手元を確認する。
フェル
守っている、はずなのに。 監視されている感覚が、背中を這った。
テーブルの方では、ドリームサンズが静かにお茶を飲んでいた。
ドリーム
優しい声。 けれど、その“心配”は、ゆいの行動を制限するための言葉にも聞こえた。
椅子に戻ろうと一歩動くだけで、 誰かの視線が必ず追ってくる。
ゆい
そのとき、少し離れた場所から声がかかる。
スワップ
慌てて付け足すその口調は、他の誰よりも柔らかい。 近づきすぎない距離を、ちゃんと保っている。
ゆい
スワップ
その様子を、クラシックサンズが一瞬だけ見ていた。 表情は変わらない。 けれど、眼窩の光がわずかに強まった気がした。
午後。 洗濯や掃除を手伝うゆいの背後に、静かな影が落ちる。
ホラー
短い一言。 だがその視線は、ゆいの動きを一つ残らずなぞっていた。
ゆい
理由のない不安。 けれど、その不安が“正しい”気がしてしまうのが、いちばん怖かった。
廊下の奥。 誰にも気づかれない場所で、黒い外套の影が静かに様子を見ていた。
白メア
誰にも聞こえないほど小さな声。 その瞳だけが、ゆいではなく“何か別の存在”を警戒するように細められていた。
夕方。 リビングで一息つくと、向かいのソファにキラーサンズが座る。
キラー
笑っている。 けれど、その視線は、ゆいが誰を見ていたかを確かめるようだった。
キラー
隣では、ナイトメアサンズが触手を揺らし、何も言わずに視線を絡めてくる。 逃げ場が、ない。
ゆい
その夜。 部屋に戻り、ベッドに潜り込んでも、心は休まらなかった。
見守るという名の監視。 手を差し伸べるという名の拘束。
――そして、誰もが同じ方向を向いている違和感。
(……誰かが……そうさせてる……?)
ゆいの知らないところで、 “元彼”の残した言葉と暗示は、今もこの家に染みついていた。
けれど。
その歪みを、静かに見つめ、 まだ染まっていない視線も、確かに存在していた。
夜は、まだ終わらない。