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蝶屋敷の奥の部屋
蝋燭の灯りが淡く揺れていた
芙梛は一人、布団の上に座っていた
その手には、破れかけた紙片がある
それは、かつて人間だった頃に、 姉がくれた薬草の知識が書かれた紙だった
今はもう、必要の無いものの筈なのに、 何故か捨てられず、今でも持っていた
芙 梛
声に出すことは出来ない
思考の海の中で、ただ名前を反芻する
鬼
上弦の零
蓮華
少女
人間だった頃の自分
それらが、渦のように絡み合って、 正体を曖昧にしてゆく
そんな時、不意に思い出す
あの時、無一郎が言った言葉
時 透
時 透
「 信じたい 」
そう言ってくれた
鬼と知らずに、それでも真っ直ぐに、私を見てくれた
その優しさが、何故か胸を痛めつける
気がつけば芙梛の目には、涙が浮かんでいた
芙 梛
芙 梛
小さな声が、部屋の中に落ちる
鬼になってからというもの、 感情はあっても、涙など流したことが無かった
でも今、どうしようもなく心が苦しくて、 止まらなかった
芙 梛
芙 梛
芙 梛
枕元に置かれた、 自分の作った薬草の束を握りしめながら、芙梛は呟く
やがて、蝋燭の灯りがゆらりと揺れ、 闇が部屋を呑み込む
彼女の中で、鬼としての "義務" と
心に芽生えた "想い" が、激しくせめぎ合っていた
芙 梛
もし、それで無一郎が私を拒んだら?
もしも、殺しに来たら?
そんな未来を想像した瞬間、 喉の奥が凍るように冷たくなった
だけど、逃げてはいけないと、 心の何処かで分かっていた
誰よりも、あの人の言葉が、それを教えてくれたから
時 透
その声が、何度も何度も、胸に響いていた
□ ■ □
10000❤️達成させて頂きました~🤭🎉 ほんとに感謝です🥹🙇♀️
今日は、この後にもう1話出そうと思っています💭
コメント
5件
うわぁぁぁぁぁーーーー!ヽ(^○^)ノ神作じゃん‼️(*^^*)これからも頑張ってね(((o(*゚∀゚*)o)))
もう、、、なんて言えば良いんだろう、、、神ッッ .ᐟ.ᐟ