蝶屋敷の奥の部屋
無一郎が任務から戻ってきたのは、 つい先程の事だった
無一郎は、真っ直ぐ芙梛の部屋へ向かう
戸を開けると、 そこには静かに本を読んでいた芙梛の姿があった
芙 梛
芙梛の表情が一瞬だけ強ばる
先程まで、涙を流していたと悟られないよう
すぐにいつものような微笑みを浮かべてみせた
芙 梛
任務、お疲れさま
芙 梛
けれど、無一郎は返事をしない
ただ、じっと彼女の顔を見つめていた
芙 梛
時 透
時 透
芙 梛
二人は暫く黙って向き合う
外からは、 蝶の羽音と、木々を揺らす風の音が聞こえていた
無一郎は、静かに言葉を選ぶように口を開く
時 透
時 透
芙梛の目が僅かに揺れる
時 透
時 透
違うよ
君が会った事があるのは、「 芙梛 」じゃなくて 「 蓮華 」なんだよ
君が求めてるのは、「 蓮華 」じゃない
私じゃないんだよ
時 透
芙梛の指先が少し震える
やだ、気づいて欲しくない
君には気づかれたくない
知られたくないよ
芙 梛
芙 梛
そういった声は、何処か弱々しく、 今にも崩れそうだった
時 透
その瞬間、空気が変わる
芙梛の呼吸が止まったように感じた
無一郎は、真っ直ぐに彼女を見つめたまま続ける
時 透
嫌いになったりしないよ
時 透
時 透
僕は、聞きたい
時 透
芙梛は口を開こうとして、閉じた
そして、何かを堪えるように、ぎゅっと拳を握る
芙 梛
芙 梛
芙 梛
時 透
芙梛は深く息を吸って、そして静かに言った
芙 梛
芙 梛
「 芙梛 」じゃなくて、 「 蓮華 」ってね
それは、 彼女が人としての心を残している証のような 言葉だった
無一郎は、優しく言う
時 透
その名前じゃないけど、今はいいよ
いつか、無一郎に「 蓮華 」って 言ってもらえると良いな
芙 梛
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コメント
6件
うわぁぁぁぁぁーーーー!ヽ(^○^)ノ無惨許さない‼️ こんな可愛い子を鬼にしたことを❗️(#゚Д゚)ノ 続き楽しみにしてまーーーーーす‼️(〝⌒∇⌒〝)

あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ 読んでて切ない…!! 二人は幸せになってほしい……
めっちゃくちゃいい❣️うぅこんなにも悲しい恋があるのか、、、私は無一郎くんは本当に好いてるように見えた。忘れっぽい無一郎くんがあんなに覚えているから、、、本当のことを知っても嫌いにならないっていう保証はないけど2人には共通して辛いことがあるんだよね、、、よし!結ばれても結ばれなくてもこの作品を愛そう❣️そのくらい好きです❣️