そんなこんなで、何故かわたしと甲尾とのバスケ勝負開催が決定してしまった。
パチパチパチパチパチ……めでたくねー。
九手いくる
相羽吾蓮(あいば あれん)
九手いくる
相羽吾蓮(あいば あれん)
九手いくる
相羽吾蓮(あいば あれん)
吾蓮のその言葉さえ無視し、いくるは視線を甲尾に向けた。
なかなかに情熱的な視線である。もうそのまま付き合っちゃえよ。
そしてわたしの知らない所で乳繰り合っていろ。
皆が幸せになれる選択肢だろう。
甲尾莱亜(こうび らいあ)
言って、右手で銃の形を作る甲尾。軽くキモい。
そしてこちらにウインクをするな。かなりキモい。
九手いくる
木崎姫歌(きさき ひめうた)
わたしは何も言っていない。
と言っても、誰も聞いてはくれないのだろうな。
諦めて天を仰いでいると、いくるは早速ルールの説明を開始した。
内容はこうである。
1、ジャンケンによって先攻後攻を決め、10点先取でわたしの勝利。
2、それまでに1点でも決めれば、甲尾の勝利。
3、ファールは自己申告制。3P(スリーポイント)はありの、リバウンド禁止。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
何だこのルール?
わたしは呆れ顔でいくるを見た。
やつは嫌らしい笑みを浮かべている。
詐欺師の笑みである。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
相羽吾蓮(あいば あれん)
わたしはパー、甲尾はグーだった。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
相羽吾蓮(あいば あれん)
黙れ吾蓮。わたしは一刻も早くこの茶番を終わらせたいのだ。
甲尾莱亜(こうび らいあ)
二カッと笑い、甲尾はヒラヒラと手を振った。
わかっているのか、こいつ?
まあ、わかっていないんだろうな。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
とぼけた声を出しながら、右手でボールを弄ぶ。
そのまま右腕の上を這わせ、首、左腕、左手へとボールを運ぶ。
このルール、一見甲尾に有利に見えるが、実はそうでもない。
わたしが十点入れるまで――つまり約5プレイの間で、一本決める。
簡単そうに聞こえるが、たった5回のチャンスで素人が経験者から点を取るのは、至難の業だ。
まあ、わたしが外せばチャンスは増えるが、素人相手にそれはほぼあり得ないだろう。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
「十点先取」というルール上、先攻が有利なのは言うまでもない。
どうしても勝ちたいというわけではないが、無益な勝負を長引かせるつもりもない。
甲尾莱亜(こうび らいあ)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
いくるの狙いは恐らく、わたしとの圧倒的力の差を見せつけ、甲尾に恥をかかせることだ。
わたしを諦めさせるために。
わたしとしても、それは望むところだった。
まあ、勝ったとして、女子バスケ部に入るつもりはさらさらないが。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
甲尾莱亜(こうび らいあ)
わたしの問いかけに対し、甲尾は眉を尖らせた。
意味がわかっていないらしい。
矢臣(やおみ)
わたしの手元を見ながら、やおみんが言った。「それでやれ」ということだろう。
まあ、男子バスケ部は現在廃部同然の状態だ。
7号球がそこらに転がっているわけはないか。
第一体育館に行けば、体育用の7号球もあるだろうが、そこまでするほどでもないだろう。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
元々男子部が使っていたボールを捜すという手もあったが、黙殺した。
気の乗らないイベントに、これ以上手間も時間も費やしたくはない。
甲尾莱亜(こうび らいあ)
しねえよ。
試しに嗅いでみろ。ゲロ吐きそうになるぞ。
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