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編集長に出された夏祭り特集という無理難題をこなすべく、 都心から遠く離れた笹崖村にやってきた。
おばあさん
後ろから村人らしきおばあさんに声をかけられた。
ユウコ
おばあさん
べっぴんさん、と言われて嬉しさのあまり自然と口角が上がり、 少し納得してしまった。 それより、気をつけるとはどういう意味なのだろう。
ユウコ
おばあさん
おばあさんはそれだけ言って去っていった。 言っていることの意味が全くわからなかった。
夜七時、山の上の神社の方から祭囃子が聞こえてきた。 そろそろお祭りが始まるみたいだ。
ユウコ
私は独り言を呟きながら、 神社へと続く屋台がたくさん並んだ坂道を歩いていた。
おじさん
りんご飴の屋台のおじさんに声をかけられた。
ユウコ
おじさんにりんご飴を一つサービスしてもらい、 仲良く雑談していた。
おじさん
ユウコ
予想以上に話が盛り上がって話し込んでしまった。 ふと周りを見渡すと少し違和感を感じた。
おじさん
おじさんが私を不思議そうな顔で見つめる。
ユウコ
私の質問に周りが動揺していた。 誰もが足を止め私を見ている。
おじさん
おじさんが話し始めると周りの人はいつの間にか動き始めていた。 少しひやっとしたがおじさんの話を聞くことにした。
ユウコ
おじさん
なかなか興味深い話だった。 これは取材のネタとしてはもってこいかもしれない。
ユウコ
おじさん
言われてみれば持っていない。 屋台を見渡しても売っている店が見当たらない。
ユウコ
私は早く情報収集をするために、 おじさんの話をろくに聞かず先を急いだ。
それにしても神社までの道が長い。 さすがにアラサー間近の記者にはきつかった。
ユウコ
坂を少し登ったところにベンチがあった。 まだ半分といったところだろうか。
???
ユウコ
声は聞こえるのに姿が見えない。 必死に辺りを探すと後ろの木陰で少女が手招きをしていた。 私は少女に近づき声をかけた。
ユウコ
年齢は六歳ぐらいで、頭に狐のお面をつけていた。
コンコ
少女は手で狐を表し、つたない言葉で答えた。
ユウコ
コンコ
どうやら私と遊びたいらしい。
ユウコ
コンコ
そんなことでいいのなら、取材のついでに連れて行ってあげよう。 私が手を握るとその手はやけに冷たかった。 おかしいと思ったが特に気にしなかった。
ユウコ
私たちはいろんな屋台を見て回った。 コンコちゃんは全てが初めてのようで、目をきらきらさせて喜んでいた。
ユウコ
コンコ
楽しい時はあっという間に過ぎていった。 夜の二十二時、お祭りが終わりに近づいていた。
ユウコ
コンコ
ユウコ
コンコ
何を質問してもコンコちゃんは首を振った。 そんなのあり得ない、じゃあこの子はどこから来たの?
ユウコ
コンコ
コンコちゃんから思いがけない質問が来た。何で今お面?
コンコ
ユウコ
私は寒気がした。何か嫌な予感がする。
コンコ
おじさんから聞いた話を思い出した。 怨霊を鎮めるためにお面を祀るのだと。 持ってないとどうなるかまでは聞いてなかった。
コンコ
コンコちゃんが徐々に近づいてきて、私は尻餅をついて後退りする。 まさか、この子は……。
コンコ
コンコちゃんの手が私の顔に伸びてきた。 私は状況が理解できずに固まっている。
コンコ
だめだ、逃げられない、怖くて体が動かない。 コンコちゃんの手が私の顔に触れた。
ユウコ
手が触れた瞬間、焼けるような痛みが襲った。 それはじりじりと私の顔を侵食していく。
ユウコ
私はコンコちゃんの手を跳ね除けて、すぐに立ち上がって逃げ出した。
神社の方向にひたすら坂を駆け上がる。 コンコちゃんは私の後を追ってきている。
周りを見ても誰もいない。 もう一つおじさんが言っていたことを思い出した。 お祭りの最後に神社の祠にお面を祀る。 神社に行けば人がいるはずだ。
コンコ
後ろを向くとコンコちゃんはすぐそこまで来ていた。 宙に浮いてすーっと移動している。 笑いながら私の手を掴もうとする。
神社が見えてきた。奥には人だかりができている。私は必死に叫んだ。
ユウコ
神社にいた人たちが一斉に私のほうを向いた。 その中にいた神主が私を見て事を理解したようだった。
神主
私は言われた通り神主の後ろに隠れた。
コンコ
神主
コンコちゃんは神主に触れようとした。 でも何かに弾かれて触れられず、コンコちゃんは涙目になっている。
コンコ
そう言ってコンコちゃんはゆっくり消えていった。
ユウコ
神主
神主は呆れ顔で私を見つめている。
ユウコ
神主
私は運が良かった。大体の人は助かっても顔に火傷の痕が残るらしい。 過去には何人か本当に顔を取られた人もいるという。
ユウコ
神主
私がもうちょっと下調べをしておけば、 こんなことにはならなかったかもしれない。 でも私は、コンコちゃんが悪い幽霊だとはどうしても思えなかった。
村から帰ってきて記事をまとめた。 あの恐怖体験も踏まえて、笹崖村の楽しいお祭りと、 一人の少女のことをみんなに知ってもらえたらいいと思う。