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〜Side White〜

ピンポーン

五十嵐明日香

五十嵐明日香、大学生です

やって来たのは、 ブランド物で身を固めた若い女性

かなり濃くメイクをしていて、 少し離れたここからでも、 強く香水の匂いを感じる

真冬

ありがとうございます。それでは本題を。

真冬

貴方の“願い”をお聞かせ下さい。探し物から殺しまで……“何でも”叶えて差し上げましょう

顔をしかめないよう気をつけつつ、 いつものセリフを言った

五十嵐明日香

お金を……お金を貸して欲しいんです

真冬

お金、ですね。それであれば、返済は不要ですよ

五十嵐明日香

えっ、ほ、ほんとですか!?

真冬

はい。いくらご用意いたしましょう?

五十嵐明日香

えっと……500万ほど

真冬

分かりました。

真冬

……ところで、用途を聞いてもよろしいでしょうか?

五十嵐明日香

いや、それは……。

五十嵐明日香

っていうか、あの、初対面の相手にそんなこと聞くって、失礼と思わないんですか?

真冬

あぁ、すみません。そうですよね。

真冬

それでは、きちんと説明いたします

五十嵐明日香

……?

真冬

この『何でも屋』では、お金を頂かない代わりに、願いを叶える依頼料というものをもらっています。

真冬

それは、自分が誰かに知られたくないこと……つまり弱みですね。

真冬

依頼によっても変わりますが、今回は500万という大金を渡すわけです。

真冬

それ相応の対価がないと、こちらも引き受けられません。

真冬

……それに、500万をもらう人に、用途を伝えない方が失礼なのでは?

五十嵐明日香

うっ……。

五十嵐明日香

……わ、分かりました、話しますよ……

少し圧を加えつつ説明すると、 簡単に折れてくれた五十嵐さん

五十嵐明日香

用途は……推しに貢ぐ為です

真冬

“推し”?

五十嵐明日香

私、ホストクラブに通ってて……そこのユウスケくんと、どうしても付き合いたいんです。

五十嵐明日香

それで、一杯貢いでくれたら、付き合ってやっても良いって言われて……!

あー……なるほど、推しってホストか

真冬

(そういえばボク、昔ホストみたいな顔してるってよく言われてたっけなぁ……)

真冬

分かりました、話して下さりありがとうございます。

真冬

それでは、こちらの契約書に署名をお願い致します

3日後

あれから、五十嵐さんの銀行口座に 直接500万を振り込んで、 依頼は無事完遂した

ニコ

いつも思うけど、ほんとにあのお金どっから出てんだか……

真冬

さぁね

ニコを軽く受け流して、付けっ放しに なっていたテレビに目を向ける

テレビ

『続いてのニュースです。』

テレビ

『昨夜未明、○○県○○市で、女性の遺体が発見されました』

真冬

(遺体……)

テレビ

『遺体は、五十嵐明日香さん21歳。自殺と見られています』

真冬

え……?

テレビ

『遺体は自宅のリビングで発見され、死因は首吊りによる窒息死と見られています。警察は──』

ニコ

あれ、これってこの前来た人?

真冬

う、うん……けど、何で……?

ニコ

多分、推しの“なんとかくん”に裏切られてー、とかじゃない?

ニコ

“貢いでくれたら付き合っても良い”は、大体後で嘘とかで誤魔化されたりするのがオチだし

そうだとしても、 自ら命を絶つなんて……

真冬

(もしかして、昨日ボクがお金を渡したせいで……?)

ニコ

……こっちがお金あげてもあげなくても、本人があの道から外れない限り、結局五十嵐さんはこうなってたと思うよ

真冬

えっ?

不意に、ボクの心を読んだように、 ニコがそう言ってくる

真冬

ボクのこと、心配してくれたの?

ニコ

まさか。

ニコ

こういうことなんて少なくないし、その度に社長に病まれたら困るから。

ニコ

それよりほら、時間もうすぐじゃない?

真冬

え? ……あ、ほんとだ

時間を見ると、そらるさん達との 待ち合わせ時間までもうすぐだった

今日は、そらるさんとボク、そして 天宮さんこと天月さんと一緒に、 ご飯を食べに行く約束をしてたんだ

真冬

(これからの活動で天月さんと関わることもあるだろうって、そらるさんが企画してくれたんだよね。)

真冬

(時間もないし、そろそろ準備……)

ピンポーン

これは……エントランスの方からだ

ニコ

まふ、その前に一旦依頼

真冬

えぇ〜……

ニコ

文句言わないの。ほら、準備しといて

真冬

はーい……

真冬

(うぅ、楽しみが遠のいた……)

そらるさんには、急用が入って 少し遅れると連絡を入れておいた

いつも通り準備をして待っていると、 ニコが依頼人を連れて戻って来る

真冬

ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへお掛け下さい

やって来たのは、少し派手目な スーツを見にまとった男性

綺麗な顔立ちで金髪、片手には何かが 入ったアタッシュケースを持っていた

いつも通りボクが自己紹介をして、 相手に名前と職業を聞く

二階堂裕介

二階堂祐介。今はホストクラブでホストをしてる

真冬

(“祐介”……それでホストって……)

少し似た話を、前に聞いたような

真冬

ありがとうございます。それでは本題を。

真冬

貴方の“願い”をお聞かせ下さい。探し物から殺しまで……“何でも”叶えて差し上げましょう

二階堂裕介

何でも……本当に何でも叶えてくれるんだな?

確認というように、聞き返される

真冬

はい、何でも

二階堂裕介

……殺して欲しい奴がいる

真冬

暗殺依頼、ですね。それでしたら、依頼料とは別に、別途料金がかかりますが……

二階堂裕介

それなら問題ない

そう言って、持っていたアタッシュ ケースを机の上で開けた二階堂さん

真冬

(これって……)

二階堂裕介

500万。これだけあれば足りるか?

真冬

……ええ、十分です

真冬

(やっぱりこの人、前に来た五十嵐さんの……)

二階堂裕介

それで、殺して欲しい奴ってのがこの男だ。

スーツの内ポケットから、一枚の 写真を取り出して渡される

二階堂裕介

名前は谷橋朝陽。今どこで何をしてんのかも、元々何してたのかも、何も情報が無いが……

写真を受け取って、 それをよく見てみた

真冬

っ……!?

そこには、よく見知った顔が

真冬

(これが、“谷橋朝陽”……??)

真冬

……この人で、間違いないですか?

そんなわけない、嘘だと思いたい

必死にそう思いながら、 動揺を隠して聞いてみた

二階堂裕介

ああ、間違いない。

二階堂裕介

この男の所為で、俺の人生も、家族も、全部狂ったんだ

真冬

っ……

真冬

(どういうこと……? 何が起きてるの……??)

真冬

……分かりました。詳しくお話を聞いても?

二階堂裕介

あぁ。

二階堂裕介

俺の親父は元々、デカい企業の社長をしてたんだ。家も裕福で、生活には困ってなかった。

二階堂裕介

……だけど数年前、うちの会社の不祥事が、1人の社員に暴かれて明るみに出た。

二階堂裕介

その不祥事を暴いた社員ってのが、当時親父の会社にいた、この谷橋朝陽だ。

二階堂裕介

最終的に会社は倒産。親父が一家心中しようとして、ギリギリのところで俺だけ逃げて、他の家族は死んだ。それで、こうしてホストとして働いてる。

二階堂裕介

昔親父に聞いてここのことは知ってたから、いつか絶対殺してやるって思ってた。そんな時に、このまとまった金が入ったんだ

『何でも屋』のことは 裏ルートで知ったのか

真冬

……なるほど、ありがとうございます

真冬

(自分が勤める会社の不祥事を暴いた……?)

話の中に少し疑問点はありつつも、 一先ず納得して話を進める

二階堂裕介

依頼料の弱みはこれで良いよな。金も十分だろ。

二階堂裕介

なあ、“何でも”叶えてくれるんだろ?

真冬

……。

真冬

……分かりました。それでは、こちらの契約書にサインをお願いします

真冬

(きっと、気のせいだよね……?)

ニコ

あはは、帰って来たね、500万

真冬

うん……

いつも通り明るいニコとは対照的に、 ソファの上で体育座りをして蹲る

ニコ

まふ?

真冬

……何?

ニコ

さっきから様子が変だよ。その写真、谷橋朝陽のやつじゃないの?

ニコ

だったら俺に渡して欲しいんだけど

真冬

……ん

ニコの方に、写真を 持っている方の手を伸ばす

ニコ

ありがと。

ニコ

……って……

真冬

……そういうこと

ニコ

あ〜、はいはい、なるほどね……。

ニコ

でもまふ、依頼は依頼だよ。元より2人も、“願い”を叶える為だけの関係に過ぎないでしょ?

確かに、ニコの言う通りだ

真冬

そう、だけど……

元々ボクと“あの人”は赤の他人、 ニコの言う通り、依頼で繋がってる だけの脆い関係に過ぎない

真冬

っでも、もしこれが本当にそうだとしたら……

ニコ

……それはもうしょうがないよ、こんな依頼が来ちゃったんだから。死人に口無しって言うでしょ

真冬

そんなのっ……

ニコ

まふ

真冬

……?

ニコ

裏の世界では、たとえ誰に対しても、“情”を持ったら終わりだよ

真冬

っ……分かってるよ……

返事をして、また蹲る

裏の世界にいるボクらにとって、 情を抱くことは許されない

自分の弱みに、敵に、足枷になるから

真冬

(分かってる、けど……)

あの写真の人がもし、 本当にあの人だったら

どうして2つ名前があるのか、 どうして会社の不祥事を暴くなんて ことをしたのか

真冬

(出会った時から、普通の表の人じゃないような気は薄々してたけど……)

ニコ

ほら、それより今度こそ行って来なよ。一ノ瀬さん達待ってるんじゃない?

真冬

あ、うん……

真冬

(今日、この後……どんな顔して会えば良いんだろう……)

『何でも屋』〜貴方の願い、“何でも”叶えます〜

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