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おと
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目の前の血溜まりが拡がっていく
その中央には
まだひくひくと筋肉反応を見せる女が
くずおれていた
千尋の黒目は大きく開いていた
笑い出したくなるような
一種滑稽な物体——
それが不可逆的な死を受け入れているのが
得体の知れない求道師による
儀礼のようにも 千尋には思えた
痛みで苦悶の表情を浮かべたまま固まってしまった女は
動かなくなったまなこをかっぴろげたまま
宙を
あるいは己の血が行き着く先を見つめているように見えた
千尋の膝が折れる
力なく崩れるというよりは
「魂が抜き取られた」かのように脱力し
そのまま地面に横たわった
ヒッ、ヒッと 苦しげな嗚咽が漏れる
千尋
千尋
混濁した苦悩が
那柚が喋っていたときの記憶に重なり
物体を模る輪郭を歪に変形させていく
体躯がダンゴムシのように屈曲する
膝を両手で抱え
機械の排気と 鉄の匂いを感じた
ずっとそうして 最後には腐ってしまいたい
邪な欲望が顔をのぞかせる
千尋
千尋
鯉城高校正門前にたかったパトカーの傍で
特殊部隊に捕縛された夏樹は 紫煙ををくゆらせていた
特殊部隊
特殊部隊
特殊部隊
夏樹
夏樹
夏樹
夏樹
特殊部隊
夏樹
夏樹
夏樹
特殊部隊
夏樹
夏樹
夏樹
特殊部隊
夏樹はもう一度深く息を吸い込み
はあっと吐き出した
夏樹
夏樹
特殊部隊
特殊部隊
特殊部隊
夏樹は左足を一歩下げ
すかさず警官の急所に蹴りを入れた
特殊部隊
夏樹
悶える男に背を向け
夏樹は再び校門の中に入った
姿を悟られないよう早歩きで 校舎の横にある 「地下への入り口」に入り込む
男はそれを目で追った
特殊部隊
特殊部隊
特殊部隊
それを聞きつけた刑事が校門に駆け寄る
捜査官
特殊部隊
捜査官
捜査官
捜査官は苦しむ男の腹に
さらに足を捩じ込んだ
千尋は屈んだまま
赤黒い水たまりを見ていた
その液体の中からあぶくが現れるような
何かが新しく生み出されるような気配があった
「その後に来るもの」の予感
それをうっすら感じながら ぼうっと何かを待っていた
千尋
突然ポケットの中のスマートフォンが鳴った
画面には「篠原夏樹」の名前
指を滑らせ
耳に当てる
夏樹
夏樹
夏樹
千尋
千尋
千尋
千尋の頭の中で
那柚の死体がマリオネットのように
宙吊りになるように浮き上がる
鷲のように屈曲した腕
ゆっくりと血まみれの顔が起き上がる
夏樹
夏樹
夏樹
千尋
千尋
千尋は脆く弱い感情を
否定的な言葉にした
夏樹は電話の向こう側で
冷ややかにこう告げる
夏樹
夏樹
千尋の頬を生ぬるい涙が伝う
千尋
千尋
夏樹
夏樹
千尋の目からはどんどん涙が滴る
夏樹
いつまでも次の言葉を言わない千尋に
夏樹は怒鳴る
夏樹
感慨にふける間もなく
千尋は走り出した
千尋
夏樹
夏樹
夏樹はコンクリートの分厚い壁の前に
立ち尽くしていた
するとその入り口に近い場所から
「ここだ!」と声がした
夏樹はスマートフォンの電話を切り
ポケットに仕舞い込む
捜査官
捜査官
捜査官
捜査官
捜査官
夏樹
夏樹は舌打ちをしたが
捜査官の姿を見るなり
ニッと口角をあげた
夏樹
夏樹
夏樹
スーツ姿の捜査官の後ろから
防護服に身を包んだ機動隊員が
数人現れた
捜査官
捜査官
捜査官
捜査官
捜査官
捜査官が従えてきた警官が
じりじりと夏樹に近づく
捜査官
捜査官
夏樹
夏樹
コメント
4件
うわっ、44話……めっちゃ重い回だった……。 千尋が那柚の死を目の当たりにして完全に心壊れかけてるのが痛いほど伝わってきた。「もうどうでもいい」って投げ出すシーン、胸が締め付けられたよ。でもそこで夏樹が「お前を守る」って言うんだよな……あの普段ふざけてる夏樹が真面目な口調で言うから余計にズルい。 終盤の捜査官との対峙、夏樹めっちゃ強気でかっこよかった。次どうなるんだよ、続き気になる……!