久々に訪れた病院は慣れない消毒の匂いで満たされていた
少し不審な行動をとってしまう
看護師
看護師のハキハキとした声に思わず唇をなめる
ガラガラ
医者
母親
医者
そう言われ、口を大きく開ける
押さえつける金具が冷たく舌に当たる
医者
医者
医者
母親
看護師
ガラガラ
母親
看護師
奥で看護師の声が聞こえる
ついさっきまで僕の事を心配してくれていたのに今はもう僕のことなんか何とも思っていないのだろう
捻くれていると思うがそう考えてしまう
母親
ころん
頭は痛いが幸いそれ以外の症状が全くなかった
そのため僕は病院を見て回った
何の変哲の無い部屋ばかり
そんな中1つの部屋に引かれるように入った
そこには1人の少年がいた
背は僕より少し高い
年は少し大人びて見える
るぅと
外を眺めていたのがこちらへ振り向き涙をたくさん溜めた目で見つめてきた
部屋の中に一歩惹かれると同時に少年が駆け寄ってきた
ころん
ボフッ
えっ?
声をかけようとした時同時にお腹に抱きつかれてた
ころん
るぅと
いやいやいや、全然良くない なぜ見知らぬ人に抱きつかれてなきゃいけないのか
るぅと
彼の涙が服に少しばかりつく
戸惑いはあるがなぜか彼の身体を抱き寄せてしまう
見知らぬ人 だけど何故か嫌な気持ちはしない
現在午後3時54分
もう学校はとっくに授業が終わってるはず
それでも風邪で休んだ僕を心配した連絡もくれない友達や
あまり僕に構ってくれない母親や
ほんの数秒しか心配してくれない医者や看護師よりも
この少年は何か僕に助けを求めている
多分だけど…
自分の存在意義を感じた
るぅと
ここは病院だきっと僕の経験したことの無いような辛い事があるのだろう
僕はしばらくの間座り込みながら彼が泣き止むまで抱きしめた
落ち着いてきたのか小刻みな震えが無くなり背中が深呼吸のため大きく動くようになる
ころん
るぅと
るぅと
ころん
るぅと
るぅと
僕の言葉を遮り話しかけてきた
ころん
ころん
るぅと
るぅと
何故か足早に話している
るぅと
ころん
僕が口を挟む隙もなく病室から出されてしまった
ころん
初対面なのに嫌な気はしなかった。 それに頭に引っかかったままこびりついて離れないあの最後に見せた笑顔
そんなことを考えながら歩き、気づくと母親に連れてかれながら車に乗り込んでいた
母親
母親
ころん
あの日から
あの時から
彼の事を考えていた
どうしてこんな見知らぬ人に抱きつき泣いたのだろう
一瞬一瞬で変わる窓の景色を見ながらそんなことを考えていた
コメント
4件
主さんの物語とても好きです! 続き楽しみにしてます!