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夜ごと殺される夢を見る

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夜ごと殺される夢を見る

2 - 夜ごと殺される夢を見る 第2話

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3,204

2020年10月20日

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刑務官

お待たせしました

刑務官

面会時間は30分です

刑務官

場合によっては面会を途中で終了することがあることも、ご理解ください

佐那

はい

真帆

…………

佐那

緊張してる?

真帆

…はい

真帆

写真は資料でみたことがありますけど

佐那

分かってると思うけど、ここで見聞きしたことは外で話さないこと

真帆

はい

ギィ…

佐那

(来た…末田アツシだ…)

末田アツシ

…おはようございます

末田アツシ

今日は御足労いただいてすみません

佐那

大丈夫ですよ

佐那

よく眠れてますか?

末田アツシ

おかげさまで…

末田アツシ

そちらの方は?

真帆

先生のアシスタントの者です

真帆

事務員をしています

末田アツシ

すごいなぁ、法律事務所の事務なんて責任重大ですね

末田アツシ

今日はよろしくお願いします

佐那

(…いつ会っても、末田アツシは落ち着いてる…)

末田アツシ

すみません、今日も、切手を持ってきてくださいましたか?

佐那

ええ、ご両親から預かった分も差し入れました

末田アツシ

よかった…、これで手紙が書けます

佐那

ご両親も、面会にいらっしゃいますか?

末田アツシ

…頻度は落ちましたけど

佐那

…そうですか

末田アツシ

ふたりとも、報道を見て、気後れしてしまうようです

末田アツシ

遺体の状況とか、事件の時のこととか…

末田アツシ

僕は何もしていないっていっても、どんどん信じられなくって…

佐那

(声が憔悴してる…)

佐那

(無理もないだろうな…拘置所で、裁判を待っている身だもんな)

佐那

自白したということが、ご両親は気にかかってるんでしょうね

末田アツシ

…家に帰れると、言われたんです

真帆

え?

末田アツシ

僕が認めたら、家に帰れると

末田アツシ

もう何日も拘留されてて…何日かも覚えていなくて

末田アツシ

会社のことも、家族のことも心配でした

末田アツシ

その時に、刑事に自白をすすめられたんです

真帆ちゃんは、手帳に勢いよくその言葉をメモした…

佐那

自白の際に

佐那

末田さん、被害者の所持品のを話したと聞いています

末田アツシ

末田アツシ

…『紫色のポーチを知ってるか?』

末田アツシ

そう聞かれたんです

末田アツシ

もう毎日の取り調べて疲れていて

末田アツシ

深く考えず『化粧ポーチです』と答えました

佐那

…被害者の持ち物を告白したことになりますね

真帆

どういうことですか?

佐那

秘密の告白

佐那

…捜査情報を公開するときにわざと情報を隠しておくことがある

真帆

誘導尋問じゃないですか!

真帆

ポーチなんて、何に使うか決まってるようなものだし

末田アツシ

…ポーチなんて知りません

末田アツシ

遺棄された場所は知ってます、それだけは真実で…

佐那

確か、小学校のハイキングコースだったんですよね

末田アツシ

…はい、だから、行ったことがありました

佐那

それで、土地勘があるとされたんですね

末田アツシ

そうだと思います

佐那

目撃情報はあるのに、監視カメラには被害者すら映ってない

佐那

監視カメラも把握している犯行だと言われています

佐那

だから、土地勘が重視された…

末田アツシ

疲れたんです

末田アツシ

何十日も、知らないことを徹底的に聞かれて…

末田アツシ

気づいたら、『僕が殺しました』と

末田アツシ

ポーチなんて知らない!

末田アツシ

小学校のハイキングコースなんて、ぼんやりとしか覚えていない!

末田アツシ

あの日、残業なんてせずに飲み会に行けばよかった…

末田アツシ

会社には監視カメラが無いからアリバイも証明できないし…

佐那

…………

末田アツシ

ずっと考えていたんです

末田アツシ

どうしてこんなことになったんだろうって…

真帆

末田さん、安心してください!

真帆

先生は優秀な弁護士さんです

真帆

色んな事件も見てきました

末田アツシ

…アシスタントさん…

真帆

外にいて、疑われたこともないあたしに

真帆

末田さんの気持ちは分からないかもしれない

真帆

でも、自分を有罪だって思ったら、どうにも出来ません!

末田アツシ

ありがとう、ございます

佐那

彼女の言う通りです

佐那

お力になれることは、全力で対応しますから

佐那

気を強く持ってください

グズッ、グズッ…

佐那

大丈夫?真帆ちゃん

真帆

ごめんなさい

真帆

なんだかショックで

佐那

ごめんね、連れてきちゃって

真帆

いいえ!

真帆

俄然やる気が出てきました!

佐那

そうだね…

佐那

状況証拠だけ

佐那

とはいえ、アリバイははっきりしないし

佐那

目撃者が『彼だと思う』って証言してる

佐那

これはしんどい状況だと思う

真帆

…先生、絶対に勝ちましょうね!

佐那

そのためには、証言をひっくりかえさないとね

佐那

ふぅ…疲れた…

オフィスに戻ると、私宛の郵便物が届いていた…

挨拶状や、DM、書類などを分けていた手が止まる…

佐那

…末田さんからだ

佐那

相変わらず、きれいな字

志賀佐那先生

いつもお世話になっております。

先日、先生がご用意くださった調書の写しを確認いたしました。

自分の些細な言動や、行動がこのように結びつけられたのかと愕然としています。

両親のサポートも何卒よろしくお願いいたします。

末田アツシ

佐那

…無罪主張か

その時封筒から短い髪の毛が1本、落ちた

佐那

(染まってない黒髪──末田アツシの髪の毛だ…)

たまたま入ってしまったのだろうけど

末田アツシがどうしても外に出たいと

私に訴えているように感じた…

佐那

(…髪、封筒に入れておこう)

佐那

どうしようか…弁護方針を決めないと…

──初対面時──

佐那

…末田さん、ここから先は『弁護士として』の提案です

佐那

法廷では2つの戦い方が存在します

末田アツシ

2つ…?

佐那

ひとつは、無罪を主張し続けること

佐那

もうひとつは、起訴事実を受け入れつつ

佐那

減刑を最大限勝ち取ることです

末田アツシ

それって、罪を認めるってことですよね?

佐那

はい

末田アツシ

…僕はやってない

末田アツシ

自分がやってないことなんて、受け入れられません!

佐那

…分かりました

末田アツシ

…先生は、僕を信じていますか?

佐那

弁護士です

佐那

あなたの利益になることを行う

佐那

それが仕事ですから

佐那

彼の無罪を信じてる…か…

佐那

どうなんだろうな…

…コツン…

佐那

…ん?何の音?

佐那

…気のせいかな

私は仕事に戻る…集中すると、時間はあっという間に過ぎていく…

…コツン…コツン…

佐那

やば…めちゃくちゃ眠…

コツン…コツン…コツン…

突然襲ってきた強い睡魔に、私は導かれるように眠りについた…

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