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賭ケグルイ 藍

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賭ケグルイ 藍

32 - これから

♥

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2021年11月15日

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報告する

冬真

お祖父様、冬真です。少しよろしいでしょうか

お祖父様の部屋の襖前で正座をして、 中にいるであろう人に話しかける

相川祖父

どうぞ、入りなさい

答えが返ってきて、失礼します、 と言ってから襖を開けて中に入った

冬真

お身体、大丈夫ですか?

お祖父様は、数年前から 病床に伏せている

病状は重いものではなくて、普通に 起き上がれたり、ご飯も食べられる くらいには元気だ

うちの家系は、みんな白髪に赤眼

そして父さんみたいに、 みんなあまり長生きではない

だから、お祖父様がこの歳でも ここまで元気なのは、実はすごいこと

相川祖父

あぁ、大丈夫だよ。それより、今日は何だか外が騒がしいね

廊下の方に目を向けながら、 お祖父様がそう言う

冬真

はい。

そういえば、すっかり報告するのを 忘れていた

冬真

『空の隱れ雲』が、見つかりました

相川祖父

……そうか、よくやったな

少し驚いた素振りを見せつつも、 ふわりと笑って、頭を撫でてくれた

冬真

けど、そのことで、少しご相談があって

相川祖父

相談かい?

冬真

……もしも、の話なんですけど……

そうして、さっき考えていたことを お祖父様に話した

冬真

……というわけでして

口にすると、より一層 不安が押し寄せてくる

お祖父様は、なんて言うだろう

相川祖父

冬真は、好きなことはあるかい?

冬真

えっ?

好きなこと……?

突拍子もない話に、つい驚いてしまう

相川祖父

私は読書が好きだ。

相川祖父

この歳になっても、驚きや好奇に満ち溢れている

たしかに、お祖父様は よく本を読んでいる

部屋の本棚にも沢山本があるし、 こうやって話している時に、 本の話をすることもあった

相川祖父

相川家は、いずれ現れる『空の隱れ雲』に仕える為に血を繋いでいる。そう教えたね

冬真

はい

お祖父様から父さんへ、 父さんからボクへ受け継がれてきた、 相川の教えだ

相川祖父

私も相川の人間だ。けどこんな病人じゃあ、人に仕えるどころか、仕えられている。

相川祖父

一人で生きていくのもままならない状態だ

冬真

……はい

相川祖父

だから私は、諦めているんだ

諦めている……?

相川祖父

人に仕えることができない。ならいっそ、自分の好きなことをして余生を生きよう。

相川祖父

潔くそう考えた方が、悔いも残らないだろうからね

冬真

(いっそ、自分の好きなことをして……)

お祖父様の言葉を、心の中で復唱する

相川祖父

もし『空の隱れ雲』に拒まれたなら、きっと1人でも大丈夫ということだろう。

相川祖父

だから冬真は、好きな様に生きなさい

冬真

好きな様に……?

相川祖父

あぁ。それに、『空の隱れ雲』だって不死ではない。いずれ命の終わりが来る。

相川祖父

そうすれば、相川の使命は尽きる。そうだろう?

冬真

はい

相川祖父

その後の相川……冬真の子供だね。その子に、教えは必要なくなる。

相川祖父

その子が、今の冬真が想像している、未来の自分だ

それは……そうだ

『空の隱れ雲』であるカナタ先輩が いなくなれば、相川が使える人は いなくなる

もしも将来、ボクに子供ができたと して、血を繋いでいく理由がないんだ

それが未来のボクである可能性もある

相川祖父

そうしたら、生きる意味を失うと言っていたね。

相川祖父

でもそれは、また新しく作ることもできる

冬真

……!

自ら、生きる意味を作る……

相川祖父

現に私も、本を読むことを生きる糧としているからね。

相川祖父

この著者の作品は、いつも面白くて驚かされるんだ

そう言って、手近にあった本を 見せてきた

そういえばお祖父様は、よく同じ 著者の作品を読んでいることが多い

その人の作品が好きで、心を惹かれる から、もっと読みたいと思うのだろう

相川祖父

だから冬真も、好きなことがあるのなら、それを生きる糧にすればいい。

相川祖父

せっかく授かった命だ、大切にしなければね

それから、またボクの頭を 撫でながら、こう言った

相川祖父

それにお前は、私にとって大事な孫でもあるからね。そう簡単に死なせやしないよ

冬真

はい

今となっては、お互いが お互いにとっての唯一の家族だ

ボクだって、お祖父様には 長生きしてほしい

きっとそれは、お祖父様も 同じなんだろう

冬真

(ボクは、まだ子供だけどね)

せめて、お祖父様がいなくなるまで は、何があっても頑張ろうと思った

相川祖父

それで、これからどうするんだい?

冬真

『空の隱れ雲』……空喰カナタさんを、しばらくうちで匿おうと思います。

冬真

家に帰したら、空喰家が何をするか分かりませんから

カナタ先輩も、それを思ってここに いたいと言ってくれたんだと思う

相川祖父

そうか。まぁ、冬真の好きにしなさい。

相川祖父

今の当主はお前だからね

冬真

はい

そろそろ、みんなのところに 戻った方がいいかも

冬真

色々と、ありがとうございました

相川祖父

あぁ。また、本の話をさせてくれるかい?

冬真

はい、いつでも

それから、来た時と同じ様に 挨拶をして、部屋を出た

ボクがこれからやるべきこと

カナタ先輩の意思を聞く

もしそこで拒まれれば、 ボクはお祖父様の言う通り、 好きに生きようと思う

ボクが必要だと言われれば、 教えの通りカナタ先輩に仕えよう

どちらにしろ、 優先すべきはカナタ先輩だ

冬真

お待たせしました

みんなのいる客間まで戻ってきた

冬真

……カナタ先輩

カナタ

……?

冬真

これから、どうしたいですか?

先輩の前に座って、そう聞く

今のボクのやるべきことは、 カナタ先輩の意思を聞くこと

これからどうするかを考えるのは、 それを聞いてからだ

カナタ

……オレは……

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