テラーノベル
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鏡に映る自分を、
緋月は無表情で見つめた。
ウィッグを被り、
瞳の色を変える。
丁寧に削ぎ落としていく。
指先の動きに迷いはない。
何度も繰り返してきた作業だ。
黒堂 緋月
鏡の中の緋月は、
まるで緋月ではなかった。
「準備できた?」
耳元で、凌の声がした。
黒堂 緋月
相変わらず切り替え早いな
黒堂 緋月
…ふ
小さく息を吐く音。
たぶん、笑っている。
出発前の廊下は、
静まり返っていた。
黒堂 零
黒堂 零
零は英語で言う。
仕事の言葉だ。
黒堂 緋月
零は一歩、緋月に近づいた。
黒堂 零
今度は日本語だった。
黒堂 零
一瞬だけ声が揺れる。
黒堂 緋月
緋月は振り返らず歩いた。
その背中を、零は見送る。
黒堂 零
黒堂 零
黒堂 零