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独りぼっちだった時期も、あった。

だけどそんなのすべて吹き飛ばしてしまうくらいの出逢いが、俺にもあったんだ。

…アメリアにも少しだけ、ほんとに少しだけ話したんだけど

今から話すような踏み込んだことは誰にも…話したことない

でもねメラ

俺にも…いたんだ

きみみたいにさ…最期を迎えるなら、この人に殺してほしいと思うほど

人生を捧げた、人が。

サミュエル

はぐ…

彼はその昔、ただ吸血鬼として孤独に生きていた

親の顔も知らない少年が、齢10になったその日

サミュエル

っ!?

ただ人を襲って食べていたサミュエルを、誰かが掴む

 

…此れは…なんの動物だ?

サミュエル

動物じゃなーーい!

サミュエル

おれはサミュエル!吸血鬼!

 

ほう…?興味深いな、持ち帰って飼おう

サミュエル

はぁ!?ダメに決まってるでしょ!食うよ!

 

どうやって?

サミュエル

うわ、わっ!?

特に表情を変えることなく、その男はサミュエルを摘み上げる

サミュエル

どうやってって…こう───!?

サミュエルが手を伸ばすと、男はサミュエルを投げ落とす

 

触るな無礼者

サミュエル

なんでぇ!?理不尽!!

 

ねえ、もうその悪魔倒したぁ!?

 

う、うぁーーん

 

 

お前、どうしたい?

 

俺に飼われるか…死ぬか

これが俺とその人との、出逢いだった。

サミュエル

なぁんだ、思ったより狭いね

 

殺すぞ

ぐぐぐと頬を圧迫されてサミュエルは早々と降伏する

サミュエル

ごめんなひゃいごめんなひゃい

サミュエル

(ほんとなんなんだ、この人)

サミュエル

(大したお金はなさそうだけど…いい匂いだし)

サミュエル

(…悪い人にも、見えないんだよなぁ)

 

あの!オーウェン殿!

 

なんだ

 

あっちの方で暴動が起きてて…!

 

分かった、向かう

 

おいサミュエル、行くぞ

サミュエル

はっ?やだねーっ、アンタなんかについていかないよーだ

 

餌の時間だ。

サミュエル

その人は正義のために殺しを執行する人間だった。

オーウェン

俺はオーウェン

オーウェン

いい噛みっぷりだったな、お前は役に立つ

サミュエル

…どーも

複雑な心地で、サミュエルはオーウェンを見つめていた

この人は香りから察するに、かなり強い

1人で十分、活躍できる

それなのにどうしてサミュエルを拾ったりしたのか。

そればかりが気になっていた

オーウェンはサミュエルに色々なことを教えてくれた

オーウェン

箸の持ち方はこうだ

サミュエル

うぇー、この中指なにぃ

サミュエル

持てればいいよぉ

オーウェン

まあそれもそうか

サミュエル

いいんだ…

オーウェン

いやでも人前ではちゃんとしろ

気分屋なようでしっかり者で、優しいようで冷たいような

サミュエルはそんなオーウェンに、しだいに興味を引かれた。

血を得られない日にはオーウェンが血をくれた

皮膚を淡く噛んでも、肉を犬歯が抉っても、オーウェンはただ飄々としている。

サミュエルにとってオーウェンは"変な人間"だった。

サミュエル

…なんで俺を拾ったの?

オーウェン

使い勝手が良さそうだったから

サミュエル

…それだけぇ?

オーウェン

それだけだ

オーウェン

何か不満でもあるのか?

サミュエル

…別にぃ

サミュエル

でもおれさぁ…分かるんだ

サミュエル

貴方は…おれのことを好いてはいないよね?

サミュエル

(例えばおれがある日出て行っても…)

サミュエル

(追いは、しないんでしょ?)

サミュエル

(…だったら拾ったりなんてしないでよ。)

自分を怖がらない人も、面倒を見てくれる人も、オーウェンが初めてだったのだ。

サミュエルはそんな風に徐々に生まれていく情を、噛み殺して過ごした。

ついさっきのその問いの答えは、遂に返ってこなかった。

オーウェン

…お前は頭がいいのだな

サミュエル

オーウェン

最近一緒に現場に行くようになって気づいたが…

オーウェン

俺が気づかないことにも、気づいてる

オーウェン

ただ知識があるだけじゃなく、それを活かすための洞察力も備わっていて…

サミュエル

よく分かんないけど

サミュエル

おれが賢いと…貴方の役に立てますか?

オーウェン

ああ

サミュエル

…それなら、いーや。

オーウェン

オーウェンはサミュエルを死からも虐げからも守ってくれる

わがままを言っても、呆れながら面倒を見てくれる

ほしいものを、心地いいものを、与えてくれる。

だからサミュエルはもう、オーウェンがどのように考えていようとどうでもよかった

自分にとって大切な彼に、何かできているなら

好かれてなどいなくたって、よかったのだ。

サミュエル

(…考える脳なんて、おれは要らなかったのに)

サミュエル

(貴方の気持ちなんて、知りたくない。)

…そして考えることを、放棄した。

銃口の先のエンディング

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