2010年9月6日(月)
最高気温34.1度
まだまだ蒸し暑い日が続くこの日
私は再び警察署を訪れていた
静(じん)さんから話を聞けるのは恐らく今日が最後になる
静さんは既に少年鑑別所に入ることが決まっていた
取調室に入ると
既に静さんが待っていた
沢田マリカ
井川静(じん)
静さんは時々、病院に通い
かすみさんから受けた虐待の傷の治療を行っていた
沢田マリカ
井川静(じん)
あすみさんを救出した時の怯えた姿が嘘のように
静さんは回復しているように見えた
でもどこか寂しそうな表情が
無性に私の胸を締め付ける
沢田マリカ
井川静(じん)
今日のこれが最後だと言うこともわかっているのだろう
寂しそうな表情が一変し
静さんは真っ直ぐな目で私を見つめた
2010年8月25日(水)
最高気温33.8度のこの日
静さんはいつも通りに学校へと向かった
普通なら夏休みで学校はないはずだが
少しでも家にいる時間を減らすため
連日の夏期講習に参加を希望
受験生であることを理由に学校に逃げていた
井川かすみ
井川静(じん)
井川かすみ
相変わらずかすみさんの機嫌は悪く
静さんが学校に行くことを不満に思っているようだった
井川静(じん)
井川かすみ
井川かすみ
井川静(じん)
井川静(じん)
井川かすみ
井川静(じん)
井川静(じん)
この頃になるともう
かすみさんの言いたいことが予測できるようになっていた
静さんがなにか反論しようとしてもその隙を与えず
静さんはただ従うしかなかった
夕方になり家に戻ると
家から出てきたかすみさんとすれ違った
井川かすみ
井川静(じん)
制服から普段着に着替えて
いつものようにあの部屋に向かった
冷房機もない部屋の奥に
全身に傷を負った彼女が横たわっている
両腕をベッドの柵に
わずか50㎝程のロープで括られ
生々しい傷の一部は化膿し悪臭を放っていた
この時間、かすみさんは買い物に出てしまうが
手を抜けばそれがそのまま映像として残ってしまうため
なるべくカメラに彼女が写らないようにして
酷くしているように見せることもあった
この日もカメラから遮るように彼女の前に座り
かすみさんが臭いと罵った彼女の身体にそっと触れ
動かなくなっている彼女の頭をそっと撫でた
誰もいない二人だけの空間で
静さんの中の彼女への愛しさが増していく
井川静(じん)
井川静(じん)
わざと冷たい言葉を浴びせるも
もう彼女がそれに反応することはなく
涙を流すこともない
殆ど生気を感じることのできない彼女の姿に
静さんの胸はより一層、締め付けられ
井川静(じん)
そんな考えが頭をよぎるほど
自分のしていることが危険だと言う認識がはっきりとあった
それでも母親に殺される危険から守らなければいけない
静さんが覚悟を決めナイフを握りしめた時
私達がインターホンを押した
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