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看護師

おはよう~!

看護師

いい天気だね!最近調子良くなって良かったね😊

片田 翔平

はい。

片田 翔平

いつもありがとうございます。

看護師

じゃあ、また昼食の時にね~!

看護師

雪菜ちゃん!起きなさいよ?

山本 雪菜

ふぁ~い

片田 翔平

昨日眠れなかったの?

山本 雪菜

ううん。すっごく気持ちよく寝れたよ!

片田 翔平

そっか

僕は、片田翔平。

高校1年生。

生まれ持った病気が、1年前に色々な場所へ転移したせいで、この病院で過ごしている。

彼女は、山本雪菜。

僕と同じ高校1年生だ。

2ヶ月前に、違う病院から、彼女はやってきた。

隣のベッドなので、最近おしゃべりをたくさんしている。

彼女の病気は、結構進んでしまってるそうだ。

だか、彼女は、辛い素振りなんて誰にも見せない。

僕はそういう彼女に少し惹かれていた。

山本 雪菜

おやすみい~

片田 翔平

え!また寝るの?

片田 翔平

看護師さんに怒られちゃうよ?

山本 雪菜

いいの!

山本 雪菜

おやすみー

片田 翔平

おやすみ...

片田 翔平

(あーあ。喋りたかったのにな...)

彼女は最近僕の名前を呼ばなくなった。

僕は悩んだ。

嫌われたのだろうか。

それをこの前、看護師さんに相談した。

すると看護師さんから、

看護師

...

看護師

あまり、言ったらダメなんだけど...

看護師

雪菜ちゃん.ね。

看護師

思ったより早く病気が進んでて、

看護師

最近、記憶が薄れてきちゃってるの...

片田 翔平

僕は...

片田 翔平

忘れられちゃったってことですか?

看護師

でも、雪菜ちゃんは...頑張り屋さんだから、きっと大丈夫よ!

僕はすごくショックを受けた

今、彼女が必死で眠ろうとしている理由は、自分が記憶を失いかけている所を人に気づかれないようにするためだった。

そんな彼女におやすみとしか言えない、彼女からしたらどこの誰だか分からない男の子は...

情けなかった。

そこで僕はノートをつけることにした。

僕の命も長いわけではない。

せめて、自分がこの世に生きていたという証拠を、残しておきたくて...

彼女との出会いから、全てを書いた。

ー4月。僕は君に出会った。

いつも話し相手がいなかった僕にはとても嬉しかった。

ー5月。僕は君と病気のことについて教えあった。

自分の命についても。全て。

ー6月。君は僕を忘れてしまいそうだ。

仕方がないと思うけど、やっぱり悲しい。

片田 翔平

(本当に忘れられる...)

1ヶ月後

ー7月。君は僕のことをすっかり忘れてしまったようだ。

前まで苦手だと言っていた友達と、君は仲良くなって、僕とは話さなくなった。僕には敬語で話しかけてくる。気を使ってるようだ。

山本 雪菜

片田さん。おやすみなさい。

片田 翔平

あ...うん。

片田 翔平

おやすみなさい...

僕は忘れられた...

その現実が受け入れられなくなってしまった。

毎晩毎晩ひたすら泣いた。

気が済むまで、僕は静かに泣いていた。

ある日、僕が泣いていることに彼女が気づいた。

山本 雪菜

どうしたの?

片田 翔平

...

せっかく話しかけてくれたけど、もう、言葉が出なかった。

すると、彼女が口を開いた。

山本 雪菜

私ね、なんか、大事な物。

山本 雪菜

忘れちゃった気がするんだよね。

片田 翔平

え...?

大事なものって...

山本 雪菜

お友達。

山本 雪菜

お友達との思い出をぜーんぶ。

山本 雪菜

思い出せなくなっちゃったんだ。

片田 翔平

...

お友達って...

僕...?

山本 雪菜

私ね、本当に辛い。って言えないんだ。

あの日みたいに君はどんどん話してくれた。辛いこと。ぜーんぶ。

素直に...

山本 雪菜

でも、私がこんな事言っちゃダメって…分かってるから言えない...

片田 翔平

どうして...?

山本 雪菜

...

山本 雪菜

私がね、どこかで急に気持ち悪くなって動けなくなったりすると、

山本 雪菜

やっぱり、お母さんとか看護師さんに迷惑かけちゃうでしょ?

山本 雪菜

だから...言えるわけない。

山本 雪菜

最近また色々な物忘れかけてきちゃう。

片田 翔平

じゃあ、僕のことも...?

山本 雪菜

うん。

山本 雪菜

きっと。

片田 翔平

...

山本 雪菜

そろそろ、限界かもしれない。

「無理しないでね!」

の一言もかけられない自分。

必死に生きようと、頑張ってる君。

やっぱり違うんだと僕は思った。

ー8月。君は、また僕のことを忘れてしまったようだ。

もう、話しかけてもくれない。

ー9月。君はもう1人では動けない状態になった。

僕も、病気が進んできている。

死が近づいてきている。

そう考えると生きていることがイヤになる。

でも、いつか君が教えてくれた。

命ということを思い出してなんとか乗り越えてこれた。

それだけ、君は僕に必要とされる人間なんだ。とわかって欲しい。

僕もいつかそれを伝えられるようになりたい。

ー10月。君は喋れなくなった。

大好きだった。おしゃべりが出来なくなった君の顔からいつもの笑顔が消えていた。

母親の前だと、一生懸命笑みを浮かべる君はとても苦しそうだった。

だか、愛らしく僕にはみえる。

ー11月。君は僕とのことを全て思い出したようだ。

僕はとても嬉しかった。

だけど、君はもう喋ることが出来ない。

まだ車椅子で動くことの出来る僕は君のベッドの隣で、手話でおしゃべりを満喫した。

ー12月。もう僕達は時間がないようだ。

彼女は僕に最後に笑顔を見せてこの世を去った。

それから僕も

彼女を追いかけるかのように。

安らかな眠りについた。

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