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一昨年の7月。私は1つ下の男の子と付き合っていた。私は社会人一年目の転勤族で彼は学生だった。

初めて告白されたのはもっと前で、私が大学3年生の時だった。私はその時別に好きな人がいたし、その後好きな人がいなくても彼と付き合うことはなかった。告白されてから1年半くらい過ぎて、虫が良すぎる気もしたけどとうとう折れて付き合うことになった。

美月

………

でも私はその選択をすごく後悔した。

デートの当日に彼が風邪をひいて、デートに行けなくなった。付き合ってから初めての出かけるデートだった。風邪に関しては仕方がないけど、そのあとこっちから連絡しても音沙汰なしなのだ。

だから私は意を決して彼氏の家まで来たけれどこれ以上どうするかは思いつかなかった。家に乗り込む気にはなれなかった。というか、折れて付き合ったのに交通費をかけてからの家まで来たのがあほらしくなりほとほと愛想が尽きて、私は彼に電話をかけた。

美月

今、家の前にいるんだけど全く返信ないから来たんだけど…私、今は近いからいいけど転勤族だからこれから遠くなった時に急に連絡取れなくなると困るの。

美月

だからもう別れよう。ごめんね

繋がらないからボイスメッセージ。涙も悲しい感情も何もなくてその時「全然好きになれなかったな」と私は思った。それから彼に申し訳なく感じた。

そして次の日、実家に帰っていた私は衝撃のメッセージを受け取る。

突然で悪いね
今後一切関わり合いたくない
恨んでくれて構わないよ?
さようなら

美月

…は?

意味がわからなくて何回か読み返した。

美月

待って、こいつまじで何言ってんの…?

ひとりごちてしまうほど意味不明だった。

なぜ私が振ったのに私が振られているみたいな文章になっているのか。そしてなんで今更返信したのか。私はむくむくと怒りの感情が湧いてくるのを感じた。

美月

(別に振った振られたはどっちでもいいけど)

美月

(急に連絡寄越さなくなって、心配してたのに何様?というか状況的にこの文章おかしくない?「一切関わり合いたくない」はこっちのセリフなんだけど。恨まれる価値もあると思うな!)

私は即刻彼をブロックして、スマホを投げた。

それでもやっぱり涙は出ないまま、私の初めての彼氏は最悪な印象で終わった。

そして現在、私はこれから遠距離恋愛中の3つ年下の社会人の彼氏と別れ話をするかもしれない。私のスマホに電話がかかってきた。

美月

…はい

優人

もしもし?

美月

……

優人

…あ、俺、2月末で仕事辞めるんでバタバタしてて…

美月

あ、そうなの…

優人

…全然連絡もせんでごめん

美月

うん…

付き合いたてのテンポの良さが嘘のように歯切れ悪く時折沈黙しながら会話が進む。 それでも電話が来ただけで私は少し安心した。電話来ないかもと思ってた。

優人

えっと…あの、やっぱり別れてもらえませんか…

10か月そっちから告白して付き合って「やっぱり」とか言わないで欲しい。どんだけ時間かけてんだよ。

美月

…理由を聞いてもいい?

こういう時に年上彼女として、余裕がある感じをだしてしまうのも良くないところなんだろうな…。

優人

うん…。俺、美月ちゃんがつらい時に何もできんで

美月

うん…

優人

全然連絡もできなくて優先順位もつけられなくて、美月ちゃんのこといっぱい傷つけて

美月

うん…

優人

近くにいる時は優しかったのにそばにいない時は全然優しくないねって言うのも本当にその通りで

美月

……

優人

もう自分のことでいっぱいいっぱいで…俺、見栄っ張りですごい仕事できる風にしてたけど、実は全然そんなことなくて全然できなくて…
仕事辞めてもコロナでそっち行くこともできないし…
俺なんかじゃ美月ちゃんを幸せにできないから…最近はもう傷つけてばっかりで

美月

…うん
私も全然仕事できなくて今の職場でも怒られてばっかりだよ

優人

そうなんだ…

美月

あと、私優人くんが見栄張ってるの気づいてたよ

優人

……

美月

見栄張ってると言うよりはかっこつけてるんだろうなぁって

優人

…はい
俺周りにも言われたんです「お前じゃ幸せにできない」って

美月

うん、そうだね…
どうせ返信来ないからと思ってつらいことあっても連絡しなかったから

優人

…本当にごめん

美月

…謝らないでよ
私もね…いろんな人に言われたの…妹にも「幸せそうな時間より悩んでる時間の方が多い」って言われたしお母さんにも「もう辞めたら?」って言われたし高校の友達にも「別れたら?」って言われてたし…
それでも別れなかった理由わかるよね?

優人

……うん

美月

…好きでいるのもだめ?

優人

だって…幸せにできないから…

美月

そうだね…
あのさ…でも個人的にね優人くんみたいに趣味が合う人を失うのは…惜しいなって思ってて…

優人

うん…

美月

だから…私たち出会った時からもう友達じゃなかったけど…これから友達になれないかな

優人

それなら、はい

美月

…私、男友達ともやりとりするし電話もするしご飯も行くからね

優人

うん…
仕事辞めたらもっと連絡取れると思うしなんかあったら連絡して

美月

それはそっちからしてきてよ
もう待つのはいやだよ…

優人

わかった…

美月

優人くん…

優人

はい

美月

私、優人くんがいたから…転勤先楽しかった。優人くんがいなかったらもっとつまらなかったと思う。

優人

うん

美月

伝わってたかわからないけど…うっ、私っ…優人くんのこと、大好きだったよ…

優人

うん…

美月

ありがとう…。…っ楽しかった…

優人

ありがとう…俺も楽しかった…

美月

…私が優人くんのこと大好きだったこと忘れないでね…

優人

うん…

美月

……

優人

それじゃあ…ばいばい

美月

…ばいばい

優人

……

美月

……

電話が切れた。

優人

通話終了

通話
31:14

終わった。とうとう終わってしまった。

美月

…っ、うぅっ…あぁ…

涙が止まらなかった。電気を消しても布団に入っても涙だけが止まらなかった。

最近は傷ついてばかりだったのに楽しかった思い出ばかり蘇ってくる。二人で行った遊園地が楽しかったなとか、出かけた時すごく優しくしてくれたとかそんなところだけが蘇ってきた。

私は自分を抱きしめた。もう優人くんに抱きしめてもらえることも抱きしめることも唇に触れてもらうことも触れることも一つになることもない。もう触ってもらえないと思うとどうしようもなく悲しかった。

私は優人くんが大好きだった。つらい思いもたくさんしたけれど、優人くんと付き合ってて不幸だと思ったことはなかった。私は隣にいられて幸せだった。

美月

よかった…

だけど、優人くんがちゃんと「別れる」って言葉を使ってくれる人で良かった。ちゃんと電話で話してくれる人で良かった。

私は優人くんを嫌いになりたくなかった。

前の彼氏の時みたいに嫌い合って別れるのだけはどうしても避けたかった。

私が好きになった優人くんのまま、好きなままで別れて欲しかった。好きなまま別れたかった。

優人くんとの思い出は誰にも穢れされたくない。確実に私と優人くんは恋愛をしていた。お互いを思い合って愛し合っていた。

好きなまま別れてくれてよかった。

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