一昨年の7月。私は1つ下の男の子と付き合っていた。私は社会人一年目の転勤族で彼は学生だった。
初めて告白されたのはもっと前で、私が大学3年生の時だった。私はその時別に好きな人がいたし、その後好きな人がいなくても彼と付き合うことはなかった。告白されてから1年半くらい過ぎて、虫が良すぎる気もしたけどとうとう折れて付き合うことになった。
美月
でも私はその選択をすごく後悔した。
デートの当日に彼が風邪をひいて、デートに行けなくなった。付き合ってから初めての出かけるデートだった。風邪に関しては仕方がないけど、そのあとこっちから連絡しても音沙汰なしなのだ。
だから私は意を決して彼氏の家まで来たけれどこれ以上どうするかは思いつかなかった。家に乗り込む気にはなれなかった。というか、折れて付き合ったのに交通費をかけてからの家まで来たのがあほらしくなりほとほと愛想が尽きて、私は彼に電話をかけた。
美月
美月
繋がらないからボイスメッセージ。涙も悲しい感情も何もなくてその時「全然好きになれなかったな」と私は思った。それから彼に申し訳なく感じた。
そして次の日、実家に帰っていた私は衝撃のメッセージを受け取る。
仁
今後一切関わり合いたくない
恨んでくれて構わないよ?
さようなら
美月
意味がわからなくて何回か読み返した。
美月
ひとりごちてしまうほど意味不明だった。
なぜ私が振ったのに私が振られているみたいな文章になっているのか。そしてなんで今更返信したのか。私はむくむくと怒りの感情が湧いてくるのを感じた。
美月
美月
私は即刻彼をブロックして、スマホを投げた。
それでもやっぱり涙は出ないまま、私の初めての彼氏は最悪な印象で終わった。
そして現在、私はこれから遠距離恋愛中の3つ年下の社会人の彼氏と別れ話をするかもしれない。私のスマホに電話がかかってきた。
美月
優人
美月
優人
美月
優人
美月
付き合いたてのテンポの良さが嘘のように歯切れ悪く時折沈黙しながら会話が進む。 それでも電話が来ただけで私は少し安心した。電話来ないかもと思ってた。
優人
10か月そっちから告白して付き合って「やっぱり」とか言わないで欲しい。どんだけ時間かけてんだよ。
美月
こういう時に年上彼女として、余裕がある感じをだしてしまうのも良くないところなんだろうな…。
優人
美月
優人
美月
優人
美月
優人
仕事辞めてもコロナでそっち行くこともできないし…
俺なんかじゃ美月ちゃんを幸せにできないから…最近はもう傷つけてばっかりで
美月
私も全然仕事できなくて今の職場でも怒られてばっかりだよ
優人
美月
優人
美月
優人
俺周りにも言われたんです「お前じゃ幸せにできない」って
美月
どうせ返信来ないからと思ってつらいことあっても連絡しなかったから
優人
美月
私もね…いろんな人に言われたの…妹にも「幸せそうな時間より悩んでる時間の方が多い」って言われたしお母さんにも「もう辞めたら?」って言われたし高校の友達にも「別れたら?」って言われてたし…
それでも別れなかった理由わかるよね?
優人
美月
優人
美月
あのさ…でも個人的にね優人くんみたいに趣味が合う人を失うのは…惜しいなって思ってて…
優人
美月
優人
美月
優人
仕事辞めたらもっと連絡取れると思うしなんかあったら連絡して
美月
もう待つのはいやだよ…
優人
美月
優人
美月
優人
美月
優人
美月
優人
美月
優人
美月
優人
美月
優人
美月
電話が切れた。
優人
通話
31:14
終わった。とうとう終わってしまった。
美月
涙が止まらなかった。電気を消しても布団に入っても涙だけが止まらなかった。
最近は傷ついてばかりだったのに楽しかった思い出ばかり蘇ってくる。二人で行った遊園地が楽しかったなとか、出かけた時すごく優しくしてくれたとかそんなところだけが蘇ってきた。
私は自分を抱きしめた。もう優人くんに抱きしめてもらえることも抱きしめることも唇に触れてもらうことも触れることも一つになることもない。もう触ってもらえないと思うとどうしようもなく悲しかった。
私は優人くんが大好きだった。つらい思いもたくさんしたけれど、優人くんと付き合ってて不幸だと思ったことはなかった。私は隣にいられて幸せだった。
美月
だけど、優人くんがちゃんと「別れる」って言葉を使ってくれる人で良かった。ちゃんと電話で話してくれる人で良かった。
私は優人くんを嫌いになりたくなかった。
前の彼氏の時みたいに嫌い合って別れるのだけはどうしても避けたかった。
私が好きになった優人くんのまま、好きなままで別れて欲しかった。好きなまま別れたかった。
優人くんとの思い出は誰にも穢れされたくない。確実に私と優人くんは恋愛をしていた。お互いを思い合って愛し合っていた。
好きなまま別れてくれてよかった。