この作品はいかがでしたか?
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突然ですが皆さんにとってのヒーローはいたりしますか?
架空のキャラクターが自分にとってのヒーローであったり
憧れであったりするかもしれませんね
実は僕にもヒーローがいるんです
それはもうかなり昔の事なんですが
僕はその出来事を一生忘れません
僕を変えてくれたヒーローですから
そんなわけでその僕がかっこいいと思った
ヒーローについてお話しましょう
時は遡り幼少期の時のこと
当時の僕はとても臆病な性格でした
それ故にあまり人とお話ができず
周りの輪から常に外れた存在でした
それはもう寂しかったです
だって周りはみんな楽しそうにしてるのに
自分はそんな楽しそうな空間の外
中に入れてくれもしなかったんですから
もちろん自分から声をかければ解決したかもしれませんが
そんな勇気を持ち合わせている訳もなく
僕はただただ部屋の隅でぬいぐるみを抱き抱えてその光景を見るだけ
いわゆる傍観者となるだけでした
そんな僕にも唯一友ができたんです
名前は【ユウナ】
僕の唯一の友でした
なぜ友人ではなく友と評すのか
お気づきかもしれませんがユウナは人ではなく両親が貰った犬の名です
お父さんの友人が犬を飼っていてそこで子供が生まれ1匹貰って欲しいと言われて
貰ってきた女の子の犬でした
僕はそのユウナが我が家に来てくれてとても嬉しかったです
それからというもの僕が進んでユウナの周りのことをやり始めました
散歩にご飯に遊んだりだってしました
ユウナが来てから毎日がとても楽しかったです
でもユウナが来ていい事ばかりではありませんでした
ある程度の歳まで行くといわゆる虐めなるものがあります
友人の少なかった僕はその標的になります
学校に行けば小さなイタズラをたくさんされてきました
それでも僕が何とか挫けることなくいられたのはユウナの存在があったからでした
家に帰れば誰よりも先にユウナが来て僕に抱きついてきます
僕の胸元目掛けて飛んできて毎度毎度その勢いに負けて尻もちを着いたものです
彼女がいてくれたから僕は学校のあの嫌な出来事全てが忘れられた
彼女が我が家に来て約2年
それなりにユウナも大きくなった
しかしその性格はいくつになっても変わらないようで
僕が彼女の名前を呼ぶと一目散にやってきてくれる
それも尻尾を横におおきく振りながらこちらを見上げてくる
そんなユウナを見て僕は必ず彼女の顔をわしゃわしゃっとする
それをするとユウナは分かりやすく嬉しがるのだ
それをやったあとはお決まりで散歩に連れていくという流れがある
リードを繋いでいつものルートをユウナと共に歩いていく
夏場の日曜日の昼頃
外はギラギラと照らす太陽に鳴き止むことを知らないセミ達が合唱している
そんな中でも僕とユウナは暑さに負けず楽しく散歩をする
しかし今日この日はそんな楽しい日にはならなかった
いつものルートを歩いている時のこと
そのルートは僕の安全も考慮したルートになっており
近場の公園内を大きく一周するルートとなっている
そう【公園】内を大きく回るルートだ
日曜日のしかも昼頃
同級生が公園内で遊んでいないわけが無い
そんな時間帯と僕の散歩時間が重なってしまったのだ
そして案の定僕は同級生とばったり会う
さらに運の悪いことにその同級生は僕を虐めて遊んでるリーダー達の集団だった
逃げることの出来ない僕はそいつらに絡まれて今まで以上のものを僕は受けた
初めて肉体的暴力をその場で受けたのだ
明らかなイジメの現場であるにもかかわらず第三者視点からは戯れにしか見えない
それ故に僕は助けを求めることが出来なかった
面白さのみで行動するソイツらは次第にエスカレートしていき
殴る威力も上がってきていた
その中には明らかにアザのできる一撃も織り交ぜられていたのだ
殴られ蹴られしても僕は何も出来ずただ丸くなることしか出来ない
今はただこの時間が過ぎればいいとすら願うほどに……
しかしその願いを一瞬にして砕いてくれた救世主が現れたのだ
過ぎ去らぬならその場で断ち切れば良い
そう思い立ち上がった1匹がいた
僕のペットで愛犬で家族でそして…友達の
ユウナだった
彼女はいつも温厚で人懐っこい性格をしていて誰かに吠えたり噛んだりとしたことがなかったのに
ユウナは初めて他者に向けて本気で吠えたのだ
その声にビックリしたのか僕を殴る手が止まる
しかしユウナの威嚇は止まらない
喉から出るグルゥゥゥという唸り声
今まで見たことの無い顔をして僕をいじめてたやつを睨みつけるユウナ
何よりこれらを僕の前に立って行っている
僕をいじめてたヤツらも多少知恵はあったのか石を投げるなどはせず
ただユウナとにらめっこを続ける
数分間その時間がありユウナが痺れを切らして吠えながらみんなの方に走りに行った
するといじめっ子達は情けない声を出しながらその場を離れていく
みんなが離れたのを確認したと思うとユウナはゆっくりと僕の方に戻ってきて
ただ近くに寄り添ってくれた
その瞬間僕はずっと我慢してた涙がまず1滴頬を伝い落ちる
それから2滴3滴とどんどん溢れ出ていきついには声を出して泣いてしまった
ユウナはそれでもただ僕のそばにいてくれた
頬を伝う涙さえも舐めてかき消してくれた
ひとしきり僕が泣き終わりなけなしのお小遣いを使い自動販売機で飲み物を買い
その日は早めに家にと帰宅した
そして自室に戻りただただ僕はベットの上で丸くなり泣いていた
虐められたことよりも僕にも頼れる友達がいたことそれもずっとずっと近くにいた
それに気づけただけでもとても嬉しかった
僕にとってユウナは最高の家族で友達
そしてあの場を救ってくれたヒーローだ
あれからさらに年月は流れ…
今僕は大人にとなっていた
あの後僕は友達の大切さに気づいてたくさんの友人を作っていった
それでもユウナの事は忘れたことは無い
少し言い方が悪いかもしれないが僕にとっての最高の友達はユウナだ
だから優先順位はユウナになってしまうこともあったりした
その最高の友達ユウナはもうこの世にはいない
僕は彼女からたくさんのものを教えてもらった
たかだかペットと飼い主の関係
そうかもしれないが僕にとってはそんな安っぽいものじゃ言い表せない
人間で言うところの大切な人
それと同じ価値がユウナにはある
まだユウナはこの世界をさまよってたりするのかな
僕のことが心配で近くにいたりするのかな
もしいるのならばきっと僕の声は届いてるだろう
実家の外れに建てた小さな墓標
そこには子供の可愛らしい字体で
けれども色んな想いが詰まっている字体
そこに【さいこうのおともだち】と書かれた木の札がある
その木の札も風化して文字もかすれているが想いだけはかすれずにずっと残っていた
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
主人公
その花で冠のような輪を作り木の札にそっと掛ける
手を合わせ”彼女”を弔い実家にと戻る
その時ふと犬の鳴き声が聞こえた気がした
それはユウナの眠るお墓付近で
彼女もまた来年会える日を楽しみにしているのかもしれない
コメント
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ホワイトレースフラワーの花言葉は 【感謝】【可憐な心】【細やかな愛情】です ヒーローは人に限らんのよね