悠斗
ただいま、皐月
皐月
おかえり
皐月
ご飯の準備終わってるから、早く食べましょう
悠斗
ああ
いつもと変わらず、席に着く。
いや、着こうとした。
視界の端に、白色の何かが映ったため、動作が停止してしまった。
悠斗
皐月
皐月
うん?どうしたの?
悠斗
これ、レシートだろ?
悠斗
あんまりおおっぴらに置かない方がいいぞ?来た人が見る可能性だってあるんだし
皐月
あら、ごめんなさい。捨てるのを忘れてたわ。ゆうくん、捨てておいてくれない?
悠斗
わかった
レシートを持ち、ゴミ箱との距離を縮める。
捨てる直前、レシートの内容が何なのか。そう思うことは必然だった。
買った商品は2つ。
半袖のTシャツを一枚と、“異様に安いズボン”を一枚だ。
悠斗は疑問で包まれた。
このズボンは一体何なのか。
なぜ買ったのだろうか。
どんなズボンなのか。
ただし、この疑問は音として存在することは永久になかった。
悠斗
それじゃあ、食べようか
皐月
ええ
再び、いつもが訪れてきた。取り留めもないことを話し、食べる。
しかし、皐月によって微かに崩された。
皐月
ねえ、ゆうくん
悠斗
ん?なに?
皐月
皐月
明日って忙しい?
悠斗
明日?あー……
悠斗
いや、早く帰れるよ
皐月
ほんと?それじゃあ、早く帰ってきてくれないかな?
悠斗
なんで?
皐月
なんでも、ないけど……早く帰ってきてよ
悠斗
なんでもないのに?
悠斗
まあ、いいよ。帰れるし。
皐月
それじゃ、6時には家に着くようにして
悠斗
うん、わかった
その会話を終えると、食器を片付け始める。
微かに口が微笑み、目が細くなった。
いつもの、喜びを隠している表情だ。
そんな皐月の様子を……
透き通った花瓶越しに悠斗は見つめていた。