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高専に転がり込むように着地すると、すぐさま教務室へと足を動かす。 途中ですれ違った2年生たちに不思議そうな顔をされたし声もかけられたが、それどころではないので無視して走った。
説教なら後でいくらでも聞くから!とこんがらがった頭で考える。全部虎杖のせいだ。
ひどく大きな音を立てて教務室の扉を開けると、中にいた補助監督や教師が驚いたように伏黒と釘崎を見る。
肩で息をしながら教務室をぐるりと見渡すと、目的の人物はすぐ近くにいた。
五条悟
五条悟
五条悟
いつものようにのらりくらりとしている五条の腕を、伏黒は訴えるように勢いよく掴んだ。
伏黒恵
五条悟
五条悟
五条が口にした言葉に、伏黒と釘崎は息をのんだ。まだ、高専に戻ってきていない。
釘崎野薔薇
釘崎はふらりと足を絡れさせると、真っ青な顔で呆然と呟いた。
五条悟
五条悟
この場にいない最後の1人を不審に思ったのか、五条は少し眉を寄せた。
伏黒恵
釘崎野薔薇
五条悟
伊地知 潔高
不安そうに瞳が揺れる生徒たちの頭をポンと軽く撫でる。
五条悟
その言葉に2人は顔をくしゃりと歪めると、お願いしますと頭を下げた。
綺咲 絵梨
東雲 澪桜
伏黒恵
釘崎野薔薇
芯の通った声にハッとして教務室の入り口を見ると、2年生達が中の様子を伺っていた。
五条悟
五条悟
僕、最強だから。そう言いながら、五条は窓から飛び出した。
いちいち廊下を走っている暇はない。とにかく今の虎杖の状況を家入に知らせなければならないのだ。 死ぬときは独りだと、確かに言った。 それでもこれは、虎杖の言う"正しい死"ではない。
独りにするとは言ってないよ、 悠仁。
遠くで、聞き覚えのある声が聞こえた。 ちゃらんぽらんで、自分勝手で。でも本当に大切なことはきちんと教えてくれる、頼りになる先生の声。
きしりと鳴る首を動かして、ぽっかりと空いた瓦礫の隙間から空を見上げる。 綺麗な夕焼け空だったのが、気がつけば星がキラキラと瞬いている。
─意外と、夕方って短いんだな。 当たり前のことも、さも今知ったかのように考えた。
五条悟
瞬く星たちに、いつか見た空色の綺麗な双眸が混ざる。 光を反射した髪は、まるで月のようだった。
虎杖悠仁
五条悟
落ちそうな瓦礫をすいすいと避けながら、五条は虎杖のすぐそばまで降りて来る。
虎杖悠仁
五条悟
五条が足を下ろした途端、パシャリと水が跳ねるような音が響いた。 暗くてよく見えていなかった穴の底は、夥しい量の血液で満たされている。
五条悟
虎杖悠仁
虎杖悠仁
虎杖悠仁
五条悟
五条悟
五条悟
そっか、家入先生と蝶野先生まだ帰って なかったんだ。 そう思うと、段々と瞼が下りてくる。 五条が来たという事実が、自分が独りではないという事実だけが、安堵感を与えてきたのかもしれない。
パチパチと頬を軽く叩かれる感覚に、虎杖は閉じかけた目を開けた。
五条悟
伊地知に急いで硝子と結夢を連れてくるよう命じたが、このままでは間に合わないかもしれない。朦朧としている虎杖の意識は、気を抜いて仕舞えばすぐに落ちてしまう。
きっとこのまま眠ってしまったら、もう2度と目を覚ますことはない。 苦しげに吐く息を繋ぎ止めるように、五条は虎杖の手をきつく握りしめた。
五条悟
虎杖の話では全身が痛くて感覚がよくわからないと言うし、下手に何か刺さっていて、それが抜けでもしたら大変なことになる。
神経を傷つけたらそれこそ一大事だし、ただでさえこの出血量……重要な血管を傷つけているとしたら、抜いた瞬間出血多量で死んでしまう可能性だって……
五条悟
虎杖悠仁
血が足りないのはわかっているが、だいぶ呂律が回っていない。 目の前で、大切な生徒の命が失われようとしているのに。僕には、どうすることもできない。
その痛みを取り除いてやることも、まして命の危機から助けてやることも。 最強とは名ばかりで、結局、助けられる準備をしている人間も助けることができないんじゃないか。 そんなことを悶々と考えていると、五条の手を弱々しく虎杖が握りしめた。
虎杖悠仁
青白い頬に色素の薄い唇。 どう見ても大丈夫ではないのに、虚勢を張ろうとする。一番不安なのは、彼なのに。 時間が永遠のように感じられた。
その時、プルルとスマホが鳴った。スマホの表示を見ると『伊地知』と出ていたので、 すぐに電話に出た。
五条悟
伊地知 潔高
伊地知 潔高
五条悟
伊地知 潔高
五条悟
五条悟
伊地知 潔高
伊地知からの電話を切った。その直後だった 微かに瓦礫を踏みしめる音が聞こえた。
五条悟
蝶野 結夢
五条悟
五条悟
ああ、ようやく。ようやく虎杖の命を繋ぎ止める準備ができた。
五条悟
ん、と小さな声で同意した虎杖は、きゅっと目を閉じた。術式を使って少々乱暴に上に乗った瓦礫を退けていった。
それを五条の無限で受け止め、また術式で瓦礫をどかしていく。 瓦礫の下に埋まっていた体は、思っていたよりも悲惨なものだった。
足はおかしな方へ曲がり、赤く熱をもって腫れていた。他にも擦り傷や切り傷、数をあげればキリがないが、それよりも目を引いたのは────
五条悟
左の腹を貫くように刺さった、太く、錆びた鉄のパイプ。 夥しい血の原因はこれであり、今もなおぽたりぽたりと、虎杖の命がこぼれ落ちている。
とりあえず今抜いてしまっては元も子もないので、長すぎる背中側を術式で振動がないようにへし折る。
五条悟
できるだけ傷に触らないように、背中と膝の裏に手を入れる。 そのまま優しく抱き上げると、虎杖は短く息を漏らした。 音もなく、五条は瓦礫の山に飛び上がる。
五条悟
蝶野 結夢
この刺さったものを抜かねば、刺さった物ごと治癒してしまう。体内に取り込めと言っているようなものだ。
五条悟
蝶野 結夢
蝶野 結夢
五条悟
蝶野 結夢
蝶野 結夢
蝶野 結夢
蝶野 結夢
こくりとゆっくり頷いた虎杖は、歯をカチリと鳴らした。 誰だって「今から拷問のようなことをしますが意識は絶対失わないでください」と言われて「はい」と自信満々に言えるわけがない。
わかっていつつも、今はもう虎杖を救う方法がこれしかないのだと、五条は唇を噛んだ。
五条悟
舌を噛んでしまっては大変だと、先程まで使っていた黒い布を虎杖に噛ませる。 そのまま虎杖の肩を抱き寄せると、動かないように固定した。
五条悟
東雲 澪桜
五条悟
東雲 澪桜
五条悟
東雲 澪桜
蝶野は右腕が動かないよう片手で押さえ、もう片方の手は患部の近くに持っていく。 澪桜は、悟と悠二がいる任務地へ瞬間移動をすると、蝶野と悟が、言い合いをしてるところだった。悟から足を押さえるよう言われて押さえるが、変に曲がった足に強烈な痛みが走るのか虎杖は苦しげに呻いて息を吐いた。
五条悟
布で遮られくぐもった同意の声を聞くと、五条はパイプに手をかけた。 ぐちゃりと血が飛び散る音に、布に吸い込まれる悲鳴。
虎杖悠仁
無意識のうちに体が反応してしまうのか、ガクガクと体が揺れ、額にはびっしりと脂汗がこびりついていた。 抜き終わる瞬間、ビクリと反応すると、そのままくたりと体の力が抜けた。
五条悟
東雲 澪桜
蝶野 結夢
反転術式の明るい光を見つめながら、どうか間に合ってくれと五条は、心の中で 叫んだ。
蝶野 結夢
蝶野 結夢
蝶野 結夢
五条悟
うっすらと開いた瞳はあまり反応を示さない。意識はあるようだが、もう瞳を動かすことすら億劫なようだった。
五条悟
五条悟
恵も野薔薇も、2人とも君を待っているよ。