凪
凪
瞬
瞬
とにかく、海が好きな子だった。
春はあさりを取り
夏は海水浴、
秋は浜辺で貝殻を集め、
冬は朝日を見に行く。
デートは殆ど海だった。
凪
瞬
凪
瞬
脚が動かなくなり始めてからは 水族館によく連れていったっけ
キラキラと目を輝かせながら 大きな水槽で泳ぐ魚たちを 眺めている君を見るのが好きだった。
しかし幸せな日常は唐突に崩れる。
倒れたと聞いて駆けつけた 俺が見たのは、 酸素マスクを付けたアイツの姿だった。
凪
瞬
凪
凪
瞬
足元を見て愕然とする。 爪先から膝にかけて 所々肌を鱗が覆っていた。
凪
目を細めるアイツがどんな顔で笑っていたかなんて、もう覚えていない。
俺が触れると肌が焼けてしまって、 触れることも出来ないまま、 その時は訪れた。
凪
凪
瞬
コイツの病名は 人魚病だった。 脚が鱗に包まれていき、やがては 地上での呼吸もままならない。 恋をすると発症する。
瞬
瞬
瞬
凪
潮の風を受けた凪は、いつも以上に綺麗だった。 きっと、これが最期の会話になる。
瞬
凪
凪
凪
言いかけた言葉を俺は知っていた。 俺も、そうだったから。 人魚病は、最後には海に飛び込んで泡となって消えてしまう。
凪
最後に一つ口付けて、アイツは海に消えてしまった。
あいつのことが好きだ。
好きだった。
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