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今日も海がいいな〜

…だめ?

いいよ

連れてってやる

とにかく、海が好きな子だった。

春はあさりを取り

夏は海水浴、

秋は浜辺で貝殻を集め、

冬は朝日を見に行く。

デートは殆ど海だった。

最近脚動かないんだよねぇ…動かすと痛いっていうか……

じゃあ今日は水族館とか?車椅子押してやるから

いいね!水族館も好き〜

…はいはい

脚が動かなくなり始めてからは 水族館によく連れていったっけ

キラキラと目を輝かせながら 大きな水槽で泳ぐ魚たちを 眺めている君を見るのが好きだった。

しかし幸せな日常は唐突に崩れる。

倒れたと聞いて駆けつけた 俺が見たのは、 酸素マスクを付けたアイツの姿だった。

お、来た

どうして…

軽い酸欠だよ

最近息しづらくてさ〜

お前、それ…

足元を見て愕然とする。 爪先から膝にかけて 所々肌を鱗が覆っていた。

……もう俺、歩けないんだって

目を細めるアイツがどんな顔で笑っていたかなんて、もう覚えていない。

俺が触れると肌が焼けてしまって、 触れることも出来ないまま、 その時は訪れた。

…海が、見たいなぁ

今、凄く水に触れたい

……

コイツの病名は 人魚病だった。 脚が鱗に包まれていき、やがては 地上での呼吸もままならない。 恋をすると発症する。

いいよ。手続きは済ませてあるから

今から行こう

ほら

ありがとう

潮の風を受けた凪は、いつも以上に綺麗だった。 きっと、これが最期の会話になる。

……行ってこい

うん。…本当に、ありがとう

俺、お前のこと……

……なんでもない

言いかけた言葉を俺は知っていた。 俺も、そうだったから。 人魚病は、最後には海に飛び込んで泡となって消えてしまう。

じゃあな!

最後に一つ口付けて、アイツは海に消えてしまった。

あいつのことが好きだ。

好きだった。

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