七星
……負けた人間がおめおめ戻ってきたから何事かと思ったら、随分と大人数できたな。
十一月二十九日
まぁ、色々と事情があってな。
七星
何がどうなってる?
七星
説明してもらおうか――特に四ツ谷からは。
四ツ谷
あ、姐さん。もしかしてちょっと怒ってたりする?
七星
当たり前だ。
七星
私の預かり知らぬところで【ストーリーテラー】などをやって。
七星
一言、相談してくれれば、その時点でなにか力になれたかもしれないのに。
一宮
七星、俺も正直なところ混乱してるけど、今の時点で明らかになっていることがある。
一宮
少なくとも、この人達は俺達の敵ではなかったってことだ。
七星
誰でもいい。
七星
詳細を話してくれ。
十二単
それについては俺が話したほうがいいだろう。
七星は全てを聞いた後、小さく頷くと吐息を漏らした。
七星
つまり、私達がやり合っていたのは、十三形を誘い出すためだったということか。
四ツ谷
まぁ、簡単に言えばそうなる。
四ツ谷
本当はもう少し事情が異なるけどね。
二ツ木
十三形は所有者が醜く争い合う姿を、絵本を通して見たかった。
二ツ木
そして、様々な怨念が染み付いた絵本が欲しかったみたい。
二ツ木
なんでそんなものを欲しがるのかは分からないけど。
九条
単純に箔がつくからじゃないです?
九条
呪いの絵本としての価値が上がると言うか。
七星
なるほど、要するに十三形こそが全ての元凶であって、十三形を止めない以上、私達の戦いは終わらない――というわけか。
十日市
うん。とうとう十三形はしびれを切らして、所有者を殺害して回るという行動に出てる。
伍代
特に大量の絵本を持っている人間は――気をつけた方がいいぜ。
伍代が七星に向かってステップのようなものを踏み、七星のほうにもたれかかるかのように跳んだ。
四ツ谷
姐さん、危ない!
とっさに四ツ谷が声を上げたが、しかし伍代はすでに七星の懐に飛び込んでいた。
七星
ぐっ……き、貴様。
七星の腹部にはナイフが突き立てられており、それを握った伍代は声を荒げる。
伍代
どいつもこいつも馬鹿ばっかりだねぇ!
伍代
ちょっと頭の中、お花畑すぎやしないか?
九条
きゅ、救急車を!
十日市
もう呼んでるって!
一宮は慌てて七星の元に駆け寄ると、七星を抱きかかえて半身を起こしてやる。
十一月二十九日
てめぇ!
伍代には十一月二十九日が殴りかかり、伍代は見事なまでに殴り倒された。
そこに十二単も加わって、とりあえず伍代は取り押さえられたようだ。
伍代
はははははっ!
伍代
どうして十三形側の人間がいないと思えるんだろうなぁ?
伍代
これで大量の絵本が十三形の本屋に戻る!
伍代
またやり直せるんだよ!
取り押さえられたまま、しかし勝ち誇ったかのように笑い出す伍代。
四ツ谷
こいつ、まさか最初から十三形側の人間だったのか?
伍代
今さら気づいても遅ぇよ!
伍代
もちろん、あんたが【ストーリーテラー】で、十三形を止めようと動いていたことも、全部報告済みだぜぇ。
伍代
さてさて、絵本を大量に失ったお前達に、なにができるんだろうなぁ?
十一月二十九日
うるせぇ、黙れ!
十二単
なにか縛り上げるものはないか?
十二単達が大捕物をしている最中、七星が小さく呟く。
七星
……愚かだな。まさか私がこんな目に遭うとは。
七星
確かに、これだけの人数が集まったんだ。
七星
裏切り者が1人くらい混じっていても不思議じゃない。
七星
特に伍代は――六冥を殺した相手じゃないか。
七星
なぜ、警戒しなかったのか――狙われるべきは、絵本を多く持っている私なのは分かっていたというのに。
一宮
七星、無理に喋らなくていい。
一宮
じきに救急車も来る。
七星
あぁ、すまないな。
七星
一宮、どういうわけなのか、ものすごく眠たいんだ。
七星
少し休むぞ……。
一宮
あ、あぁ。
脳裏に嫌な予感がよぎったが、一宮は小さく首を横に振ると、七星をその場にそっと寝かせてやるのであった。