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思い出の本

1 - 思い出の本

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77

2019年11月02日

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姫野李夢

あっ、真香!図書館の帰り?

中野真香

そう、本借り換えしてきたんだー

姫野李夢

何借りてきた?

中野真香

これ!

姫野李夢

「魔法使いの少女」?

中野真香

そう、最近魔法使いが流行ってるんだって

姫野李夢

へえ〜

村田愛菜

その本、借りたんだ

中野真香

うん、愛菜も知ってる?

村田愛菜

うん、知ってる。前図書館で借りたことがあるから。

中野真香

そっか、面白かった?

村田愛菜

うん!すごく面白かったよ。

姫野李夢

(何がいいのか、さっぱりわかんない)

中野真香

ねえ、李夢も読んでみない?

姫野李夢

「魔法使いの少女」を?

中野真香

そう、興味ない?

姫野李夢

うん、じゃあ今度まどかが返したと同時に借りるね

中野真香

うん、じゃあ一緒に図書館行こう、行く時そっちの教室行くから

姫野李夢

わかった

中野真香

じゃあね〜

村田愛菜

またね〜

姫野李夢

うん、またね〜

数日後

中野真香

李夢、図書館行ける?

姫野李夢

うん!

中野真香

じゃ、行こ!

姫野李夢

おけ!

中野真香

ねえ、後でトイレ行かない?

姫野李夢

図書館のあとで?

中野真香

うん

姫野李夢

いいよ!

中野真香

おけ!

中野真香

…よし、返した!はい、どうぞ、李夢。借りていいよ

姫野李夢

ありがとう!

ということで、私はその本を 読んでみることにした。

私は川村美穂

わたしの街では最近、 “魔女”が話題になっている。

私は魔女のどこがいいのか さっぱりわからない。

友達の花音や莉子だって ずっと魔女に夢中だし ハロウィンだって必ず 魔女の仮装だ。

街には魔女の仮装をした人が 溢れている。

男女関係なく、魔女の仮装をして みんなとワイワイやっている。

そんな中、KYと 言われるかもしれないが 私は仮装はせずに ハロウィンの街を ふらふらと歩いていた。

そして私の前に現れたのは、 1匹のくろねこだった。

くろねこは、私にまねきねこの 仕草をして見せた。

その瞬間、私は魔法 がかかったかのように くろねこのほうへ引き寄せられ、 そのまま黒猫が歩く方向に 並んで歩いていった。

そして次に私の前に現れたのは、 ボブカットでつり目の 強そうな女の子だった。

パタン。と静かな音が 誰もいない教室に 響きわたる。

私はぐーーっと伸びをして、 はぁっとため息をついた。

1ページ読むだけでも こんなに疲れるのに、 みんなよくあんなに何ページも 読めるなぁと感心した。

中野真香

李夢、それ、どう?

姫野李夢

真香ったら、よくこんなに疲れる本を3日で読み切ったよね。

中野真香

だって家でもずっと読書だよ、この本人気だからすぐ夢中になっちゃう。

中野真香

ねえ、シリーズ本もあるんだよ。2巻は「魔女のお姉さん」っていうのと、3巻は「くろねこの尻尾」!

姫野李夢

ネーミングセンスないね

中野真香

そこがいいんじゃん!ゆるい感じが甘酸っぱいイメージを膨らませる!

姫野李夢

へえ、なんか真香はすごいね…。

中野真香

そうかな?

中野真香

とりあえず、それを読み切ったらまた紹介するから!ね!

姫野李夢

う、うん…。

中野真香

それじゃ!

姫野李夢

うん、わかった…。

真香が教室を出ると 私は1人で図書館へ向かった

金森優子(司書の先生)

あら、今日また来てくれたのね

金森優子(司書の先生)

あなたはあまり見ない子ね

姫野李夢

はい。図書館、全然来ないですから。

金森優子(司書の先生)

それ、3日までね

姫野李夢

…それって、「魔法使いの少女」のことですか?

金森優子(司書の先生)

ええ、そうよ

姫野李夢

これってなんだか読むとつかれます

金森優子(司書の先生)

字が多いからよね。それに比べて授業の合間に少しずつ読めるものは読みやすいわよね

姫野李夢

はぁ…。

私には、この人が 何を言っているのか 全く理解できなかった。

姫野李夢

先生、どうやったら疲れないですか。

金森優子(司書の先生)

そうねぇ、私も昔は本を読むのが好きじゃなかったわ

金森優子(司書の先生)

でもある日図書館であった男の子に本を渡されたの

金森優子(司書の先生)

『僕の代わりに読んでくれないか』って言われたわ

金森優子(司書の先生)

それでその本を読んだのよ

姫野李夢

それが、どうやって繋がったのですか?

金森優子(司書の先生)

まあ、話を聞いていて

姫野李夢

はあ…。

金森優子(司書の先生)

まず1ページ目。開くと字がびっしりで、疲れそうだなぁと思った

金森優子(司書の先生)

でも、その男の子と約束したことだから、仕方なく読んだ。

金森優子(司書の先生)

1ページ読み終わると、図書館から男の子はいなくなっていた。

金森優子(司書の先生)

5ページ目にはいると、男の子の具合が悪いという情報が耳に入った。

金森優子(司書の先生)

10ページ目にはいると、男の子が倒れたと噂になった。

金森優子(司書の先生)

15ページ目にもなると、男の子が救急車で運ばれたって騒ぎになってた。

金森優子(司書の先生)

20ページ目にはいると、男の子が入院したってざわざわ噂されてたわ。

金森優子(司書の先生)

それで私、25ページ目で、男の子のお母さんから病院にお見舞いに行こうと誘われた。

金森優子(司書の先生)

初対面でね、まともに話したこと無かったけど…。なんとなく行った方がいい気がして…。

金森優子(司書の先生)

それで私、30ページ読んでからお見舞いに行ったの

金森優子(司書の先生)

すると男の子がね、何ページ読んだ?って聞いたから

金森優子(司書の先生)

30ページ読んだよって教えたの

金森優子(司書の先生)

するとね、その子が

金森優子(司書の先生)

どんなお話だった?って聞くのよ

金森優子(司書の先生)

私はその本の内容を男の子に軽く教えた。

金森優子(司書の先生)

その時私、小学生だったから。説明、すごく下手だったんだけどね。その男の子、ニコニコしながら聞いてくれて。

金森優子(司書の先生)

ありがとねって笑って、すぐ寝ちゃったの。

金森優子(司書の先生)

それから家へ帰って、35ページ目まで読んでから寝て…。

金森優子(司書の先生)

次の日はいつもより急いで、60ページまで読んでからお見舞いに行って、また話を聞かせてあげた。

金森優子(司書の先生)

それを毎日繰り返して、150ページまで行ったところで、男の子のお母さんから電話があった。

金森優子(司書の先生)

男の子は、亡くなったそうで。私、のこりの10ページを読むことが出来なかった。

金森優子(司書の先生)

小学四年生。たった1年、少しずつお話を聞かせただけで。

金森優子(司書の先生)

あと10ページ、男の子に聞かせてあげられなかった。

金森優子(司書の先生)

私が読めなかった10ページをね、みんなに読んでもらいたいの。

金森優子(司書の先生)

人の大切さを知ってもらいたかった。

金森優子(司書の先生)

だから最近ではその本をみんなにおすすめしてるの。

姫野李夢

それって、「魔法使いの少女」のことですか。

金森優子(司書の先生)

…ええ、そうよ

金森優子(司書の先生)

あとの10ページ、聞かせてあげたかったなぁ。

そういって先生は、 カウンターへ戻って行った。

教室に戻り、先生の話を思い返す。

きっとその少年は、 自分に本を読んでいる時間が 無いことを、自覚していたのだ。

それで先生に、 短くまとめて話して欲しかった。 自分で読むのが、辛かったんだ。

先生が話してるのを 聞いてわかった。 先生が本を読んでいる間に 男の子の時間はとてつもなく 早く過ぎていた。

自分で読むのが怖かったんだ。 自分の“時間”が1ページ1ページ 過ぎてゆくのが、 酷く恐ろしかったのだろう。

家に帰って、 私は「魔法使いの少女」を 手に取った。

先生の話を聞いてから この本をたまらなく 読みたくて仕方なかった。

やはり本が古いせいか ホコリを被ったところや 破れたページもあるが 先生の思い出が詰まった いい本だなと思った

そして机に向かい、 本をゆっくりと読んだ。

次の日学校へいくと、 男の子から話しかけられた。

︎︎

あ、あの…さ

姫野李夢

…?

︎︎

姫野さんって、なんだか…その

︎︎

印象が変わったよね…。

姫野李夢

…そうかな?

︎︎

前はその、言い難いけど…えっと

︎︎

明るい感じ…で、けっこう…うるさい感じかなって思ったんだけど

︎︎

なんかその、清楚に…なったかなって

姫野李夢

…ありがとう!

自分が変わったということ 全然気づいていなかった

この人は私の変化に 気づいてくれた それがとても嬉しかった

近くの公園で、 「魔法使いの少女」を、もう 150ページまで読んだことに気づいた

姫野李夢

(ついに、あと10ページ…!)

姫野李夢

(先生が、読めなかった10ページを…私がかわりに読むんだ…。)

──その時から莉子の様子が 明らかにおかしいのはわかっていた

でも私は、莉子に離れられるのが 怖くて、何も出来なかった

莉子は毎日苦しそうなのに 魔法を使うことも出来ない

こんなの、私が苦しいよ…。

姫野李夢

…あれ?

そのページは、そこで 文字が終わっていた。

そしてページをめくると、 見開きいっぱいに 描かれた絵だった。

病院のベッドに寝ている少女と、 その少女の手を握る、 もう1人の少女の絵だった。

さらに1ページめくると、 また文字がびっしり。 今度は途切れていなかったので、 顔を近づけて文字を読んだ。

莉子は入院をした。 私の力で治すことが出来ればな… そう思って莉子に近づき 手を握った。

川村美穂

莉子、助けてあげられなくてごめんね。

莉子が弱々しい力で 手を握り返してきた。

その瞬間、涙腺を 絞られたかのように 私の目から涙が溢れた。

川村美穂

…ぁ…ぅぅぁ…ぅ…うわあああん!!!

私の涙は、 莉子の手にポトポトと落ちた。

川村美穂

莉子…ごめん…ごめんねぇぇ!!

川村美穂

莉子…うわあああああん!!

私は決意した。 もう魔法は使わない。

私は普通の人間だ。 普通の人間になって、 みんなと過ごしていく。

莉子、ごめんね。さようなら。

それから私は社会人になり 今でも莉子のことを思い出す。

あの時私が知らないふりを していなければ、 莉子は助かったのかなぁなんて。

莉子のためなら、 魔法がバレてもいい。 そう思えたのに。

莉子を助けることが、怖かった。

私はいつからか、 魔法の使い方を忘れた。

きっとこれは莉子が 教えてくれたこと。

「魔法に頼ってばかりじゃダメだよ」

「私は魔法なんて嫌いだ」

「そんなの、人生のハンデじゃん」

莉子の何気ない3つの言葉で、 私は救われた。

莉子は魔法が嫌いだから。 そういう理由で莉子を 助けなかったわけじゃない。

全ては自分のためなんだ。

パタッと本を閉じて 学校の図書館へ向かった。

姫野李夢

先生。本、面白かったです

金森優子(司書の先生)

…そう、よかったわ

金森優子(司書の先生)

ねえ、李夢さん

姫野李夢

…?

金森優子(司書の先生)

ごめんなさい

姫野李夢

…どういうこと?

金森優子(司書の先生)

私が話した男の子ってね

金森優子(司書の先生)

あなたのお兄さんなの

姫野李夢

お兄ちゃん…?

金森優子(司書の先生)

そう

金森優子(司書の先生)

私は今19歳…。

金森優子(司書の先生)

ふふ、思ったより若いでしょ。

金森優子(司書の先生)

あなたは今14歳だよね

金森優子(司書の先生)

10年前…。私はあなたのお兄さんを亡くしてしまったのよ

金森優子(司書の先生)

知らなかったかな?そうね、あなた当時4歳だものね。

姫野李夢

…あ、それってもしかして…!!

金森優子(司書の先生)

…ん?

姫野李夢

姫野康二のことですか…?

金森優子(司書の先生)

…あの人

金森優子(司書の先生)

康二さんっていうのね…。

姫野李夢

…先生

姫野李夢

私、かすかに覚えています

姫野李夢

あの時兄は、『図書館で女の子に会ったんだ』と話していました───

姫野李夢

お兄ちゃん、ぐあい、どーお??

姫野康二

うん、いいよ。いーちゃん、ありがとう。

姫野李夢

うん、お兄ちゃん

姫野康二

あのねいーちゃん。聞いて欲しい話があるんだよ

姫野李夢

聞いて欲しい、はなし…?

姫野康二

そうだよー

姫野康二

話してもいいかな?

姫野李夢

いいよ、お兄ちゃん

姫野康二

あのね、図書館で女の子に会ったんだ

姫野康二

僕はね、読みたい本があるんだ

姫野康二

それでほら、僕は病気だろ?

姫野康二

だから本を読んでいる時間が無いんだ

姫野康二

だから代わりにね、その子に読んで欲しかった

姫野康二

だから僕の読みたい本を渡した

姫野康二

しかもそれは借りた本じゃないよ、貰った本なんだ

姫野康二

その本はね、「魔法使いの少女」っていう本なんだよ

姫野康二

その本、その子は気に入ってくれてね

姫野康二

10ページ、15ページと読む事に、僕に話を聞かせてくれたんだ

姫野康二

短くまとめる力がすごくて、僕はその子を好きになった

姫野康二

これからも話を聞かせて欲しい。けどね、僕にはもう時間が無いんだよ

姫野李夢

そう言って兄は、ゆっくり眠りにつきました

姫野李夢

そしてもう、兄が目を覚ますことはありませんでした

金森優子(司書の先生)

ふふ…なんだか本のお話みたい

姫野李夢

ですよね…。

金森優子(司書の先生)

ねえ、あなたのお母さんに会いたい

姫野李夢

お母さんに?

金森優子(司書の先生)

うん、会えるかな?

姫野李夢

はい、話を聞いてみます

お母さん

ああ、あなたがあの時の…!

金森優子(司書の先生)

はい、そうです…!お母様…!

お母さん

あぁあ…お久しぶりね

お母さん

うぅ…会いたかった…ずっと…!

お母さん

あああああ…優子ちゃん…うう…

金森優子(司書の先生)

お母様…ありがとうございます

金森優子(司書の先生)

お母様、康二さんに…お線香、いいですか?

お母さん

もちろん…!お願いいたします

金森優子(司書の先生)

…はあ

金森優子(司書の先生)

ありがとうございます、お母様

お母さん

ええ…どうぞ、康二と話してやってください

金森優子(司書の先生)

…はい

金森優子(司書の先生)

康二さん、お久しぶりです

金森優子(司書の先生)

優子です

金森優子(司書の先生)

あなたの本、今でも持っています

金森優子(司書の先生)

今は私の担当する図書館で、その本を貸出しています

金森優子(司書の先生)

その本を返す時、生徒たちはみんな同じ言葉を言ってくれます

金森優子(司書の先生)

「先生、ありがとうございました。すごく面白かったです。」と、言ってくださいます。

金森優子(司書の先生)

その本を別の図書館でみても面白くないのに、これを読むととても夢中になる。と言ってくださった生徒もいます。

金森優子(司書の先生)

きっとそれはあなたと私との思い出が詰まっているんだと思います。

金森優子(司書の先生)

康二さん…。

︎︎

ただいまー

金森優子(司書の先生)

あ、お邪魔していま………す??

︎︎

あ、どうも…。

金森優子(司書の先生)

…こっ

金森優子(司書の先生)

康二さん!?

つづく

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