テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
【小林博之の視点】
小林博之
そう自分に言い聞かせながら運転していた
だが心臓のバクバクは止まりそうにない
それはそうだ
バレるはずがないとはいえ、人を殺そうとしているのだ
それに週の半ばでこれだけ朝早ければ、道が混むことはないと分かってはいるが
やはり予定通り着けなかったら、という一抹の不安があるのもバクバクの一因だろう
そんなことを考えていると目的の湖畔に着いた
所要時間は大体30分
小林博之
ホッと胸をなで下ろす
ここで釣りをするのが好きだが
今日の目的は釣りをすることそのものではない
釣り仲間と会い
時間が潰せれば何でも良いのだ
釣り糸を垂らしながらも何度も腕時計を確認する
1分経つのがこんなに長く感じるのは初めてだ
それでもその釣り仲間と会話を交わしたり
近くの団子屋さんで団子を食べたり
何とか1時間半ほどをそこで過ごし
帰路についた
家についても平静を装い、いつも通り過ごそうと心がける
料理を作り、テレビをつける
それでもやはりあの部屋に目を向けてしまう
アイツが7時に起きてすぐにラジオ体操をしたのなら
7時半には確実に死んでいるはず
自分は6時に家を出ているのだから
そこから帰ってきた8時半まではアリバイがある
そう、誰も私を疑わない
大事なのはこの後だ
アイツが舞台に来ないと関係者が慌てるのは恐らく13時半頃だろう
演者が30分前になっても姿を見せなければ誰だってそうなる
その時にどう動くかだ
ここを間違えれば全てが水の泡だ
"これ"も『ソラリス』も主演は私なのだ
誰にも渡すものか
【原卓也の視点】
水面に体を叩きつけられながらも、何とか意識を保っていた
こんな危機的状況にも関わらず
飲み込んでしまった水が"しょっぱかった"ことにまず驚いてしまった
原卓也
そんな疑問と同時にあの人の何かしらの罠に引っかかってしまったことにも気づいた
だがそれらの感情はほんの一瞬のものだった
思い切り海水を飲み込んだことで、完全にパニックに陥った
もがけばもがくほど自分の体は沈んでいく
原卓也
そんな声は届かない
遂に底まで沈んだ
何で…何でこんなことに…!!
原卓也
私はその気持ちだけで、残っているはずのない最後の力を振り絞った
原卓也
原卓也
ブクブクブクブク
自分の口から空気が漏れていく音
それを聞きながら徐々に意識が遠のいていく
視界がぼやけていき
そして消えた
コメント
1件
続編です!ぜひ読んでみてください!