テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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きみの笑顔が見たいだけ

第73話 - お別れ

600

2022年12月10日

#ファンタジー

#青春恋愛

#ゲーム

#笑顔

#死神

#一次創作

しふぉん

桜笑

（…あの車、どこに、突っ込んだの？）

桜笑

（建物？それは人がいる？それなら死者は───？）

心配すんな、誰も死んでねえよ

いつ戻って来たのか、死神くんはニカッと笑う

運転手がちょーっと怪我したけど…自業自得だし、周りも救急車とか呼んでたから

桜笑

よかっ…た

少しだけほっとして顔を上げる

桜笑

（もう、事故は防げたし───）

…

桜笑

見習いくん？

すれ違う人々を見つめた見習いくんはハッと顔を弾かれたようにこちらを見る

桜笑

え？

その瞬間見習いくんはあたしに全力で体当たりするとあたしと一緒に転げ込む

…？

死神くんはあたしの方を向いてて気がつかなかったと思う

だけどあたしは気づいた

だから、見習いくんがどうしてあたしを突き飛ばしてまでそこを退かせたのかもすぐに分かった

ギラリと光る刃物を見た瞬間咄嗟にあたしは動けなかった

だけど────

…っぶねぇ

…チッ

微かに聞こえたその舌打ちにゾクリと寒気がする

桜笑

（あたし、今、殺されかけた…？）

っ！お前ら、大丈夫か！

気付いた死神くんが声をあげたとき

見習いくんが通り過ぎたその人の鋭利な刃物を持った手を、掴む

…殺人未遂？

うるせえ！落としただけだ！

ウソつけよ、つーかどっちみち銃刀法違反だから

とりあえずそういうワケで、警察行こっか

はな、せっ…！

…っるせぇな、黙れよ

見習いくんの手首を握る力が更に増したのが分かる

いっ痛え…！！！

分かったから…分かったから、離せ！

いや離したら逃げんじゃん

スッと手袋を噛み、片手にはめた見習いくんは刃物を奪い投げるとその人を拘束する

とりあえずこのまま待ってよっか

周囲の人が遠巻きに、警察に連絡するのを見て見習いくんは言う

桜笑

（…助けて、くれた…？）

桜笑

（あたし、またなんにもできなかった…）

桜笑

（それにさっきだって考えもしなかった）

桜笑

（あたしが死なないことで他に被害が及ぶかもなんて…）

…悪い

桜笑

っえ？

事故のことに目を向けすぎて…そんなにすぐ次の死因が襲うと思わなかった

咄嗟にあいつが気づかなかったら…

桜笑

死んでた、よね

声が震える

桜笑

謝らないで、あたしは見えたのに動けなかった

…っ俺───

チラリと後ろを振り返ると死神くんは何かを考え込む様子だった

後に来た警察に事情を聞かれて署に同行する

後にあたしたちは労わられ、保護され…家に帰された

桜笑

心配かけてごめんね、菜乃

菜乃

ううん、私は全然

菜乃

桜笑はもう怖くないの？

桜笑

うん、大丈夫だよ

桜笑

センパイもいるしね

菜乃

う、うん…私としてはなんで一緒にいたのかって方が気になるけど

菜乃

とりあえず夜も遅いし、また明日話聞くよ

桜笑

うん、じゃあ────

桜笑

また明日、ね

近くの人に聞いたらしい菜乃の心配のLIMEに返事をする。

…絶対に守りたい

また明日って、この言葉を。

通り魔の件は、名前は出されずともきっと明日の学園でも話される

それくらい桜笑は大変な目にあったんだ

桜笑

うん…

時刻は10時半

日が変わるまで、1時間半

桜笑

…ねえ、死神くんはどこに行ったの？

警察署から姿を見せない死神くんのことを尋ねる

…え？

…ああ、そうか

ちょっとごめんね

そう言って見習いくんは部屋を出た

…どういうこと？桜笑はもう、死なないってことでいい？

"一緒に"桜笑の家から出てきた彼に尋ねる

まあ、そうだな…あいつにはもう俺が見えてない

つまり世界は…あいつの未来は、"変わった"ってことだ

実感湧かないな…そんないきなり

…そういうもんだ

俺が見える条件を知ってるだろ

…そして、お前が俺を見えたのもまたしかり

"何かを変える"ため

…っ、つまり…

変わったならそれはもうおしまいだ

お前の見習いの権利は無くす

お別れだな、お前も

…ほんとは記憶を消さなきゃいけない

俺と関わったことも、お前ら2人のこれまでも───。

…だからこれが俺からの贈り物だ

記憶───。忘れるな、死に携わったこと、俺らのこと

そんで2人で…幸せになれ

デスくんはそれだけ言うと俺の元を去った

────いや

俺の目の前から、消えたんだ

すうっと浮遊すると、ついにコイツとも焦点が合わなくなる

（…ああ、ほんとに、見えてねえんだ、もう）

…っデスくん！！

っ？

もう、俺にはきみの声も顔も何も感じられないけれど…

きみには、分かるんだよね…！？

…っ俺らが、警察署から桜笑の家に来るまで、その時間きみは本当にいなかったよね…？

デスくんが…何か、権限を使ってくれたんだよね？

でないとそんなにいきなり、死なないなんて言わない！

なんで気づくんだよ…俺かっこわりーじゃんか

…だから、だから！ありがとう、デスくん…っ！本当に！たくさん！

…っ！

（…聞こえない、から、だから言わせて）

…俺からのもう1つのプレゼント

死神の特権　『免除』

当人の人生史から死者となるのに時期尚早だと判断する場合

延命を、行うことができる。

…ただし、使用する場合は申請する事。

ああ、きっと他のやつらに怒られるだろうな

でもいいや、もう、それでも…

又、使用した場合は、死神の特権を全て一定期間失う為、十分に注意すること。

…見習いにも、しばらく迷惑かけるなぁ

（…こいつらが本当に死ぬときには、俺が世話してやろう）

（…じゃあな、2人とも）

きみの笑顔が見たいだけ

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よ、良かった……。もしかして見習いくんの身に何かあったんかと思ったけど皆無事で良かった……と思ったら今度はやばい奴来るし……💦とにかく桜笑さんも見習いくんも無事で良かった……！！デスさんが見えない、ってことは桜笑さんは長生き出来るってことだよね……！！良かった、ほんとに良かった……！！桜笑さん、見習いくんもこれから幸せになって欲しいな🥰🥰