一覧ページ

3分間サバイバル[つかみとれ！最高の結末]編

第2話 - イケメンになった泥棒

2023年08月05日

#小説

#ミステリー

amane🥀📖⌨️

俺(ナレーター)

男も美容整形をすることが、珍しくない時代でよかった。

俺(ナレーター)

貴金属店に強盗に入ったとき─俺は防犯カメラを意識して、ニットの目出し帽をかぶっていた。

俺(ナレーター)

目と口のところだけ穴があいていて、顎まですっぽりかれるやつ。

俺(ナレーター)

さらに、マスクの上からサングラスをかけていた。

俺(ナレーター)

ところが、
獲物を手に入れて逃げようとしたとき、
さっきまでびびり上がってた店員に後ろからニット帽をつかまれ、
サングラスもろともぬげてしまったんだ。

俺(ナレーター)

そのまま逃げ切ることはには成功した。

俺(ナレーター)

でも、俺の顔は防犯カメラにバッチリ映ってしまったはずだ。

俺(ナレーター)

咄嗟に、防犯カメラの位置から顔をそむけたけど……
最近の防犯カメラは高性能だからなぁ。

俺(ナレーター)

そこで、俺は指名手配書が出回る前に、
さっさと整形手術を受けることにしたんだ。

俺(ナレーター)

タレ気味で一重の細い目はらパッチリした二重まぶたににしてもらった。

俺(ナレーター)

どうせなら

俺

理想のイケメンになりたくて来ました！

俺(ナレーター)

っていう男を演じきろうと、フランスの俳優の写真を見せて

俺

こんなふうに鼻すじが通った形にしてください

俺(ナレーター)

とお願いした。

俺(ナレーター)

担当の整形外科医は腕がよくて、なかなかのイケメンにしあがった。

俺

(子供のころからほぼ坊主だったが、これからはのばしてみようかな。)

俺

(あの俳優みたいに、ゆるいパーマなんかかけたりして。)

俺(ナレーター)

そんなことを考えたら楽しくなって、
今まで入ったことのないファッションビルに足が向き、
店員にすすめられるまま、いまどきの若者っぽい服を買っていった。

俺(ナレーター)

店員に

店員

ミュージシャンっぽいですね

俺

(なんて言われて、まんざらでもない気分だ。)

俺

(金はあるし、顔はいいし……これからはモテてしょうがないかも?！)

俺(ナレーター)

顔に加えて、
ファッションのせいで雰囲気も別人のように変わったので、
俺は、すっかり安心して過ごしていた。

俺(ナレーター)

まさか、逮捕されるとは思わなかった。

俺(ナレーター)

しかも、刑事に声をかけられたとき……そいつが手にしていたのは、
あの日、
防犯カメラに映っただろう─今の俺とは似ても似つかない男が
印刷された、

俺

(指名手配書だったのに！)

警察官が持っていた指名手配書に印刷されていたのは、主人公とは全く別人のような顔。警察官は何を手がかりに、同一人物だとにらんだのだろうか。

解説指名手配書には、主人公の正面からの顔と横顔が印刷されていた。警察官には、主人公の耳の形に注目し、指名手配の男と同じ人物だと確信したのである。じつは、防犯カメラの映像をもとに人物を特定するとき、「耳」はかなり重要な手がかりとされている。普段、私たちは正面向きの顔ばかり見ているので気づきにくいが、耳は人によってかなり形がちがうのだ。家族や友人など、まわりの人の耳の形を見くらべてみよう。