テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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LINE473

第1話 - あ

2023年03月24日

#恋愛

田中俊樹

メイ

あなた！いったいどこにいるのよ！

メイ

何で電話も出てくれないのよ！？

ワク

なんだよ、うっせえなあー

ワク

気が狂ったように、何度も何度も電話してくんなよ

メイ

気づいているなら電話に出てよ！

ワク

わりぃな、今は電話に出られねえわ

ワク

話があるなら手短にしてくれよ

メイ

手短に済む話じゃないでしょ！

メイ

家にあるはずの、あなたの荷物が丸々無くなっているのよ

メイ

おまけに家に帰ってこないものだから、気になってしまって

ワク

そんなことまでいちいち言わなきゃなんねえのか！？

メイ

いちいちって…大事なことでしょ！？

メイ

私たち家族に何も告げずに居なくなるなんて

メイ

心配になるのが当たり前でしょ！？

ワク

お前らに言ったところで、どうにもなんねえことだわ

メイ

どういうことなの？

ワク

俺はこの度、会社を転勤にになったんだ

メイ

え？

ワク

だから俺は住処を転勤先に移して、今日から単身赴任ってことだ

ワク

ま、お前らには関係ないことだが

メイ

いや、関係大アリでしょ！？

メイ

なんで私たちに一言も言わないのよ！

ワク

そりゃあ、言う必要がないことだからな

ワク

俺が転勤になったんだから、お前らにはこの家に残ってもらう他ないんだ

メイ

いや、言ってくれれば私もついて行くし

メイ

子どもだってお友だちと離れるのは寂しいけど、仕方のないことだわ

ワク

だから面倒だろ？

ワク

お前らにはついて来いとは一言も言ってないんだから、

ワク

大人しく家で過しておけよ

メイ

面倒なんて一言も言ってないでしょ！？

メイ

あなたが単身赴任じゃないと難しいと言うなら仕方ないけど、

メイ

明確な事情も知らされないままじゃ、不安になるでしょ？

ワク

それはお前の考え方が偏っているだけだ

ワク

お前ら家族と家のことを思っての決断なんだからな

メイ

別にウチは賃貸なんだから、引っ越しも制限がないのよ

メイ

私だってフリーランスだから、どこに住もうが困らないわ

ワク

俺が困るんだよ

メイ

なぜ？

ワク

いくら仕事とはいえ毎日のように家に居られちゃ、息が詰まるだろ

ワク

ただでさえ慣れない環境で過ごすんだから、ストレスの原因は排除しないとな

メイ

私のことがストレスだって言いたいの？

ワク

そうだ！

ワク

今さら気付いたのか？

メイ

信じられない…

メイ

これまであなたと仲良くやってきたつもりだったのに

メイ

こんな仕打ちはあまりにもひどいわ

ワク

なに被害者ヅラしてんだよ

ワク

お前というストレスに耐えながら、働いてきた俺の身にもなってみろ

ワク

いいタイミングで転勤になったんだから、これで清々するぜ

メイ

私たちはどうなるのよ

メイ

私ひとりに子どもや家のことを全て押し付ける気？

ワク

今まで俺が手出ししなくても、支障なくやってきたじゃねえか

ワク

引き続きよろしく頼むぜ！！

メイ

そう言われるとそうね

メイ

あなたは元から家事や育児には消極的だったから

ワク

これからはお前の嫌味を聞かなくて済むな

ワク

これでストレスフリーで新生活を始められるってワケだ！

メイ

ほんとに性根が腐っているわね

メイ

でもねあなたの好きにはさせないから

ワク

そんなこと言うだけムダだって

ワク

お前らに転勤の居場所は教えませ～ん

メイ

今に見てなさいよ！

～１週間後～

ワク

おい！どういうつもりだ！

ワク

行方不明届を出すなんて何が目的だ！？

ワク

お前のせいで警察に根掘り葉掘り聞かれたじゃねえかよ！

メイ

あら？出したのが悪かったのかしら？

ワク

当たり前だろ！！

ワク

こうやって俺と連絡がとれているんだから、探す意味がねえだろ！

メイ

所在が分からない家族は行方不明って言わない？

メイ

今のあなたは明確にどこに居るか言わないじゃないの！

ワク

それはお前の身勝手な解釈だ

ワク

警察を使って大袈裟に捜索するなんてやるだけムダだ

ワク

第一、お前なんかに居場所を知られてたまるかよ！

メイ

ずいぶん必死ね

メイ

そんなに居場所まで知られたくない理由があるの？

ワク

この間言ったように仕事に支障が出るってのが理由だ

ワク

お前と一緒にいるだけでストレスが溜まるってのが分からねえのか？

ワク

この1週間お前らと離れただけでも、

ワク

転勤先でもずいぶんと仕事の効率が上がってんだよ

メイ

そんなの感じ方次第でしょ？

メイ

転勤で職場の環境が変わったから、そう感じるんじゃないの？

ワク

お前に俺の仕事の何が分かるっていうんだ！

ワク

ずっと家に居るようなショボい仕事と違って、こっちは神経使ってんだ

ワク

私生活でもストレスを感じるようじゃ、やっていけねえんだよ

メイ

ほんとに自分のことしか考えてないのね

メイ

私はともかく、子どもに会えなくなるのを何とも思わないの？

ワク

そんなの承知の上で引っ越しでんだよ！

ワク

今のお前らや子どもは、俺の出世にとって邪魔でしかないんだ

ワク

お前だって俺が出世してくれたら嬉しいだろ？

メイ

今の環境を捨ててまで得たものに喜べるわけないでしょ！？

メイ

自分勝手な行動で家族を犠牲にしているのが分からないの？

ワク

まるでお前は理解のないヤツだな

ワク

こんなヤツと家族になったのがそもそもの間違いだったぜ

ワク

俺がこれから築いていく財産もやらねえからな！

メイ

そんなの引き合いにして私が引き下がるとでも？

メイ

あなたの所在、必ず突き止めてやる！

メイ

あなたの好き勝手にはさせないんだから

ワク

そんなのやるだけムダだ

ワク

お前らに邪魔されて、俺の華々しいキャリアを傷つけるわけには行かねえからな！

ワク

んじゃあ、達者でな～

～２週間後～

ワク

おい！

ワク

何でお前が俺の新居にいるんだよ！？

ワク

どうやってこの場所を突き止めたんだ！？

メイ

なに慌ててんの？

メイ

あなたに逃げられたままじゃ終われないから

メイ

居場所を突き止めてわざわざ来てあげたのよ

ワク

だったら事前に言ってくれよ！

ワク

こっちだって準備が全くできてなかったじゃねえか

メイ

は？何言ってんの？

メイ

そっちが頑なに拒むから、突撃訪問してあげたワケよ

メイ

まさか元同僚の不倫相手と仲良く同棲しているなんてね

ワク

へ？

メイ

まさか、私が知らないとでも思ってた？

メイ

あなたのやってることは全部バレバレなのよ

ワク

一体何のことだ…？

ワク

とんだ言いがかりをつけられても困るんだが…

メイ

言いがかり？

メイ

今も家の中に不倫相手がいるのに、よくシラを切れるわね

ワク

ちょ、なんで…

ワク

家の中にも入ってないのにそんなことが分かるんだよ！？

ワク

いい加減なことを言うのなら訴えるぞ！

メイ

１週間前からずっと見張らしてもらったわ

メイ

そしたら見知らぬ女が家を出入しているんですもの

メイ

あなたと仲睦ましく手をつないで歩いている姿も見させてもらったわ

ワク

おまえ…

ワク

やってることがプライバシーの侵害じゃねえか！

ワク

警察に通報してやる！

メイ

あなたは全然分かっていないわね

メイ

この間、行方不明届を出したって言ったでしょ？

メイ

だから警察も調べて情報提供してくれたのよ

ワク

卑怯なマネしやがって！

メイ

それだけじゃないわ

メイ

あなたの会社にも主人が行方不明だと連絡したわ

ワク

何だと！？

メイ

何が出世のための転勤よ！

メイ

会社に損失を与えるわ、社内不倫までバレるわ

メイ

だから地方の子会社に左遷されてんでしょ？

ワク

へ？

メイ

会社にとってはあなたはお荷物社員だったってことよ

メイ

しかも私たち家族が転勤や不倫の事実を知らなかったことを聞いて

メイ

あなたの元上司は驚いていたわ

ワク

違うんだ！

ワク

たしかに俺は取引先と揉めて、会社には迷惑をかけた

ワク

でも社内不倫をしていたことは公にはなってないはずだぞ！

メイ

そう思えるなんておめでたいことね

メイ

勤務中に不倫、しかも取引先との約束もすっぽかすなんて

メイ

よほどその同僚との不倫にに夢中だったのね

ワク

会社には全部バレてるのか…？

メイ

逆にバレていないとでも思ってた？

メイ

あなたの不倫相手の元同僚、取引先相手の人の奥さんだったんでしょ？

ワク

どうしてそんなことまで…

メイ

あなたとの不倫がバレて、会社を辞めて行方をくらましていた

メイ

私と同様、家族に行先も告げずに

メイ

まさか懲りずにあなたとの不倫関係を続けていたなんてね

ワク

しょうがないだろ！

ワク

２人ともお互いの家族にバレるのが怖かったんだ

メイ

そうね、私も相手のご主人も不倫の事実を知らなかったんですもの

メイ

お互いが行方をくらませば、責められることはないとでも思ったんでしょ？

ワク

ああ、その通りだ

ワク

お前とは離婚して、彼女との同棲生活を楽しむつもりだったんだよ

メイ

喜んで離婚してあげるわ

ワク

本当か！？

ワク

お前がそんな物分かりのいい人間だったとは思わなかったぜ

メイ

なに喜んでるのよ

メイ

あなたには私への慰謝料と養育費をたっぷり支払ってもらうわよ

ワク

どうしてそうなるんだよ！

ワク

お前には一切迷惑かけてないじゃないか

メイ

舐めたこと言ってんじゃないよ！

メイ

あなたの行いのせいで生活も無茶苦茶で大迷惑しているのよ！

メイ

私と子どもに苦痛を与えておいて、自分を可愛がってんじゃないよ！

ワク

そんな大袈裟な…

メイ

それだけじゃないわ

メイ

あなたの不倫相手にも同様に慰謝料を請求するからね！

ワク

そんなんじゃ俺たち生活していけないじゃないか！

メイ

家族を裏切ってまで手に入れた生活なんて、いつか終わるのよ

メイ

相手の旦那さんにもあなたたちの居場所は伝えてあるわ

ワク

ウソだろ…

ワク

何てことしてくれたんだ

メイ

私と同じように、あなたからも慰謝料を請求するそうよ

メイ

ま、当然の報いだと思うけどね

ワク

ふざけんじゃねえぞ！！

ワク

お前がこんなことしなかったら、幸せで過せていたんだ

ワク

要らないことで波風立てやがって、俺の人生無茶苦茶じゃねえか！

メイ

言ったでしょ？

メイ

家族を裏切っておいて、ただで見過ごすわけにはいかないって

ワク

でも俺はお前らに迷惑かけないように静かに過ごしてたんだ

ワク

余計な詮索をしたのはお前らだろ！

メイ

なら離婚するなりケジメをつけてからにしなさいよ！

ワク

う…

メイ

最初からそうすれば良かったのにね

メイ

自分の行いを一生後悔していればいいわ

ワク

待ってくれよ…

ワク

お前ら家族のことを邪魔なんて言ったりしない、謝るから

メイ

慰謝料をしっかり払って懺悔してください

ワク

そんなこと言うなよ…

ワク

俺たち夫婦だろ！？

メイ

もう離婚するから赤の他人だけどね

メイ

さようなら

ワク

ちょっと待ってくれよ！

ワク

メイってば～

～後日談～

メイ

ワクと不倫相手はしばらくの間、自宅に籠城していましたが、

メイ

ワクが妻を誘拐したと、不倫相手のご主人が警察に通報、

メイ

泣く泣く二人は自宅から出てきました。

メイ

更には私の両親とワクの両親も現地に到着、

メイ

ワクの両親は大激怒して、その場でワクに勘当を言い渡しました。

メイ

後日、私とワクは離婚が成立、

メイ

子どもの親権は私が持つことになりました。

メイ

不倫相手の夫婦も同じく離婚、

メイ

お互いに慰謝料と養育費を請求されてしまいました。

メイ

ワクも泣く泣く子会社で働きながら

メイ

二人で苦しい生活をしながら、慰謝料と養育費を払い続けています。

メイ

私は住んでいたアパートを引き払い、実家に戻りましたが、

メイ

両親並びに、子どもを通して義両親とも変わらず、仲良く付き合っています。

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