テラーノベル
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楽屋の片隅。 簡易ベッドに横になった阿部亮平は、浅い呼吸を繰り返していた。
阿部
そう言っていた声は、明らかにかすれていた。撮影の合間、ずっと無理をしていたことに、メンバーはようやく気づいた。
渡辺が額に手を当てた瞬間、顔色が変わる。
渡辺
阿部
そう言って起き上がろうとしたが、目黒が肩を押さえた。
目黒
阿部は一瞬だけ困ったような表情を浮かべた。「休む」という言葉に、条件反射のような緊張が走ったのだ。
⸺休む=許されない ⸺結果を出さない=価値がない
そんな考えが、無意識に浮かんでしまう。
子どもの頃。 阿部亮平は「できる子」でいることを求められて育った。
テストの順位。 成績表の数字。 「学年で上位じゃなきゃ意味がない」という言葉。
3位以内に入れなかった日、 家の空気は冷たくなった。
声を荒げられ、 食事を与えられず、 部屋から出ることも許されない。
阿部は学んだ。
「できていれば、何も言われない」 「結果さえ出せば、ここにいていい」
体調が悪くても言えなかった。 熱があっても、頭が痛くても、 「弱音=怠け」だと刷り込まれていたから。
その癖は、大人になった今も、消えていない。
楽屋で眠った、その瞬間
簡易ベッドで横になった阿部は、 最初は静かに眠っているように見えた。
だが、次第に眉が寄り、 喉から小さく、苦しそうな息が漏れ始める。
阿部
その声に、佐久間が気づいた。
佐久間
阿部は夢を見ていた。
フラッシュバック
白い紙。 赤い点数。 「どうしてこんな結果なんだ」と言う声。
部屋の扉が閉まる音。 暗さ。 空腹。
父
父
逃げようとしても、体が動かない。
阿部
夢の中で、阿部は何度も謝っていた。
阿部
阿部の呼吸が乱れ始める。 浅く、速く、苦しそうに。
佐久間
佐久間が肩を揺すり、深澤もすぐに近寄る。
深澤
深澤
はっと目を開いた阿部の視線は、焦点が合っていなかった。
阿部
次の瞬間、呼吸がさらに速くなり、 胸を押さえて息を吸おうとしても、うまくいかない。
目黒
目黒が低い声で言う。
目黒
その言葉に、阿部の肩がびくっと跳ねた。
阿部
無意識に出た言葉だった。
阿部
渡辺が即座に首を振る。
渡辺
渡辺
阿部は震える手で口元を押さえ、 込み上げる気持ち悪さに耐えきれず、 すぐそばの容器に顔を伏せた。
終わったあと、ぐったりと力が抜ける。
阿部
それでも、最初に出た言葉は謝罪だった。
佐久間
佐久間の声は、いつになく静かだった。
佐久間
佐久間
阿部は視線を逸らす。
阿部
深澤がはっきり言った。
深澤
深澤
目黒も続ける。
目黒
その言葉に、阿部の目が揺れた。
今まで、 「結果が出なければ価値がない」と信じてきた。
でも今、 結果とは関係なく、 怒られもせず、閉じ込められもする、 ただ心配されている。
それが、信じられなかつわた。
阿部
阿部が、かすれた声で言った。
阿部
佐久間がそっと手を伸ばす。
佐久間
佐久間
阿部の目から、静かに涙がこぼれた。
それは、 長い間、誰にも見せなかった弱さだった。
その後
医師に診てもらい、 高熱と疲労だと診断された。
「ちゃんと休んでください」と言われ、 阿部は初めて、素直にうなずいた。
ベッドの横には、交代でメンバーがいた。
眠る前、阿部は小さく言った。
阿部
目黒が即答した。
目黒
その言葉を聞いて、 阿部亮平は、ようやく安心して目を閉じた。
夢は、来なかった。
もんちっち
もんちっち
もんちっち
もんちっち
もんちっち
コメント
4件
これめっちゃすき!!最高
よすぎます! 本当にありがとう😭