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〜本拠地 手前〜

3話前に桃音と離れ離れになった凜々愛は本拠地の前までたどり着いた。村で襲ってきたあの敵は既に殺した。

神楽 凜々愛

…………

神楽 凜々愛

(……来ない?)

神楽 凜々愛

(……殺気も感じない?)

妙に静かなのが不思議だった。確かにいるという気配はする。しかし凜々愛がただ1人本拠地の真ん前にいるというのに、誰も襲いにかからない。

さらに妙な事に、殺気まで感じなかった。もちろんギリギリまで殺気を感じさせないベテラン殺し屋もいる。山吹村の殺し屋は特にそうだ。なんなら気配まで消すのも上手い。しかし”同族”の凜々愛には、それは通じないはず……

神楽 凜々愛

(……罠かもしれない)

神楽 凜々愛

(……でも、一か八か…
行くしかない!)

凜々愛は決心し、本拠地へ足を踏み入れようとした。

神楽 凜々愛

!!

神楽 凜々愛

(……そうだ、畳!)

本拠地へ上がり込もうとしたが、日本式の屋敷なため、全面が畳だったことに気付いた。流石に土足で畳に上がるのは常識的に抵抗があった。

神楽 凜々愛

……う〜ん…

神楽 凜々愛

(……かと言って、靴下で戦ったら、絶対死ぬ!)

凜々愛は数秒ほどためらったが、 罰当たり覚悟の上で、畳にピンヒールのブーツを踏み入れた。

彼女が踏み出したすぐそこには、黄色く咲いた山吹の花が一面に広がっていた。

〜本拠地〜

本拠地に上がった凜々愛は、畳を靴で歩く感覚に違和感を感じながら進んでいった。やけに静かな屋敷は、廃墟のようにひんやりとした空気をしていた。

神楽 凜々愛

………

だだっ広い和室をしばらく進んで行くと、凜々愛はピタリとその場で立ち止まった。襖に囲まれた一室の真ん中で、凜々愛は正面の襖を睨みつけ、刀を向けて低い声でこう言った。

神楽 凜々愛

……出てこい

神楽 凜々愛

……そこに居るんでしょ?

すると、正面の襖が開いた。 そこには和服姿の男が立っていた。

頭(かしら)

これはこれは…

頭(かしら)

”双晶”さまではないか

その男が言うと、左右の襖が開き、和服姿の村人たちがぞろぞろと姿を現した。しかし凜々愛は四方八方囲まれた状況になったが冷静なままだった。

神楽 凜々愛

……お前、山吹族だな

頭(かしら)

お久しぶりですNo.2のお嬢様

頭(かしら)

俺は裏切太郎。今はここの頭としてやっています

※モブの名前考える気ゼロの作者※

神楽 凜々愛

……悟朗は、
今どこにいるの?

からかうような口調で言う頭(かしら)を、凜々愛は睨みつけて尋ねた。

頭(かしら)

…!

頭(かしら)

さすが、あの男の幼なじみ

頭(かしら)

なんでもご存知ってわけか

有頂天になっている頭は答える気すらなかった。凜々愛は周りの村人を全滅させてから聞き出すと決めた。

頭(かしら)

それより、No.2様が自ら来てくださらるなんて…手間が省けて有難い

神楽 凜々愛

(……手間が省ける?)

神楽 凜々愛

……なぜ、こんな事を?

頭(かしら)

なぜって?

頭(かしら)

そんなこと決まっているだろう!

神楽 凜々愛

……!

凜々愛が続けて尋ねた途端、頭の表情がガラッと変わり、声を荒らげて言った。

頭(かしら)

全てはあの男への復讐だ!

頭(かしら)

俺らの全てを
奪ったアイツへの…!

神楽 凜々愛

……っ

頭(かしら)

しかしただ殺すだけでは気が済まない!

頭(かしら)

地獄の苦しみを与え!この世に生まれてきたことを後悔させてやるのさ!

頭(かしら)

あの化け物が!!今更あの時を悔やんだとしてももう遅せぇんだよ!!

やはり本部で店長が言っていた通りだった。彼らが再結成したのは、かつて悟朗(の裏人格)によって崩壊へと陥れられた復讐だった。この怒り狂っている頭がどれだけ悟朗を恨んでいるのかが伝わる。 しかし…………

神楽 凜々愛

……お前、何もわかってない

頭(かしら)

あ?

神楽 凜々愛

……悟郎はね、誰よりも
優しいんだよ

叩きつけるように言いだす頭を、凜々愛のオレンジの目が、彼女の揺るぎのない精神が真っ直ぐ見つめて言った。

神楽 凜々愛

どんなに周囲に馬鹿にされても、あの時お前たちが集団リンチした挙句に殺そうとしたのも、悟郎は全部赦してるんだよ

頭(かしら)

は…っ?

神楽 凜々愛

……それに、今更なんかじゃない。ずっと悔やみ続けてるんだよ

神楽 凜々愛

……殺してしまった子たちの墓参り、毎年行ってるんだよ。一人一人にね

神楽 凜々愛

……なんでか分かる?

神楽 凜々愛

……彼が次期村長だからだよ

頭(かしら)

………

頭は返す言葉を失った。憎くて仕方がない悟朗が、自分たちが知らない間に墓参りまでしているとは思ってもいなかった。村が崩壊しても、死んだ村人たちを気にかけているとは、それでも悟朗は村長になるに相応しい器だ。

しかしその悟朗の人間性が、自分自身との格差の違いを押し付けられたようで、頭は不快に感じた。

神楽 凜々愛

……それに、後悔しているのはおじ様もそうだよ

頭(かしら)

!村長が…?

村長を呼ぶ名が出てきて頭はピクッと反応を見せて目を見開いた。

神楽 凜々愛

……なんでおじ様が、自分で腹を切ったのか、知ってるの?

頭(かしら)

そんなの……山吹村が終わったからだろう!あの男のせいでな!

神楽 凜々愛

違う!おじ様が死んだのは…!

神楽 凜々愛

…悟郎をああまで追い詰めた罪悪感でだ…!

頭(かしら)

…!?

凜々愛は声をあげて言った。頭は意外な理由で唖然としているだけ。

神楽 凜々愛

……幼い頃から悟郎にだけあんな虐待に近いことしてきたせいで、二重人格にさせてしまったって…!

神楽 凜々愛

その罪を背負うために、切腹したんだ!

神楽 凜々愛

……介錯をおば様に任せず、妻を一人残さないように先に一思いに楽に逝かせてから、自分だけ苦しみながら死んだんたよ!

凜々愛は何も知らない頭に苛立ちを感じながら、二人の死の真実を語った。

頭(かしら)

………

頭(かしら)

…嘘だろ?
村長…奥様…

神楽 凜々愛

…………

頭の表情は青くなり、消えてしまいそうなその声は震えていた。この男が再結成してトップである自分を”村長”ではなく、”頭(かしら)”と名乗るのは、悟朗の祖父である村長を心から尊敬しているからだ。凜々愛もそうわかっていた。

頭(かしら)

…………

頭(かしら)

…んだよ、それ

神楽 凜々愛

……?

頭(かしら)

なんなんだよそれ!!
聞いてねぇよ!!

神楽 凜々愛

……!?

か細い声で呟いた後、頭は突然叫び、 膝をつき頭を抱えてうずくまった。

頭(かしら)

村長…なんで言ってくれなかったんだよ!奥様も!

頭(かしら)

言ってくれれば、こんな事しないで済んだのに!!

頭(かしら)

ふざけるな…それさえ教えてくれたら!

頭(かしら)

俺はもっと違う人生を送れたのに…!!

神楽 凜々愛

……お前…

涙を流しながら悔しそうに言う頭。本当は普通に生きたかったのだろうか、もしその事を知ってたら復讐する必要がないと判断したはず。村の崩壊を機に足を洗ったかもしれない。何も怯えることなく、普通の仕事を見つけて暮らすのが、この男の夢だったかもしれない。

百峰 桃音

…………

凜々愛から見て右側の村人たちがいる真後ろの襖の奥の一室。そこで滅多刺しになったジャケットを脱ぎ捨てた桃音は、なんと3話もかけてようやく弓矢の敵を倒し、相棒の凜々愛たちのやり取りを襖越しでずっと聞いていた。そして、彼女も土足で畳に上がり込んでいる。

↑同じく罰当たり覚悟。

頭(かしら)

ははは…っ

頭(かしら)

でも、もういいや…

すると頭は頬に涙を一筋に流した顔を上げ、虚ろになった目で凜々愛を見て不敵な笑みを浮かべた。

頭(かしら)

どうせもう戻れないんだ。この村に生まれた宿命っていうやつだったんだ

頭(かしら)

計画通りに、
死んでもらう…!

頭(かしら)

神楽 凜々愛!!

神楽 凜々愛

!!?

百峰 桃音

!!コイツ…!

桃音はその言葉で我慢の限界になり、襖を乱暴に開け、咄嗟に銃を取り出し、目の前の村人たちの脳天を狙った。

バシィン!!

百峰 桃音

っあぁ!?

すると突然、1番近くにいた村人がこちらに振り向き、持ってた木刀で手元を打たれ銃を二丁とも手放された。

ドンッ

百峰 桃音

っ!!

村人達(本拠地)

動くな、”人間兵器”

そのまま隙を与えず、木刀の先端で桃音の鎖骨辺りを突いて襖に押し付けた。

神楽 凜々愛

……!桃音!?(居たんだ)

桃音の存在に気付いた凜々愛。周囲の村人たちは木刀を凜々愛に向けた。

……木刀?

頭(かしら)

おい、”双晶”は殺すな

頭(かしら)

分かってるな?
生け捕りにするんだ

頭(かしら)

ただその代わり…

「アイツが絶望するよう 存分に痛めつけてやれ」

神楽 凜々愛

……!?

村人達(本拠地)

てやああ!!

ズバッ!ズバッ!

まずは木刀を振りかざす村人たちの脾腹を切りつけた。頭の言葉で

もう無茶苦茶だ。 頭は完全におかしくなってしまった。

しかし、その言葉で納得がいった。壱茶が相手している村人も、10人ぐらいの瑠花が相手している村人たちも、なぜか誰も凜々愛だけは殺しにかからない理由、彼らの目的がわかった。

No.2の娘であり幼なじみである凜々愛を捕え、思う存分痛めつけた後に悟朗の前で見せしめとして殺すこと。

これが彼への最大の復讐だ。

神楽 凜々愛

(……こいつら、そこまでする必要があるのか…!)

ズバッズバッ! ズバッズバッ!

勘のいい凜々愛は怒りがこみ上がり、その感情を刃に込めて周囲を囲む村人たちを切り捨てていった。

百峰 桃音

お前…!ウチの相棒と仲間に何…

ダァン!

百峰 桃音

うあ…っ!?

桃音が頭(かしら)を睨んで言いかけた時、桃音を襖に押し付けてる村人が、彼女を木刀で突いて襖ごと押し倒した。

村人達(本拠地)

頭ぁ!こいつは殺していいか?

頭(かしら)

好きにしろ

頭の許可がおりた途端、押し倒した村人の近くにいる者たちの目線が、丸腰になった桃音に集中した。

百峰 桃音

…っ!

バンッ!

桃音はこのままでは滅多刺しにされると悟った瞬間、足を上げてブーツを擦るように操作して、仕込み銃を発砲した。押し倒した村人は脳天に風穴が開き、重力に引き寄せられるように倒れた。

村人達(本拠地)

…!仕込み銃だと!?

百峰 桃音

(初期設定思い出すなぁ…)

他の村人たちが目を丸くしていることには気にせず、桃音は彼が手放した木刀を手に取って起き上がった。

※2020年版過去桃音の竹刀設定より※

村人達(本拠地)

お前に刀術があるとでも?銃しか取り柄がない”人間兵器”さんよ

百峰 桃音

ふーん…

百峰 桃音

銃の凄腕って意味で捉えとくわ

村人達(本拠地)

ははっ、でも今は大事な銃が無いだろ

村人達(本拠地)

足以外はな

百峰 桃音

……

1人の村人に煽るようにそう言われて返す言葉がない桃音。木刀で弾かれた二丁の銃は結構離れたところに落ちている。どうにかして取りに行きたいが村人たちを突破しなければならない。

そして生憎なことに、この村人の言う通りだ。確かに桃音は幼少期から銃の扱いには慣れているが、刀などの武器は一度も扱ったことはない。圧倒的刀術に優れた山吹族に木刀で相手しても到底勝てるわけがない。しかし、途中まで見落としていた重要なことが1つある。

百峰 桃音

(こいつらは…”山吹族”なんか?)

そう。この村にいる者全員が”元祖山吹族”とは限らない。恐らく忘れている人もいるであろう、4話前に、山吹村の得意先の天照武器商店の恵留が言ってた。

「つーか、コイツらほんとに山吹族なのか?例えばこの辺、絶対違ぇツラだろ」

そもそも再結成とは元からいた組員数名が人を集めて出来たものだ。当然山吹族以外の人間も多々いるはずだ。問題は ”元祖”山吹族はどれだけ生き残っているかだ。ならば………

百峰 桃音

(刀術がアホみたいに強いやつはゆーておらんかもしれへんってことや…!)

僅かな希望を信じて、桃音は木刀を握りしめ振り上げ手駆け出した。 しかし……

ドカッ!

百峰 桃音

ッ…!!

木刀を振りかざした時だった。正面の村人が桃音の横を素早く通り過ぎるのと同時に、彼女の脇腹を打った。

村人達(本拠地)

ふん…やっぱり銃しか取り柄がない女だな。”人間兵器”

村人が振り向いて言うと、桃音は電池が切れたように、その場に崩れるようにガクンと膝を着いた。

百峰 桃音

………

村人達(本拠地)

ふふ…っ、痛みで声も出ないか

村人達(本拠地)

いや、そもそも立ち上がっ…

ヒュンッ!!

ドカァンッ!!

村人達(本拠地)

がっ…!?

立ち上がれない、と言おうとしたその時、村人の顔面に木刀が飛んできた。木刀を思いっきり投げつけてやったのは桃音だった。脇腹を打たれて膝をついていたが、何事も無かったかのようにスクッと立ち上がっている彼女の姿とその光景に、他の村人たちは何が起こったのか理解に手間取った。

百峰 桃音

(ま〜た寿命削られたな…)

口角を上げて背筋を伸ばす桃音のピンク色の目は薄くなっていた。木刀で打たれて肋が何本か折れてるであろう脇腹の痛みには全くもって気にしていない。

運がいいのか悪いのか、まさにこの打たれた瞬間だった。桃音がかつて身を投げ出した例の薬品の副作用がきたのだ。

副作用とは不定期に脳に電気ショックのような衝撃し一時的に痛覚が麻痺し、その麻連が切れるとまた電気ショックのような衝撃が訪れ、麻痺時に受けた分のダメージに襲われることだ。そしてそれが繰り返すことにより、寿命がじわじわと削られているのだ。

村人達(本拠地)

お前…痛みを感じないのか!?

村人達(本拠地)

この木刀は鉄製だそ!?

それもう木刀じゃないだろ。

百峰 桃音

アンタらみたいなバケモンに言われたくないわ戦闘民族

百峰 桃音

それに、逆にアンタらは刀術しか取り柄がないんちゃうん!?

煽り返すように言う桃音。桃音は刀術ができるわけではないが、生身の戦闘は、お得意の射的ほどではないが、幼少から教わっているのでそこそこできる。

村人達(本拠地)

なっ…!

百峰 桃音

山吹族の致命的な欠点、刀術極めすぎて生身の戦闘がめっちゃ弱いんやろ!

百峰 桃音

(ごめんな凜々愛!)

該当する凜々愛に心の中で謝りながら格闘の構えをして言う桃音。図星を突かれた村人たちは木刀を握りしめた。

村人達(本拠地)

ふん…!

村人達(本拠地)

生身が武器で勝てるわけないだろう!

百峰 桃音

生身?

百峰 桃音

まぁ〜、生身っちゃ生身やけど 生身とちゃうねんなぁ、生憎

余裕こいた口調で言うと、桃音はブーツを擦るような動きをした。すると、ブーツのつま先からナイフが飛び出た。

村人達(本拠地)

!お前…それは!

百峰 桃音

武器、無いこともないんよ

百峰 桃音

(これガチの初期設定〜)

※2020年版の…以下略※

仕込みナイフの存在に気付いたのはつい先程の脇腹を打たれて膝をついた時だった。彼女はポーカーフェイスを気取っているが、本当は驚きを隠せなかった。まさか仕込み銃だけでなく、懐かしき仕込みナイフまであったとは思いもよらなかった。しかしこれで何とかなりそうだ。

村人達(本拠地)

い、いや…!

村人達(本拠地)

そんな小賢しい武器が通用するか!

すると負け惜しみのように怒鳴る村人が飛び出て、桃音に木刀を振りかざした。

ザシュッ!

ボトッ

村人達(本拠地)

ぐあああああ!!

何が起こったのか、畳に木刀を握ったままの、村人の両腕が落ちていた。両腕から大量の血飛沫を出しながら、彼に襲いかかる激痛にもがき苦しみ悲鳴をあげながら倒れた。

村人達(本拠地)

なんだあの切れ味は!?

村人達(本拠地)

たかが仕込みナイフで両腕を切り落とせるのか…!?

辺りがざわつき始めた。さすが山吹村を固定客とする天照武器商店だ。1つのブーツに銃とナイフの両方を仕込ませる技術。仕込みナイフでも日本刀とさほど変わらないクオリティで素晴らしい。

百峰 桃音

1話限りの初期設定復活やな

百峰 桃音

百峰ぇ行きまぁす!

ズバァ!

村人の胴体から血が吹き出た。桃音が痛覚麻痺になってるその頃、凜々愛は迫り来る村人たちに苦戦していた。

神楽 凜々愛

(……まずい)

神楽 凜々愛

(……数が多い、
キリがない…!)

村人たちは凜々愛を集中して狙うが、最終的に凜々愛を悟朗の目の前で殺すつもりなので、殺しにかかるわけではない。

彼らの今の目的は凜々愛を衰弱させること。だから刀ではなく木刀を持っている。しかしそれはもはや木刀ですらなかった。一撃で肋が折れるほどの威力だ。

頭(かしら)

気がついたか…

頭(かしら)

これがただの木刀ではないことが

安全地帯から眺める頭。その矢先には凜々愛の日本刀と村人の木刀が交わし、彼女がその村人を切り捨てるまで。

山吹族特有の異様な刀術でありながら繊細で美しく、蝶が舞うかの如くに切り捨てていく。これが神楽凜々愛という女。

頭(かしら)

(さすが”双晶”の片割れ…)

頭(かしら)

(二人揃っていたら
もっと強かっただろう)

かつて凜々愛と2人で1人の殺し屋として動いていた神楽璃玖斗が思い浮かぶ。もしも彼が生きていたら、倍の強さだろうと、頭はただ見ているだけだった。

ザシュッ!

村人達(本拠地)

ぐあああっ!!

また1人、一騎打ちに負けて血飛沫を出しながら倒れる。凜々愛は眉一つ動かさない、まさに”人斬り人形”そのものだ。

神楽 凜々愛

………

神楽 凜々愛

……お前、見ているだけか

誰も一騎打ちを挑まなくなってきたところで凜々愛は濁った目で、先程から何もしていない、ただ見ているだけの頭を睨んで言った。まるで今自分が斬り捨てている村人たちは使い捨ての駒のような扱いのように思えたからだ。

頭(かしら)

いや俺はもっと重要な
役割があるからな

頭(かしら)

”若殿”を殺すこと…をな

神楽 凜々愛

………

狡猾さが滲み出た表情で言う頭。この時、凜々愛はこの卑劣極まりないこの男に対する嫌気や怒りがピークに達した。

神楽 凜々愛

……屑が

神楽 凜々愛

……やっぱり悟郎の
居場所を聞くのはやめた

頭(かしら)

は?

「……今、ものすごくお前を殺したくなった」

無口でコミュ障の凜々愛はいよいよ吹っ切れたのか、お淑やかさゼロの暴言と低い声しか出なくなった。彼女が頭に向ける刃と刺すような眼差しが、心情を表し、殺気を引き立たせた。

頭(かしら)

頭(かしら)

…ははっ

頭(かしら)

ここまで本気になる
”双晶”は初めて見るなぁ

ダッ!

凜々愛の殺気に対して強がるように作り笑いをしてみせて言うが、彼女はそれに耳を貸さずに頭を切ろうと駆け出した。

キィン!!

金属音が鳴り響いた。凜々愛の日本刀と押し合うのは木刀ではなく、同じく日本刀だった。

神楽 凜々愛

ーっ!

頭(かしら)

どうやら俺から分からせてやるしかないようだな。神楽凜々愛

キィンキィン!!

キィンキィン!!

キィンキィン!!

刃がぶつかり合う金属音が鳴り響く。隙を与えない目にも留まらぬ一騎打ちがくり広がれる。

キィン!

神楽 凜々愛

……!

神楽 凜々愛

(……この男、強い!)

頭(かしら)

お前は本気であの男に罪は無いとでも思っているのか?

頭(かしら)

だとしたらイカれてやがるぜ

焦り感じた凜々愛に、 頭は嘲笑いながら言った。

神楽 凜々愛

……どういう意味だ?

頭(かしら)

そのままの意味だ!

キィン!

キィン!

頭(かしら)

俺はあの時見たんだ!

頭(かしら)

俺はあの時の生き残りだ!

神楽 凜々愛

……!?

頭(かしら)

息を殺して身を潜めてた時に見たんだよ!目の色を変えたあの男が!仲間をズタズタにするところを!

神楽 凜々愛

…………

キィン!

頭(かしら)

あいつ自身の手で、
全てを壊した

頭(かしら)

それでもアンタはあの男に罪は無いとでも言えるのか?

キリキリと刃から持ち堪える音が鳴る。凜々愛は頭の攻撃を受け止める。

神楽 凜々愛

……言える

頭(かしら)

はぁ?なんだ?

頭(かしら)

庇ってるのか?
村長の孫だからって?
幼なじみだからって?

神楽 凜々愛

……お前には、
一生分からない

鬱陶しく問い詰めるような口調で言う頭を、逆に煽り返すように言う凜々愛。

キィン!

キィン!

両者が一度刀を弾きあってから、 もう一度刃をぶつけて押し合った。

神楽 凜々愛

(……そうだよ)

神楽 凜々愛

(……悟郎に、罪は無い!)

神楽 凜々愛

(……だって裏ゴローが
言ってたんだから!)

〜いつかの本部 暗殺部室〜

神楽 凜々愛

……ボク、心配なんだ

神楽 凜々愛

……だって悟朗、
未だに村のこと…

裏ゴロー

やめろ!

神楽 凜々愛

……!

裏ゴロー

村を滅ぼしたのは俺だ。
あいつは悪くねぇ

神楽 凜々愛

……裏ゴロー…

裏ゴロー

俺さえいなければ、あいつもお前も…誰も傷つくことはなかった

神楽 凜々愛

………

裏ゴロー

罪滅ぼしっつぅもんにもならねぇが、俺にできるのはお前らを傷つけないようにすることだ

裏ゴロー

特にお前をな

神楽 凜々愛

……!

裏ゴロー

ま、つっても神楽を護るのは天然野郎だから、そこんとこ俺には関係ねぇがな

神楽 凜々愛

……え???

神楽 凜々愛

(……だから、
それ以上はもう!)

頭(かしら)

…フッ

神楽 凜々愛

……!

ドカァ!!

刀と刀で押し合い、頭と至近距離になっている時。何かの合図のように頭が口角を上げて鼻で笑ったのが見えたその瞬間、凜々愛は背中から衝撃に襲われた。

神楽 凜々愛

うあ…っ!!

バタン!

次の瞬間には仰向けで畳に押し付けられていた。背中からの痛みで立ち上がれない。全身に上手く力が入らない。

村人達(本拠地)

ふん…うっかり頭だけが敵とでも思ってただろう?

そう凜々愛を見下して言うのは周囲にいた村人だ。背中からの衝撃の正体は村人たち数人からの不意打ちだった。

神楽 凜々愛

(……し、しまった!)

凜々愛は起き上がろうと顔を上げるが、すくま横に立っている村人に足蹴にされて、また地についてしまった。

頭(かしら)

惨めだなぁ

頭(かしら)

底辺這いずる幹部が

ドカァ!!

頭(かしら)

頭は凜々愛の頭を踏みにじり見下して言ったその直後、他の村人の攻撃によって桃音が頭の後ろ側にある柱に衝突した。

頭(かしら)

なんだ、まだ手こずっていたのか

頭は凜々愛から足を下ろし、振り返って呆れた口調で村人たちに言った。

村人達(本拠地)

こいつ全然倒れなくって…!

頭(かしら)

ふーん…さすが”双晶”の相棒だな

凜々愛を横目で見て言った。

百峰 桃音

!テメェ…!

百峰 桃音

誰の…相棒に……!

百峰 桃音

手ぇ出してんねん…!!

桃音は今ある僅かな力を振り絞って、凜々愛を取り囲む村人たちを睨みつけて言った。その場から動けないのは副作用が切れて麻痺していた時に受けたダメージの分が全て痛覚としていっぺんに襲いかかっているからだ。

頭(かしら)

そんなアザだらけになったらもう動けないだろう

頭(かしら)

ちょうどいい。ついでに相棒が滅多打ちにされるのを見るがいい!!

百峰 桃音

!!

百峰 桃音

り、凜々愛…!!

倒れた凜々愛を目掛けて複数の村人が木刀を振りかざす。桃音は辛うじて、 痣だらけの手を伸ばして叫んだ。

神楽 凜々愛

……っ!

ドガァァ!!!

神楽 凜々愛

!!

百峰 桃音

!!

村人達(本拠地)

!!

頭(かしら)

!!な、なんだ!?

突然、破壊音が鳴り響いた。それと同時に、襖と一緒に頭から血を流した数人の村人の死体が、この乱闘を妨げるように吹っ飛んできた。一同が驚きのあまりに動きが止まり、凜々愛は木刀で滅多打ちにされることがなくなり間一髪 難を逃れた。飛んできた襖と死体は桃音のすぐ横にある襖からだった。

村人達(本拠地)

うわあああ!!

百峰 桃音

(なんや!?瑠花か!?)

さらに襖の奥から村人の悲鳴が聞こえた。桃音はこの圧倒的な破壊力で瑠花だと思った。しかし………

ジャラッ…

百峰 桃音

(いや、ちゃう…
鎖…?壱茶か?)

そこに落ちていたのは長い鎖だった。その鎖を辿るように見ると、その先は、手合わせが十分できるほど広い庭を見渡せる縁側があった。

(((ゾワッッ!!)))

カラン……

カラン……

カラン……

あるとあらゆる武器で切りつけられたような凄まじい殺気でこの静まり返った空間で、不規則に鳴る下駄の音が、 ゆっくりと近づいてきた。

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