兄と弟

俺には弟がいる

1つ年下の俺の弟は アイドルだ…

UN JOUR(アンジュール)という グループに所属している

その日の夜

俺は子供の頃に

芸能事務所にスカウトされた

これでも 子役時代は

ドラマやCMに 出演した事もある

でも

成長するに連れて 仕事は減っていった

そして

中学生の時…

タクヤが同じ事務所に 入ってきた

タクヤは 持ち前の明るさと愛嬌で

あっという間に 俺を追い越し…

今では 人気アイドルだ…

『弟の方が良いね』

プロデューサーの 何気ない一言で

俺は事務所を辞めた…

コンコン…

バタンっ…

本音を言ったのに

全くスッキリしない…

『兄ちゃーん！見て！！』

こら、タクヤ…転ぶぞ！

『海だよ！海っ！！』

全く…タクヤは子供だな

『兄ちゃん！遊ぼ！遊ぼ！！』

はいはい…

『ねぇ…兄ちゃん』

ん？

『俺も…芸能人になりたい』

え？

『俺も芸能人になって』

『兄ちゃんと一緒に仕事がしたい！』

…うん、そうだな

お前も事務所に入れよ！！

いつか 一緒の作品に出ようぜ！！

『…うんっ！！』

これは…夢…か

懐かしい夢だな

タクヤは 1個しか年が違わないのに

いつも 無邪気で…

笑顔で…

大切な…

俺の弟…

数ヶ月後

あれからタクヤと 話しをしていない…

…当たり前…だよな

進路希望…

もう そんな時期か…

将来…か…

タクヤをエゴサしてみたが…

批判の声が多い…

何があったんだ…？

なんだよ… タクヤ、お前…

なんでそんな

無表情なんだよ…

次の日の朝

久しぶりに

2人で笑った日…

とても

清々しい気持ちになった

この先…何があっても

お前は大丈夫だ

だって

お前は俺の

弟なんだから

fin