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生まれてから一度も、嬉しいと感じたことがなかった。
「嬉しい」が無ければ「悲しい」も、「楽しい」だって無くなる。
周りの大人は私を気持ち悪がった。
子どもたちも話しかけなくなって、私自身も喋らなくなった。
最初は喋りかけてきた人も、無視すると気分悪そうに離れていった。
話しかけないで。
笑いかけないで。
どう返していいのか、分からなくなる。
こうして、今の私が出来上がった。
冷たく、周りの暖かさを受け入れない壁を築いた、今の私が。
季節は、春。
4月、桜咲く、4月。
見慣れない通学路には桜が桃色の絨毯を作り
辺りには近所のお母様方の話し声が響いた。
私はと言うと、読書をしている。
久瀬 薫
久瀬 薫
久瀬 薫
久瀬 薫
久瀬 薫
久瀬 薫
久瀬 薫
失感情症候群
久瀬 薫
久瀬 薫
久瀬 薫
私立篠宮中学校
今日から、私が通う学校の名前。
他の人より少し大きめの私が、校門をくぐる。
ふと、家を出る前の母の言葉を思い出した。
「ここは半寮制だから、友達がいっぱいできるわよ。そうしたら、きっと…」
久瀬 薫
久瀬 薫
ボソッと呟くと、式場である体育館へと足を早めた。
入学式が終わって、教室へ移動する。
久瀬 薫
久瀬 薫
久瀬 薫
寮に置くはずの生活用品が入った荷物が、肩に食い込む。
久瀬 薫
久瀬 薫
小高 真希
久瀬 薫
小高 真希
突然、隣を歩いていた女子生徒が声をかけてきた。
久瀬 薫
久瀬 薫
小高 真希
久瀬 薫
小高 真希
いくら無視しても、埒が明かない。
こいつは放っておいたら、教師を呼ぶだろう。
私は意を決して、恐らく何年ぶりかになる会話をしようと口を開けた。
久瀬 薫
小高 真希
久瀬 薫
久瀬 薫
急に視界が反転し、ぐにゃりと曲がる。
やがて、周りが真っ暗になった。
1番に視界に入ったのは、、見知らぬ天井だった。
小高 真希
小高 真希
小高 真希
久瀬 薫
小高 真希
小高 真希
久瀬 薫
小高 真希
小高 真希
相手は、意地悪く笑う。
小高 真希
そう言って身を翻すと、廊下を歩いていった。
担任
担任
久瀬 薫
担任
久瀬 薫
担任
担任
担任
久瀬 薫
担任
久瀬 薫
翌日。
その日は、雲一つない青空だった。
久瀬 薫
小高 真希
小高 真希
久瀬 薫
私は、小高を屋上へ続く階段へ連れて行った。
ここなら誰かに聞かれることもあるまい。
久瀬 薫
小高 真希
久瀬 薫
病気のこと、上手く喋れないこと、喋りたくないこと、全て話した。
その間、小高はずっと黙って聞いてくれた。
久瀬 薫
小高 真希
小高 真希
小高 真希
小高 真希
小高 真希
久瀬 薫
小高 真希
私の事を気味悪がらずに気づかってくれる小高の温度が、心地良かった。
私が12年かけて築いてきた冷たい壁を、壊すわけでもない。
他の人のように、土足で入ってくるわけでもない。
…別に、心を開いたわけではない。
ただ、こいつを、少し信用してみてもいいかな、という気持ちになっただけだ。
久瀬 薫
小高 真希
久瀬 薫
小高 真希
久瀬 薫
久瀬 薫
小高 真希
小高 真希
小高の声は、しっとりとしていて、暖かかった。
小高と知り合ってから、3日が立った。
小高 真希
久瀬 薫
あいつは一層、うっとおしくなっている。
小高 真希
久瀬 薫
小高 真希
小高 真希
小高 真希
久瀬 薫
小高 真希
あの日から度々、嬉しいと感じることが多くなった。
褒められると嬉しいし、心配されると嬉しい。
感情なんてあるだけ無駄と思っていたが、そんなことはないな。
久瀬 薫
久瀬 薫
小高 真希
小高 真希
小高 真希
担任
担任
担任
クラスメイトは怖いとか適当に相槌を打っているが、何が怖いのかわからない。
こんな山奥の学校に来るわけがないだろう。
いや、山奥だから来るのか?私立だし、学生を人質にとって金を要求…あり得るな。
そうなると面倒くさいが。
数学教師
久瀬 薫
数学教師
数学教師
ぼーっと考え事をしているうちに1限目が始まっていた様で、数学教師が私に向かって怒鳴り散らしていた。
久瀬 薫
その発言に苛ついたのか、握りこぶしを振り上げて、こちらに向かってきた。
そして、勢いよく振り下ろす。
しかし、私が頭を少しずらすとバランスを崩し、机に手をぶつけた。
相当痛かったらしく、涙目になってこちらを睨む。
数学教師
悪役のようなセリフを吐くと、板書を書きに戻っていった。
辺りからはクスクスと微笑が漏れる。
数学教師がしばらくの間バカにされたのは、言うまでもあるまい。
相澤 夏帆
相澤 夏帆
久瀬 薫
相澤 夏帆
あぁ、有名人の娘か。入学早々ファンクラブができたという、あの。
…確かに顔立ちは整っているな。
相澤 夏帆
相澤 夏帆
久瀬 薫
相澤 夏帆
思ってないだろ、そう言おうとしたら、隣の…八神が、先に口をついた。
八神 雅人
八神 雅人
八神 雅人
相澤 夏帆
八神 雅人
今にも泣き出しそうな相澤を見て、八神はニヤニヤしている。
成程、性根が腐っているようだ。
久瀬 薫
久瀬 薫
少し、八神が顔を引つらせた。
八神 雅人
久瀬 薫
久瀬 薫
久瀬 薫
八神は、後味悪そうに席を立って歩いていった。
相澤 夏帆
相澤 夏帆
急な相澤の発言に驚く。
久瀬 薫
相澤 夏帆
相澤 夏帆
唐突に、というべきかまた、というべきか、嬉しい、ほわほわとした感情が湧いた。
久瀬 薫
相澤 夏帆
そう言って大袈裟なくらい喜んでみせる。
それがまた嬉しくて、顔が綻んだ。
チャイムが鳴り、皆席につく。
八神は、わざと大きい音を立てて席に座ると、携帯を取り出した。
久瀬 薫
久瀬 薫
八神は私が見ていることに気がついたのか、形態の液晶画面をこちらに向けた。
八神 雅人
メモと書かれた欄に記入されたそれは、挑発の文だった。
八神 雅人
流石にこれ以上馬鹿にされてはいけないと思ったので、携帯を奪い取って記入する。
久瀬 薫
一層眉をしかめてカチカチと音を立てた。
久瀬 薫
そして案の定こちらに気がつく。
しかし、一切咎めることなく授業を再開した。
久瀬 薫
八神 雅人
成程。そういえば八神グループというのは聞いたことがある。
久瀬 薫
八神 雅人
久瀬 薫
八神 雅人
久瀬 薫
それを読んだ瞬間、サッと顔色が変わった。
大方、親に久瀬の娘とは仲良くしとけとでも言われてたんだろう。
そうこうしている間に、授業が終わった。
八神 雅人
八神 雅人
久瀬 薫
無理矢理手を引かれ、廊下に出る。
誰にも使われていない倉庫へ行くと、壁に向かって突き放された。
八神 雅人
八神 雅人
八神 雅人
八神 雅人
胸ぐらを掴まれ、脅される。
…こいつも、この程度の男か。
脅したところで、なにも解決しないのに。
八神 雅人
久瀬 薫
八神 雅人
久瀬 薫
久瀬 薫
そう言ってキッ、と睨むと、怯んで手を離した。
そのすきに間を通って教室に帰る。
八神 雅人
久瀬 薫
久瀬 薫
八神は呆然としている。
そんなのお構いなしに、次の授業の準備をした。
翌日
八神 雅人
久瀬 薫
久瀬 薫
八神 雅人
八神 雅人
久瀬 薫
久瀬 薫
八神 雅人
久瀬 薫
八神 雅人
久瀬 薫
八神 雅人
八神 雅人
八神 雅人
久瀬 薫
八神 雅人
よし。よーくわかった。こいつは阿呆だ。
久瀬 薫
八神 雅人
それからと言うもの、
事あるごとにアピールしてくるようになった。
八神 雅人
八神 雅人
なぁ久瀬、おい久瀬って毎日毎日自慢ばっかりしてくる。
落とせなかった女はいないと言っていたが、その女達はどこの惚れたのだろう。
見当もつかない。
ある日のことだった。
次の授業は移動教室だったため、廊下に出る。
いつもは静かな廊下が、なんだか騒がしいと覗いてしまった。
今思うとそれが行けなかったのだ。
廊下の向こう側から走ってきた不審な男に、手を引かれ、首にナイフを当てられる。
犯人
犯人
こいつはもしや、先日担任が話していた強盗殺人事件の犯人か。
ならば人質は私ということか。
犯人らしき人物は、
私を連れて屋上へ行く。
犯人
犯人は持ってきたロープで私の手をくくると、給水塔に縛り付けた。
用意周到だな。
犯人
犯人
下に居る大勢の警官に向かって叫んだ。
警官は、何やら話をしているらしい。
それより…なんだ、私には100万とヘリ一台の価値しかないのだろうか。
そこのところはっきりしてほしいな。
久瀬 薫
久瀬 薫
久瀬 薫
犯人
犯人
犯人
犯人
久瀬 薫
犯人
犯人
犯人
犯人
犯人
犯人が私の肩を押した。
瞬間、
犯人
振り返った犯人の腕が、私に当たった。
バランスが崩れる。
そのまま私は、死を覚悟した。
柚月ふみ
柚月ふみ
柚月ふみ
柚月ふみ
柚月ふみ
柚月ふみ