2010年10月1日
優真さんが山梨に旅立つ日
優真さんは最後の日も芹沢さんのマンションで過ごした
芹沢さんと一緒に事務所に来た優真さんは
突然、私達に向かって深々と頭を下げた
沢田マリカ
芹沢大和
三村優真
三村優真
三村優真
梶原智香
高城寛貴(所長)
優真さんの瞳から涙が溢れていた
あすみさんの未来のために離れることを決意した
その日が来るまでずっと
時間の許す限り彼女に寄り添い続け
食事の時間さえも削り
ずっと手を握り続けた
そして昨日
優真さんはあすみさんの手を離した
溢れる涙を拭い
優真さんは決意を胸に駅に向かう
三村優真
三村優真
梶原智香
三村優真
高城寛貴(所長)
三村優真
所長と梶原さんは事務所に残り
芹沢さんと二人で駅まで見送ることになった
事務所から駅までは徒歩で20分ほど
市営バスも通っているが
歩いて駅まで向かうことにした
優真さんと出会ったのは七週間前
まだまだ蒸し暑い日が続いていた頃
拉致監禁の容疑で逮捕され警察署に勾留されて
私は毎日、警察署に通い
15分しかない面会時間を目一杯、使って話を聞いた
十日間の勾留の後に訴えが取り下げられ
釈放された優真さんと共にあすみさんを救出し
昨日、一般病棟に移る彼女の姿を見届け
あの日から丁度、七週間後の今日
優真さんは旅立っていく
どんよりとした重たい雲に覆われた空の下を
先頭を行く芹沢さんについていく形で
私と優真さんは並んで歩いていた
隣にいる優真さんは
一見した限りではどこにでもいる普通の青年
まさかこんな青年が事件を起こすなんて
そう誰もが思っただろう
優真さんの事件は幾度となく新聞なニュースなどで報じられ
ネットの掲示板などでも酷く叩かれたりしていた
最初は誘拐犯として扱われていた優真さんだったが
井川家のことがニュースで報じられると
一変して少女を救った”愛のナイト”
なんて見出しの記事も出るようになった
今ではもう優真さんを犯罪者扱いする人はいなくなりつつあるが
こうやって歩いているだけでもあちこちから視線を感じて
沢田マリカ
何とも落ち着かない状態だった
やっと駅の改札に到着し
優真さんは鞄の中から切符を出した
三村優真
三村優真
芹沢大和
沢田マリカ
三村優真
優真さんは最後に深く頭を下げ
改札の奥へと吸い込まれていった
芹沢大和
芹沢大和
もうすぐあすみさんの母、かすみさんと
兄の静(じん)さんの裁判が始まる
私達が面会で話したことも資料として提出することになっていて
更に取り調べをした検察官の調書も合わせて裁判で使用される
二人にどんな判決が下るのか
そしてこれまで見て見ぬふりを続けてきた
あすみさんの父、悟志さんはどうなるのか
夢で見た静さんの姿が浮かび
胸の奥がざわざわした気持ちになっていた
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