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サムネの花は【ハナニラ】です 花言葉は【悲しい別れ】 手紙と聞くとどうしても悲しい感じの話しか書けなくて申し訳ない
ものには魂が宿ると言われている
迷信かもしれないしそうじゃないかもしれない
どちらにしてもそんな言葉は存在する
僕は否定か肯定かと聞かれたならば
肯定と答えるだろう
よく言われているのが人型のものは御魂を宿す率が高いのだとか
憑依ともまた違う気がするけども
それが魂からすると適した体なのだろう
では何故ものに魂が宿るのか
そもそもものに魂が宿るとはなにか
その辺から話していこうと思う
まず魂が宿るというと少し抽象的だが
ここではものに自我が目覚めるという意味合いで【魂が宿る】としよう
これを前提に話を進めることにするね
これは至極単純な話である
その【もの】に対して生者が強く想い入れがあるからだ
人の言う愛と同義だと思ってくれて構わない
ただうなだれて人の手によって操られている人形も
自分を操る人が自分を大切にし想ってくれているのなら
そこから自我が目覚めて魂を宿してもおかしくはないと思う
似た理由でAIにも自我が目覚める可能性があるというのもこれに近いと思ってる
より高度なAIになればなるほど感情というものが生まれるとされるのだ
少し話がズレたね
ここからが本題で何故僕が肯定派なのか
それを詳しく話そうと思うよ
僕には愛すべき人がいた
”いた”ということはそういうことだ
彼女はもうこの世にはいない
数年前に不慮の事故で他界してしまった
当時の僕は悲しんだ
その姿はきっと哀れにも見えたかもしれない
まだ高校生だとしても大声で泣き叫び
地面に膝を崩して行き場の無い怒りを意味もなくその地面に拳という形で表して
その拳が血で濡れても何も思わずただ自分の無力さと失ったものの悲しみと
それにうちひがれていたのだから
そして帰らぬ彼女の名前を虚空に向け嘆き続けた…
彼女を失って数週間が経ったある日のこと
まだ僕も彼女を失った悲しみを拭いきれぬまま日々を過ごしていた
その日は奇しくも彼女が亡くなった時と同じでよく雨の降る日だった
2人で帰った帰り道も今はひとり
2人でこの歩道狭いね なんて話した歩道は今までずっと広く感じた
道なりに進むとY字路に行き着く
ここでいつも僕と彼女は分かれた
途中まで帰路は同じだが僕は右の道
彼女は左の道で分かれることになる
とはいえ僕もまだ幼いのか少しでも彼女と居たくて近くのミラー付近に留まり
他愛もない話をしていたりもした
そんなことを思っているとちょうどそのY字路に行き着く
今はひとりとなったためミラー付近に行く必要もない
そのまままっすぐ家に帰ろうとした時
向かい側から傘を指した一人の女性が目に入った
日常の一コマかもしれないが僕からすると珍しいと感じれた
普段ここで人に会うことは少ないので自分以外の人を見るのが珍しいのだ
しかし”珍しい”それだけの話
向かい側から傘を指してやってくる女性が居たとしてもそれだけなのだ
特に気にすることなくその女性とすれ違うように進んでいた時
僕とその女性が横に重なった瞬間耳元で声が聞こえたのだ
そしてその聞いた声に僕は驚き急いで振り返る
すると何故かすれ違った女性はもう遠くに移動していた
しかしその出来事が不可思議だと思うよりも先に彼女を追いかける事が先行した
理由はたった一つ
声を掛けてきたのは紛れもなく僕が愛した彼女だったからだ
ありえないと言われても構わない
けれどもこれは確かな事実なのだ
僕の頭の中は今話しかけてきた女性の事でいっぱいになっていた
だってあの人がもしかすると”彼女”かもしれないんだから
頭では理解してるつもりだ
彼女はとっくに居なくなっているって
けれどもまだ僕の中に埋まっている僅かな希望
もはやそれは希望というより願望かもしれない
その僅かな想いをたった一言に刺激されて
彼女をただ追いかけることにした
どれだけ早く走っても彼女には追いつけない
歩いているはずなのに僕よりもはるか遠くに移動してるのだから
とにかく僕は彼女を見失わないようにそれだけを目的に走った
それからしばらくしてとある場所に着いた
そこは彼女が亡くなった場所
いわゆる事故現場ということだ
ここに来た途端彼女の姿を急に見失った
まるで僕は彼女に導かれるかのように…
本当はこんなところ来たくは無かった
ここに来ると全てが嫌になるから
だから避けてここを通っていた
実はこの道は元々帰路だった
ここを通り先程のY字路に行き着くのだが
彼女亡き今ここを通ることは自分にとって苦痛そのものだ
だって近くにいながら僕は彼女の死に様を見ることしか出来なかったから
歩道がありその先に公園があるのだが
その日は少し寄り道をして公園で話をしていたのだ
その後そろそろ帰ろうとした時一人の男の子がボールを追いかけて道路に飛び出た
僕より先に彼女がそれに気づきその子を守るために彼女も飛び出た
反応が遅れた僕が道路の方に行った時には既に遅く
少年を庇って轢かれた彼女がそこに居た
ボールを追いかけた少年は彼女の腕の中で泣いていた
幸い軽傷で済んでいたとのこと…
少年の命は助かったが彼女の命は救えなかった
自分がはやく気がつけば誰も悲しい思いをしなくて済んだのに…
そんな僕の気持ちを代弁するかのように空模様は変わり
ねずみ色の空から雨という悲しみが降り出した………
結果論のようなものかもしれないがそれが僕の中を巡り
いつしかそれが枷になりここを避けるようになったのだ
それが今こうしてあの女性に導かれてやってきてしまったのだ
当時のことを思い出しながら公園にと足を運ぶ
そして雨で濡れたベンチに腰掛ける
ここで僕は彼女と話して……
感傷に浸ってると視界の端で何かが動いた
それを目で追うとあの女性だった
直ぐに僕は立ち上がり彼女を追った
彼女はくねくねと動き回りついにはとある草むら付近に姿を隠してしまった
そこに足を踏み入れ彼女を探す
すると思いもよらぬものが見つかった
泥だらけの学生鞄だ
その鞄に僕は見覚えがある
彼女が使っていたものと同じものだからだ
鞄を手に取り中を確認すると不思議なものがひとつ見つかった
手紙と思わしきものだ
これだけ雨が降っているにも関わらず何故かこの手紙は雨の影響を受けていなかった
不思議と思うもそれより中身が気になり中を確認する
手紙の内容を要約すると
僕に向けた想いを綴ったものであった
彼女は僕のことを好いてくれてはいる
それは分かっていたが口に出したり表情に出たり
それが極めて少なかった
だから僕がそれに対して不審に思ったと彼女は感じたのだろう
それに対しての答えとしてこの手紙があるのだ
手紙を読み終え再度彼女の愛を確認した僕はまたひとりでに泣いた
そんな時僕の前にあの女性が姿を現した
泣き崩れた僕は彼女を見上げる形で彼女の顔を見る
涙で視界がボヤけていたが確かにそこには僕の愛した人が存在していた
そして彼女は何かを言うでもなくニコッと笑い僕の頭を撫で霧のように消えた
彼女は霊体だったのかもしれない
いつまでも引きずってる僕を見兼ねて現れてくれたのかもしれない
けど僕はそうではなくこの手紙が”彼女”を作り出したのではないかとも思う
思いあるものに魂は宿る
彼女の残したこの手紙に彼女自身の魂が
宿り僕にみつけて欲しかったのではないか
そんな風に思って仕方ないのだ
あれがいわゆる幽霊と言われるものだったのか
それは今でも分からない
けれど確かなのは彼女は僕を想ってくれたこと
それだけは確かな事だと思う…