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翌日

おはようございます、朝です。

いつもなら面倒くさいし、休みたい気持ち全開の登校時間。

とても晴れやかな気持ちでございます。

なんだろう、家から解放される幸せ的な!?

降り注ぐ太陽が私の日常を祝福してる的な!?

そんな感じで、私は玄関を開け放った。

ミドリ

今日は……

ミドリ

今日は学校に行ける……!!

ミドリ

狂った昨日よさようなら……!!

ミドリ

私は!

ミドリ

今日!

ミドリ

日常に帰ります!!

ミドリ

行ってきまーす!!

行ってらっしゃーい

祖母

気をつけてねぇ

知識を吸収して、創作に活かしなさい!

祖母

人類の未来はミドリちゃんの肩にかかってるのよぉー

ミドリ

見送りの言葉が重々しい!!

すべてを忘れて元気に登校しようという前向きな気持ちを!

身内が灰燼に帰していく!!

ミドリ

もう……

ミドリ

理解があるのは、本来嬉しいはずなのに……

ミドリ

この場合、まったく嬉しくないどころか

ミドリ

悲しくなってくるのはなんでだろう……

なんというか、私一人にだけ重力が数倍かかってる気分だ。

ズーンと重くて、自然と猫背になってしまう。

そんな私に、鞄から無表情な声がかけられた。

アナ

なにがそんなに不満だというのだ

アナ

事情を理解した途端、お前の母親と祖母は

アナ

喜んで協力を申し出てくれたではないか

アナ

その上、お前の拙い画力を補うため

アナ

すぐさま最新の描画ソフトや機材も購入してくれた

アナ

こんなにも恵まれた環境にある救世主はなかなかいない

アナ

感涙しこそすれ、見送りの声援を疎んじるとは……

アナ

実に嘆かわしいことだぞ

ミドリ

やかましい!

ミドリ

物事の基準が宇宙規模なせいで

ミドリ

いたいけなJCの気持ち一つ

ミドリ

大事にできないチンアナゴめ!

アナ

チンアナゴではない

アナ

アニェアルバピンャだ

ミドリ

どう見たってチンアナゴでしょうが!

ミドリ

少なくとも今のアンタは!

ミドリ

私が最初に見た時と同じ姿です!

ちらっと鞄を見ると、どうやってくっついてるのか

私の鞄に器用にぶら下がったチンアナゴ状態のアナがそこにいた。

ぱっと見、趣味が悪すぎるキーホルダーだ。

……それにしてもドドメ色の人面チンアナゴなんて

JCが持つにはちょっとばっかりシュールすぎ……

ミドリ

って!!

ミドリ

アンタいつ鞄にくっついたの!?

アナ

うん?

アナ

出掛けにだが?

ミドリ

知りませんでしたけど!?

ミドリ

どんだけ読者に不親切なキャラなのアンタ!

ミドリ

私が認識してなかったくらいだし

ミドリ

読者も私とアンタが一緒に家を出たって

ミドリ

絶対気付いてなかったでしょ!?

ミドリ

普通、主人公とマスコットが外出する時は

ミドリ

もうちょっと描写があってしかるべきなのよ!!

ミドリ

描写のないキャラが急に話しかけてきたら

ミドリ

アレ?このキャラ今いた?

ミドリ

みたいになるでしょうが!

ミドリ

隠密行動もほどほどにしよう!?

アナ

……ふむ

アナ

どうでもいい事かも知れないが

アナ

お前の発言は現実と虚構を交えている

アナ

別個体と話すときは、せめて事実だけを話す事だ

アナ

そのクセがお前の作品も出ているため

アナ

全体的に独りよがりな仕上がりになっている

アナ

描いているお前自身は楽しいのだろうが

アナ

自分が理解している物を他人は理解していないという

アナ

基本的な部分を忘れて描き散らしているため

アナ

全体的に説明が不足しており

アナ

ストーリーに突拍子がない

アナ

背景の描写不足も重なり、キャラの動向も掴めないため

アナ

他人にはどう楽しめばいいかすら

アナ

まったく分からないものになっている

アナ

画力と共に、改善すべき点だ

アナ

自身を客観視することを心掛けるのがいいだろう

ミドリ

……

ミドリ

…………

ミドリ

朝から物ッ凄い剛速球で臓腑をえぐられた……

ミドリ

血反吐を吐きそう……

アナ

む、それはいかん

アナ

開腹手術か代替臓器が必要ならすぐに用意を

ミドリ

あ、やめて

ミドリ

冗談や比喩が通じない事は分かった

ミドリ

健康体なんでやめてください

ミドリ

キャトルミューティレーションとか

ミドリ

アブダクションは辞退します

アナ

……よく分からんが

アナ

救世主たる者、健康体なのは良い事だ

アナ

ところで先ほどから学習施設近辺だが

アナ

周囲から奇異の目で見られている

アナ

いいのか

ミドリ

へ!?

改めて周囲を見回すと、すでに校門直前。

確かに、かなりの生徒達が私に不審な目を向けていた。

ミドリ

へ?え!?

ミドリ

なんで!?

いやまぁ確かに、どっかから聞こえてくる声と

平然と話してる生徒はキモいだろうけども!

それにしたって、そんなヤバい人を見る目で見ることなくない!?

アナ

当然だろう

アナ

お前の言ったとおり、私は今

アナ

ただの可愛らしい人形だ

アナ

さらに、私の声はお前の耳にしか届いていない

ミドリ

は!?

ミドリ

そうなの!?

ミドリ

今知った!

アナ

今言ったからな

ミドリ

アンタそればっかりじゃん!

思わず大声でツッコんだ時、私は背後から頭を叩かれた。

ミドリ

いった!

???

ちょっとミドリ

???

アンタさっきからなに一人で騒いでんの?

ミドリ

ミドリ

みやこ

そこにいたのは、オタク仲間のみやこだった。

ミドリ

いやぁ……ちょっと色々ありまして……

みやこ

ミドリが変な子なのはいつものことだけど

みやこ

往来で奇っ怪な行動してると、ガチで通報されるよ?

ミドリ

うぇえ

ミドリ

それはヤだなー

みやこ

つーか

みやこ

今マジで通報しようかと思ってた

ミドリ

って、通報すんのアンタかい!

裏手でツッコむと、みやこはケラケラと笑って見せた。

みやこは、高校に入ってからできたオタ友達。

BLも読むけど、基本はNL推しで夢寄り女子。

一般人の擬態も完璧だから

本性を知らない人間には普通の美人にしか見えない。

みやこ

っつーかミドリ、今日顔色悪くない?

みやこ

昨日休んでたしさ

みやこ

肌も荒れてるみたいだし……

みやこ

さてはまた徹夜で原稿描いてたりした?

ミドリ

んー

ミドリ

今回はそれ以上にストレスかかる事が

ミドリ

私の身の上に降りかかっておりまして……

みやこ

えぇー

みやこ

家の事情じゃ仕方ないけど

みやこ

話聞くくらいならできるからさ

みやこ

無理しちゃダメだよー?

ミドリ

うわぁーん、みやこぉー!!

ミドリ

天使かー!

ミドリ

みやこは私の天使かー!!

みやこ

ちょっ、こらミドリ!

みやこ

私まで目立つから!やめなさい!

みやこ

ミドリ、ハウス!

ミドリ

犬じゃないからハウスしない!!

あぁ、理不尽に振り回された2日間とのギャップが押し寄せる!

奇異な目で見るなら見るがいい!

うちの友人は天使なんじゃ文句あるか!

……なんてことを、私が思っている間。

あんなにベラベラ喋るクセに、ずっと静かにしていたアナ。

うちに住み着いた毒舌チンアナゴ型宇宙人は

みやこの鞄についているキーホルダーを見つめていた。

アナ

……ほぅ

ちょっと変わった、水色のドラム缶に似たそれに

アナの目が細まったのを私は知らなかった。

アナ

なるほど、これは面白いことになった

アナ

この星が異常な速度で森林伐採を行い

アナ

それを食い止められなかった件

アナ

なにも吉田敬衛門1人の責とは言えんらしい

平坦な目が見つめる視線を嘲笑うように。

ドラム缶マスコットの亀裂のような目が、じっとりと鈍い光を見せた。

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