芹沢大和
かすみさんの実の父親が生きていた
それだけでも驚くべきことなのだが
この話にはまだ続きがあり
私達は更に驚くことになる
芹沢さんのパソコンに写し出されたニュース記事
沢田マリカ
梶原智香
沢田マリカ
芹沢さんは黙って頷くと
その事件について解説してくれた
1972年5月6日(土)
愛知県名古屋市の喫茶店にて
喫茶店の店主が殺害され売上金が盗まれた
従業員も軽い怪我をしたが命に別状はなく
現場に残されていた足跡からすぐに犯人が特定され
それが井川かすみさんの実父
戸坂信二郎と言う人物だったと言う
この頃は既にかすみさんの母親とは離婚していて
この事件が離婚の原因ではなかったようだが
戸坂信二郎には無期懲役の判決が下り
今も刑務所に服役している
私がまだ生まれる前に起きた事件
こんな事件があったことを私は知らなかった
かすみさんがこの事を知っているかはわからないが
もしトキ子さん達に知られていたら
もっと酷い扱いを受けたかもしれない
沢田マリカ
芹沢大和
梶原智香
芹沢大和
井川家の親戚に断られ
かすみさんの養父にも拒絶され
かすみさんの実父は刑務所にて服役中
その他に頼れる親戚もいない
あの家に帰すことは絶対にできないし
あすみさんにはもう
児童養護施設に行く以外の選択肢は残されていなかった
三村優真
やっと巡り会えた愛する人を守ることができない
優真さんの悔しい気持ちが伝わってくる
優真さんはあすみさんを拉致した犯人だった
訴えが取り下げられ釈放されたが
優真さんとあすみさんは世間的には赤の他人で
まだ大学生の優真さんが監護者になることはできない
あと二年
あすみさんが十八歳になるまでは待たなければ
権田沼三枝子(弁護士)
高城寛貴(所長)
あすみさんが無事に退院し養護施設に入ったら
沢田マリカ
三村優真
三村優真
三村優真
三村優真
少しでも彼女の近くにいたい
そんな想いから迷っているように見えた
しばらくして話し合いは終わり
優真さんは芹沢さんと共に芹沢さんのマンションへ
私は残っている資料を整理しながら
明日の静(じん)さんとの面会の準備をしていた
もう直ぐ静さんは少年鑑別所に送致されることになっていて
恐らく警察署で面会ができるのは多くてあと二回
鑑別所での面会には制限があるため
警察署にいる間に全てを終わらせたかった
今回の事件は単なる児童虐待ではなく
殺人未遂も視野に入れて捜査が行われている
あすみさんは冷房機もない部屋に監禁されていた
全身には化膿し腐臭を放つほどの酷い傷があり
発見が遅れれば死んでいたかもしれないと言われている
もしそれを認識した上で放置していたのだとしたら
未必の故意としてかすみさんには殺人未遂の実刑判決が下る
静さんが私との面会で話したことは全て
裁判にて証拠として提出されることになっているが
静さんはかすみさんに脅され虐待を強要されていて
尚且つ静さんも虐待の被害に遭っていたため
裁判でそれが立証され
静さんがきちんと反省し更正の意思を示すことができれば
保護観察処分となる可能性がある
私は私のできることを精一杯しようと心に決めた
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