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沢田マリカ
井川静（じん）
沢田マリカ
沢田マリカ
井川静（じん）
井川静（じん）
2010年9月2日（木）
静（じん）さんの勾留八日目
最高気温34.6度
まだまだ暑さの続くこの日
私は三日ぶりに警察署を訪れていた
静さんとの面会のため訪れたのは今日で三回目となる
優真さんの時のように毎日通うことはできていないが
取調室を一時間も使用させてもらえて
これまでの二回の面会でかなりの話を聞くことができた
ここで面会できるのは今日を入れて恐らくあと二回
この二回でどこまで話を聞けるかが勝負となる
今日はいよいよあの日のことを聞くことができる
優真さんがあすみさんを拉致した
あの日のことを……
2010年5月11日（火）
この日は朝からかすみさんの機嫌が悪かった
早朝に突然、叩き起こされ
静（じん）さんはかすみさんの寝室へ
直ぐにあすみさんを傷つけるように言われ
その足であすみさんのいるあの部屋へと向かう
鍵を開けて中に入ると
裸で眠るあすみさんの上に馬乗りになり
ナイフであすみさんの腕や胸、お腹などを切りつけた
井川あすみ
この時、既に失声状態だったあすみさんは
兄の暴挙に悲鳴をあげることもできず
痛みに耐えながら必死に抵抗して逃げようとするも
兄の腕力には敵わず
最後は力尽き
全身、血だらけの状態でベッドに横たわっていた
傷は浅く出血も直ぐに止まったが
身体中に残るヒリヒリとした痛みに苦しむ姿を
静さんは呆然と見つめるしかなかった
井川かすみ
かすみさんがやってきて静さんに向かってそう言うと
静さんは自室に戻り学校に行く支度を始めた
かすみさんは無理矢理あすみさんを起こし
出血が完全に止まっているかを確認すると
無言で制服をあすみさんに投げつけ
その足で静さんの部屋へ
井川かすみ
井川静（じん）
井川かすみ
井川かすみ
井川静（じん）
井川かすみ
井川かすみ
かすみさんの言葉は冷たく
もう母としての感情は感じられなかった
朝から虐待をさせられ食欲は減退し
着替えを終えその足で玄関に向かうと
井川悟志
井川悟志
井川悟志
こんな状況で食事なんてできるわけがない
悟志さんの言葉に吐き気がする
井川静（じん）
静さんの言葉に悟志さんの表情が曇る
井川悟志
井川悟志
制服に着替えたあすみさんが階段を降りてくると
悟志さんはあからさまなため息をつき
一気に家の空気が重くなっていく
その空気に耐えきれずに静さんが外に出ると
後に続くようにしてあすみさんが外に出てきた
もちろん両親の見送りはなく
ドアを閉めた直後
込み上げてくる怒りの矛先をあすみさんに向けてしまった
あすみさんを酷く罵倒し
それでも全く言葉を発しない彼女に
更に酷い言葉を浴びせた
井川静（じん）
静さんはまだあすみさんの失声に気づいていなかった
ただ我慢しているだけだと思い込んでいたのだ
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