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最後の秋、君に花束を贈る。

第1話 - 最後の秋、君に花束を贈る。

2019年09月22日

#〇〇の秋

#恋愛

#泣ける

要海暖

賀川舞彩

ん～！！

賀川舞彩

美味しい～！！

田中翔

…こぼすなよ。

賀川舞彩

分かってるって！！

俺の名前は田中翔〈たなかしょう〉。高校1年生。

こっちは美味しそうにアイスを頬張る賀川舞彩〈かがわまい〉

幼馴染みで中学２年から付き合っている彼女である。

賀川舞彩

あっ！！！

ベチャッ。

賀川舞彩

ああああああ
あ!!!!!!!!

賀川舞彩

アイスがー！！！！

田中翔

本当にお前はどんくさいよな

賀川舞彩

…うぅ…。

賀川舞彩

…。

田中翔

…ほら、俺のやるから泣くな。

賀川舞彩

…え！？ほんと！？

賀川舞彩

翔は優しいねぇ

田中翔

…そんなことないよ。

幸せな毎日だった。

あの時までは。

田中翔

…はぁー。

田中翔

楽しかった。

田中翔

…早く明日にならないかなー。

ベットにゴロンと寝転んだ。

田中翔

…あ、今何時だ？

そのまま俺は寝落ちしてしまったらしい。

時計を確認すると朝の3時だった。

田中翔

なんだ、まだ３時か。

…こんばんは。

田中翔

…え。

…空耳？

後ろですよ、後ろ。

田中翔

…わっ！！！

こんばんは。

田中翔

…誰だ、お前！！

田中翔

どこから入ったんだ？

まあまあ、落ち着いて下さいよ。

あなたの名前は田中翔さんで合ってますか？

田中翔

あぁ、田中翔だ。

あなたはこの秋、悪魔になります。

田中翔

…は！？

田中翔

…悪魔。

おめでとうございます。

今年はあなたが悪魔に選ばれました。

田中翔

…嘘だろ？

こういう噂があった。

毎年の秋の日に

抽選で悪魔になる人を選ぶと言う。

悪魔になった人は

大切な人を殺せ

そういう命令が下される。

悪魔になったとたん、自我を失い、人間だった頃の記憶も消える。

大切な人を殺したあと人間に戻され、大切な人が殺されているのを

見なければいけなかった。

田中翔

…悪魔って何なんですか？

田中翔

あんたらは何がしたいだよ？

田中翔

大切な人を殺して？

田中翔

そんで、人間に戻して血まみれの大切な人をただただ見てろって言うのかよっ！！！？

…何がしたいかなんて私の口からは言えません。

私はただ、命令を下しているだけなので。

田中翔

…はぁ！？

田中翔

…くそっ。

田中翔

なんで俺なんだよ。

今回、あなたが殺す人は

賀川舞彩さんです。

田中翔

…！！！

田中翔

…あぁ、嘘、だろ！？

田中翔

俺、が、舞彩を！？

田中翔

…殺す？

田中翔

…嫌に決まってんだろ？？

田中翔

何か他に方法はないのかよっ！！

…ありますよ。

あなたがもし、悪魔になるのを嫌がるなら

あなたに死んでもらいます。

田中翔

…。

田中翔

狂ってるだろ。

でも、舞彩が死ななくて済む。

舞彩が幸せなら…俺は。

田中翔

…じゃあ、俺が死ぬ。

田中翔

どうやって死ねばいい？

あなたの大切な人。

賀川舞彩さんに殺されてください。

もちろん、自殺は出来ません。

必ず、賀川舞彩さんに殺されてください。

他の人、自殺を計ろうとしても死ぬことは出来ません。

田中翔

…舞彩…。

田中翔

…でも、俺が殺された方が

田中翔

舞彩に幸せになってもらいたい。

田中翔

…俺は、もう幸せ者だから。

…分かりました。

武器はこれで殺されてください。

田中翔

…用件が多いな。

田中翔

…なんだ、これ。

田中翔

こんなもので殺せるのか？

これは“シオン”と言う

秋に咲く花です。

先を尖らしておりますので、これで死ねます。

あなたの心臓を見てみてください。

俺は服を脱いで、心臓の所を見た。

田中翔

…え。

田中翔

印がついてる。

赤い印が心臓の部分に書いてあった。

その部分に突き刺してもらって下さい。

明日の夜、12時までに。

田中翔

…それで舞彩は死なないんだな？

…はい。
12時までにあなたが死ねば。

田中翔

分かった。

俺はシオンを受け取った。

田中翔

…ごめんな、急にデートしたいとか言い出して。

賀川舞彩

ううん！！

賀川舞彩

私もデートしたいって思ってたんだー！！

田中翔

良かった。

今日、俺は殺される。

その前に思い出を作ろう。

１分1秒大切に。

賀川舞彩

暗くなるの早くなったね。

賀川舞彩

秋になったって感じ。

田中翔

…あぁ、そうだな。

俺たちは静かな山奥の小さな公園で星を眺めていた。

ここなら人が来ることはないだろう。

田中翔

…なぁ、舞彩。

賀川舞彩

…ん？

田中翔

好きだよ。

賀川舞彩

急にどうしたの？笑

賀川舞彩

私も好きだよ～。

田中翔

あのさ、俺

田中翔

…ちゃったんだ。

賀川舞彩

え？

賀川舞彩

聞こえなかった。

田中翔

選ばれちゃったんだ。

賀川舞彩

え？何に？

田中翔

悪魔に。

賀川舞彩

…え。

賀川舞彩

嘘。

田中翔

…。

賀川舞彩

嘘でしょ！？

賀川舞彩

嘘って言って！？

田中翔

…嘘じゃない。

田中翔

そんでさ、俺が殺す相手が…

田中翔

舞彩…なんだ。

賀川舞彩

…私？

田中翔

…ごめん。

田中翔

でもな、

賀川舞彩

…良いよ。殺されても

田中翔

…え？

賀川舞彩

私が翔にとって一番大切な人だって分かったんだもん！

舞彩は静かに涙を溢しながら泣いた。

田中翔

…あ。

田中翔

俺はさ、舞彩が死ぬのは嫌だ。

田中翔

だから、俺を殺してくれ

田中翔

舞彩。

賀川舞彩

…それって私が殺さないといけないの？

賀川舞彩

…無理だよ！！

賀川舞彩

私に殺すなんて！！

田中翔

お願いだ、舞彩。

田中翔

俺はもう幸せ者なんだ。

田中翔

舞彩は俺がいなくなっても

田中翔

幸せになって。

賀川舞彩

嫌…！！

賀川舞彩

…翔がいなきゃ
私は幸せになんてなれない。

賀川舞彩

ねぇ？私を殺して！！

俺は上の服を脱ぎ捨てた。

賀川舞彩

…何してんの、翔。

田中翔

俺はもう、命令を下された人に俺が死ぬって言ったんだ。

田中翔

だから、俺が死なないといけない。

賀川舞彩

…嘘。

田中翔

ここを突き刺してくれ。

俺は赤い印に指を指しながら、シオンの花を舞彩に渡した。

賀川舞彩

こんなので、
翔は死ん、じゃうの？

田中翔

…あぁ。

田中翔

悪くない、死だ。

俺は地面に寝転んだ。

田中翔

…早く。

賀川舞彩

…。

舞彩は俺の足に座った。

賀川舞彩

…やっぱり、できない。

賀川舞彩

…私、翔がいないと…

賀川舞彩

この先、どうしたらいいの？

賀川舞彩

私、生きていけないっ！！！

田中翔

なぁ、その花。

田中翔

シオンの花言葉知ってるか？

賀川舞彩

…知らない。

舞彩が落とした涙は俺の頬を伝っていく。

田中翔

“君を忘れない。”

田中翔

“遠方にある人を思う。”

賀川舞彩

…！！

田中翔

大丈夫。

田中翔

死んでも、お前の事は忘れない。

田中翔

ずっとお前の事を思ってる。

田中翔

お前は一人じゃない。

賀川舞彩

…うぅ。

賀川舞彩

翔…。

賀川舞彩

…大好き。

賀川舞彩

大好き、大好き。

田中翔

あぁ、俺も大好きだ。

俺は時計を確認した。

田中翔

もう、11時59分。

田中翔

さあ、俺を殺してくれ。

賀川舞彩

…う"ん。

賀川舞彩

…大好きよ、翔。

舞彩は優しく俺に微笑んだ。

だから、俺も笑いかけた。

今までにない

最高の笑顔で

賀川舞彩

、またね。

俺は静かに目を閉じた。

また、舞彩に出会えると信じて。

グサッ！！

田中翔

…うっ。

あぁ、痛くない。

なんて、美しく残酷な死に方なんだろう。

血が抜けていくのが分かる。

賀川舞彩

翔、翔、翔！！！！！

賀川舞彩

あ"あ"あ"あ"あ"
あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!!

そんなに泣かないでよ。

大丈夫だ。

きっとお前は大丈夫だ。

俺はお前を信じてる。

またな、舞彩。

今度会うときは

血まみれの花じゃなくて

あんたに

綺麗な花束を贈るよ。

ーENDー

この作品はいかがでしたか？

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頑張ってください。楽しみにしてます。

ありがとうございます！愛心さんも頑張って下さい😍 by雨恋

要海暖

プロフィール

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