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私は人を殺したことがあります(仮題)

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私は人を殺したことがあります(仮題)

13 - 令和6年 11月23日 真相【1】

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2024年11月23日

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令和6年 11月23日 TELLRE編集部

休みということもあって、編集部はひっそりと静まり返っている。

もちろん、渡辺も休みではあるのだが、少しばかり気になる変化が例の作品にあり、念のためにデスクのメールを確認しにきたのだ。

スマートフォンでも済む話なのであるが、編集部ならプリンターなどの設備もあるし、なによりも休みの編集部は静かだ。

考え事をするにはもってこいだった。

渡辺

(物語はクライマックスという場面で次回に続く――)

渡辺

(それからしばらく音沙汰もない)

渡辺

(念のために連絡を入れてみるか……)

渡辺はPCを立ち上げる。

渡辺

芒尾様。
お世話になっております。
TELLREの渡辺です。

渡辺

いただいたメールには全て目を通させていただきましたが、いいところで物語が終わってますね。

渡辺

続きが気になるところです。

渡辺

それと、表紙のほう変更されたんですね。

渡辺

これ、以前よりもシンプルでいいと思います。

芒尾

……お世話様です。

芒尾

そう言っていただけるとありがたいです。

芒尾

これ実は、自分の手を撮影したんです。それを加工して作ったものなんですよ。

芒尾

最初はデジカメで撮影してやろうと思ったんですけどね、色々と難しかったので、妥協してスマートフォンで撮影しました。

渡辺

うん、いい感じだと思います。

渡辺

それで、続きのほうはいつ頃になりそうですか?

芒尾

……それは渡辺様次第かと思います。

渡辺

え?
そうなんですか?

芒尾

はい。
そうなんですよ。

芒尾

きっと、事件のことも調べて下さったのでしょう。

芒尾

ならば、現時点が明らかになっていることがあるはずです。

芒尾

それを答えとして、私に返信していただきたい。

芒尾

私が罪を告白することは本当に正しいのか。

芒尾

それを判断する材料にさせていただきます。

渡辺

芒尾さん。
それは一体どういうことですか?

渡辺

芒尾さん、返事をいただけませんか?

渡辺

芒尾さん。

渡辺

一体、なにが言いたいんだろう……。

渡辺はたった1人の編集部に向かって、ぽつりと呟いた。

その静けさを切り裂くかのように、渡辺のスマートフォンに着信。

渡辺

誰だ?
こんな休日に電話をかけてくる物好きは……。

ディスプレイには進藤の名前が表示されていた。

渡辺

はい、渡辺です。

進藤

あ、先輩ー。
進藤ですぅ。

渡辺

おー、進藤どうした?

渡辺

言っておくが、しばらく飯は奢れないぞ。

渡辺

どこぞの高級寿司のせいで、給料日まで金欠だからな。

皮肉を込めて言ってやると、相変わらずの間の抜けた声で返してくる進藤。

進藤

あー、そうなんですかぁ。
それよりも先輩、私ねぇ、続報を見つけちゃいましたぁ。

渡辺

続報?

進藤

はい、この前見つけた事件あったでしょう?
それの詳細が書かれている雑誌を見つけちゃったんですぅ。

渡辺

へぇ、あの一度却下した事件だよな。

進藤

そうですぅ、とりあえず直接やり取りしたいのでぇ、どこかご飯行きませんかぁ?

渡辺

だから飯は奢らないと言ってるだろう?

進藤

……今日は回るかもしれませんよぉ。

渡辺

それならなんとか……って、また寿司かよ。

渡辺

しかも、なぜ俺が飯を奢る流れになってんだ?

進藤

ふふふふふっ……。

進藤

進藤、お手柄だからですぅ。

その含みのある言い方は、なにかを掴んだような感じだった。

渡辺

……そこまで言うなら、飯くらい付き合ってやる。

渡辺

ただ、回ってなかったら帰るからな。
お前を置いて。

進藤

大丈夫ですぅ。
今日は回りますぅ。

渡辺

これから大丈夫か?

進藤

はい、お昼ご飯前だから、お腹空いてますぅ。

渡辺

じゃあ、どこかで落ち合うか。

進藤

はいー、そうしましょう。

そこで渡辺は電話を切ると、財布の中にクレジットカードが入っているのを確認して、小さくため息を漏らしたのであった。

進藤

回るお寿司からのデザートとか最高ですぅ。

渡辺

あの、進藤……そろそろ本題のほうに入ろうか。

渡辺

いやぁ、先輩びっくりだよ。
まさか寿司からスイーツにハシゴするとは思ってなくてさ。

渡辺

このままじゃ、お前が文字通り美味しい思いをするだけで終わるだろう?

進藤

あー、忘れてましたぁ。
これ、先輩に渡そうと思ってたんですぅ。

進藤

ほら、前に調べた事件ってぇ、長男が母親を殺してぇ、自殺しちゃったって事件だったじゃないですかぁ。

進藤

でもぉ、その自殺の方法が、進藤的に納得できないんですぅ。

進藤

記事のここ、見てください。

【母親を殺害した疑いのある長男は、家の裏にある枯れ井戸に飛び降りて死亡……。井戸の中には母親の遺体も】

渡辺

これ、この前の事件か?

進藤

そうなんですぅ。
井戸から飛び降りるとか、超怖くないですかぁ?

【現場には大木からロープが吊るされており、首吊りを図ろうとしたが失敗し、井戸に飛び降りたとされている】

【家の中から遺書が発見され、死亡した長男が母親を殺害していたことが明らかになった】

渡辺

(この事件……話の筋は例の話の通りなんだよなぁ)

渡辺

(井戸の深さは10メートルあるはずだから、打ちどころが悪ければ充分に死ねる)

渡辺

(それに、大木にロープを吊った形跡があったのも、シンジが井戸に降りるためのものだったとしたら……)

渡辺

ん?
進藤どうしたんだ?

ふと、目の前でパンケーキを切ることに苦戦している進藤の姿が目に止まった。

進藤

このナイフ、ご自由にお使いくださいコーナーから持って来たんですけど、すごい切りにくいんですぅ。

渡辺

なんだよ、そのご自由にお使いくださいコーナーって……。

進藤

あそこですぅ。

進藤の視線の先には、ドリンクバーカウンターがあった。

どうやら、ナイフはそこから持って来たらしい。

渡辺

あぁ、進藤。
それは多分な……。

パンケーキが切れない理由。それを進藤に説明してやろうとした時のことだった。

渡辺

……え?

これまで、頭のどこかで引っかかっていた違和感。それこそ、渡辺自身も気づいていなかった些細な違和感が、頭のなかで収束していく。

渡辺

確かに、お手柄だよ、進藤。

進藤

えー?
どうしたんですかぁ?

懸命にパンケーキを切ろうとしている進藤の、間の抜けた声。

渡辺

そうか……そういうことだったのか。

渡辺

そう考えれば、全ての辻褄が合うじゃないか。

進藤

1人で納得してないでぇ、私にも分かるように説明してくださいよぉ。

渡辺は笑みを浮かべ、進藤の手からナイフを取り上げた。

進藤

あ、なにするんですかー?

渡辺

ヒントはこいつさ。

渡辺

なぜ、進藤のパンケーキは切れなかったのか。

渡辺

それが例の物語の答えなんだ。

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