令和6年 11月23日 TELLRE編集部
休みということもあって、編集部はひっそりと静まり返っている。
もちろん、渡辺も休みではあるのだが、少しばかり気になる変化が例の作品にあり、念のためにデスクのメールを確認しにきたのだ。
スマートフォンでも済む話なのであるが、編集部ならプリンターなどの設備もあるし、なによりも休みの編集部は静かだ。
考え事をするにはもってこいだった。
渡辺
渡辺
渡辺
渡辺はPCを立ち上げる。
渡辺
お世話になっております。
TELLREの渡辺です。
渡辺
渡辺
渡辺
渡辺
芒尾
芒尾
芒尾
芒尾
渡辺
渡辺
芒尾
渡辺
そうなんですか?
芒尾
そうなんですよ。
芒尾
芒尾
芒尾
芒尾
芒尾
渡辺
それは一体どういうことですか?
渡辺
渡辺
渡辺
渡辺はたった1人の編集部に向かって、ぽつりと呟いた。
その静けさを切り裂くかのように、渡辺のスマートフォンに着信。
渡辺
こんな休日に電話をかけてくる物好きは……。
ディスプレイには進藤の名前が表示されていた。
渡辺
進藤
進藤ですぅ。
渡辺
渡辺
渡辺
皮肉を込めて言ってやると、相変わらずの間の抜けた声で返してくる進藤。
進藤
それよりも先輩、私ねぇ、続報を見つけちゃいましたぁ。
渡辺
進藤
それの詳細が書かれている雑誌を見つけちゃったんですぅ。
渡辺
進藤
渡辺
進藤
渡辺
渡辺
進藤
進藤
その含みのある言い方は、なにかを掴んだような感じだった。
渡辺
渡辺
お前を置いて。
進藤
今日は回りますぅ。
渡辺
進藤
渡辺
進藤
そこで渡辺は電話を切ると、財布の中にクレジットカードが入っているのを確認して、小さくため息を漏らしたのであった。
進藤
渡辺
渡辺
まさか寿司からスイーツにハシゴするとは思ってなくてさ。
渡辺
進藤
これ、先輩に渡そうと思ってたんですぅ。
進藤
進藤
進藤
【母親を殺害した疑いのある長男は、家の裏にある枯れ井戸に飛び降りて死亡……。井戸の中には母親の遺体も】
渡辺
進藤
井戸から飛び降りるとか、超怖くないですかぁ?
【現場には大木からロープが吊るされており、首吊りを図ろうとしたが失敗し、井戸に飛び降りたとされている】
【家の中から遺書が発見され、死亡した長男が母親を殺害していたことが明らかになった】
渡辺
渡辺
渡辺
渡辺
進藤どうしたんだ?
ふと、目の前でパンケーキを切ることに苦戦している進藤の姿が目に止まった。
進藤
渡辺
進藤
進藤の視線の先には、ドリンクバーカウンターがあった。
どうやら、ナイフはそこから持って来たらしい。
渡辺
それは多分な……。
パンケーキが切れない理由。それを進藤に説明してやろうとした時のことだった。
渡辺
これまで、頭のどこかで引っかかっていた違和感。それこそ、渡辺自身も気づいていなかった些細な違和感が、頭のなかで収束していく。
渡辺
進藤
どうしたんですかぁ?
懸命にパンケーキを切ろうとしている進藤の、間の抜けた声。
渡辺
渡辺
進藤
渡辺は笑みを浮かべ、進藤の手からナイフを取り上げた。
進藤
渡辺
渡辺
渡辺