TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

神経質そうな青年  新海拓馬と私は1階の探索を行うことになった

1階には、先ほどいた食堂や図書館と呼んでも差し支えない

蔵書が収められている 巨大な書斎があった

ジャンルは広く 私の好きなミステリやSF、純文学や雑誌、児童書、新聞記事まで揃えられていた

野嶋隆

これは、凄いな。

新海拓馬

こんな事態でもなければ、僕はここに篭っていたのにな。

そう言いながら 新海は背表紙を見て回る

野嶋隆

新海くん。何か発見はあるかい。

新海拓馬

じいさん、いくら何でも気が早すぎるな。僕はこれでも真剣なんだよ。今、探してるところさ。

野嶋隆

ああ、悪かった。

新海は気を悪くしたようだった

若者との交流 特に、このように神経質な青年との対話はかなり難儀だ

思春期というものは 自身が体験していても

いざ、大人の目線で接すると 当人からは疎ましく思われる

ヤマアラシのジレンマである

…私の孫もいずれこうなるのだろうか

私は今年11歳になる孫の顔を思い浮かべた

やはり生きねばなるまい

生きて、帰るのだ

新海拓馬

じいさん。おい、じいさん。

野嶋隆

ん?ああ、すまない。少し考え事をしていた。

新海拓馬

耳が遠くなったのかと思って、絶望するところだったよ。

新海拓馬

そんなことより、僕はこんなものを見つけた。

そうして新海が差し出した本

新海拓馬

あの心理学がどうとか言ってた女、新城だっけか。それに触発されて少し気になったんだけどね。

 タイトルは 「心理学概論」というものであった

新海拓馬

パラパラめくってみると、意外に面白いもんだね。ほら、僕は普段から色んなメディアをチェックするからね。素の知識でも他分野にわたって精通しているのさ。

新海拓馬

例えば、この「ストックホルム症候群」なんてコラムを見てご覧。まあどうやら、心理学用語としては微妙みたいだけど、コラムとして挙げられているように、犯罪被害者が加害者に対して協力的・好意を抱いたりする心理状態のことだよ。

新海拓馬

やっぱり僕って博学なんだなあ。こんな専門外のこともしっかりと把握してるんだし。

野嶋隆

"ストックホルム症候群"……か。

以前、どこかで聞いた覚えがある

テレビで見たのか 何かの本で読んだのか

知るよしもないが その言葉に何かが響いた

野嶋隆

……何だろうか。

新海拓馬

じいさん、何をぼーっとしてるんだ。

新海拓馬

少し難解すぎたかな?
まあ、僕の話についてくるのなら、もうちょっと勉強しないとね。

野嶋隆

話はよく分かったよ。
少し思うことがあってね。

新海拓馬

何だって言うんだい?

野嶋隆

いや、まだ漠然としたものだから説明もできないが。

新海拓馬

ふん。漠然なんて言葉は嫌いだね。論理は確実に整合性を持っていないと。

野嶋隆

そうだな……。

上の空で書架を見上げていると

私はその背表紙に印刷されている

ある名前に強く反応した

野嶋隆

これは!!

新海拓馬

うわっ!何だよ、驚かさないでくれるかな?僕は元々心臓が弱くてねあまりに動悸が激しいと死んじゃうかもしれないんだつまり場合によっては損害賠償も考えられる……

野嶋隆

待ってくれ。良いからこれを見てくれないか。

ほぼ聞き取れないほど 早口に言葉を次から次へだす青年を制して

私は一冊の本を渡した

心理学の専門書のコーナー

タイトルには 「心は紡がれている」 とある

 その本の著者の名前

新海拓馬

な、こ、こいつは

野嶋隆

ああ。

野嶋隆

間違いない。"新城綾香"だ。

新海拓馬

待てよ!同姓同名ということはあり得る!なら、そう簡単に決め打つのは誤りだ。

野嶋隆

それはどうだろうな。私の読みでは、これは確実に彼女の本だ。

野嶋隆

ちょっと返してくれ。

私は新海から本を返して貰い 1ページ目をめくった

そこにはやはり 裏付けるようにはっきりと写っていた

野嶋隆

ほら、ここに新城綾香の"著者近影"がある。

新海拓馬

ほ、本当だ。完全に新城の顔じゃないか!!

新海拓馬

でも、何でこんなものがあるって分かったんだよ。

野嶋隆

見つけたのは偶然だ。但し、新城さんの顔写真があるのは必然だと思うぞ。

新海拓馬

どういうことだ?

野嶋隆

彼女の姿を見ただろう。
どう思った?

新海拓馬

どうって……何だよじいさん。

野嶋隆

綺麗だとか、美しいなんて感想はなかったか。

新海拓馬

は、はあ?
何言ってんだよじいさんあんたは良い歳してそんな淫らなことを恥ずかしいと思わないのかそれにあんたがどう思っていようと僕は……

この青年は 焦ると早口になる癖があるらしい

野嶋隆

分かった。悪かった。
だがね、事実彼女は世間一般で言う美人だ。

新海拓馬

……それがなんだ?

野嶋隆

小説だけではなく、こう言った専門書であろうと作者の容姿が優れているのなら、出版社側としてはどうにか使いたいと考えるわけだ。

野嶋隆

その方が、普通の書籍より幾らか儲けるんだろうからな。

新海拓馬

…-野蛮だ。

野嶋隆

そう、あまり褒められたものではない。しかし実情はそうだし、こうして彼女の顔写真は載っている。

新海拓馬

なるほどな。だから確証を持って特定することができたのか。

野嶋隆

そういうことだ。

新海拓馬

おい、待て。あいつは確か専門外だとか抜かしていたが、こうやって本まで出してるんだよな。

新海拓馬

何で隠す必要がある?

野嶋隆

それが肝要なのかもしれない。

果たして この事実は何を意味しているのか

考えてみても 隠す必要性など微塵もない

謎が謎を呼んだ

新海拓馬

ちっ。分からないな。

新海拓馬

だから何だと言えば済む話でもある。

野嶋隆

そう……だな。

野嶋隆

しかし、彼女に直接聞いてみる必要はあるな。その方が、すっきりするだろう。

新海拓馬

そうだね。僕が問い詰めてやる。

青年は意気揚々とそう言い放った

私は念のため 他に何かないかと注意深く探したが

書斎での収穫はこれ以上得られなかった

新城綾香…… 彼女の正体は?

そしてもう1人気にかかる人物

橘真衣 彼女もまた謎に包まれている

私は自身に訴えた

いったい何が真実だと言うのだ!

loading

この作品はいかがでしたか?

1

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚