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過去、人が住んでいたのだろうか。 廃屋はボロボロだったが 部屋が幾つかあって、 机やベッドなども揃っていた。 流石に水や電気、ガスは 通っていなかったが 一時的な活動拠点としては 十分過ぎるくらいだろう。
# 司 .
司くんにそう言われ、 部屋を幾つかみて回る。 暫く悩んだ後、 類は司の手を引き 一つの部屋の中へと誘った。
# 類 .
選んだのは、きっとお姫様の様な 女の子が住んでいたであろう部屋。
# 司 .
類は暫しの逡巡を経て言う。
# 類 .
# 類 .
何とも類らしい理由に 司は笑ってしまう。 幼い頃から無意識に 能力を使ってしまうほどに、 人の笑顔が好きな類。 一目惚れだったが__ 司は類がが好きになっていた。 切られることもなく 肩まで伸び切った髪に 代償故の病弱さからか 白くて華奢な体。 救ってくれてありがとうなんて 儚げに微笑む類も 御伽噺が好きなんて、と 恥じらっている類も 可愛らしくて仕方がなかった。 勿論、これは初恋ゆえに 司自身に自覚はなかったのだが。 さて、話は戻り2人がおやすみ、と 名残惜しげに別れた後の話。 部屋は暗く、闇と静寂だけが その場を支配していた。
# 類 .
類は一つ、ため息をつく。 今日1日で、 色々な事がありすぎた。 先刻、司には語らなかったこと。
# 類 .
涙と嗚咽が、夜の闇に溶ける。 両親は呪いに血を分けたとして 僕の目の前で処刑された。 生きたまま皮を剥がれ、 焼かれ、最後には首を落とされた。 2人の断末魔と それを息子に聞かせまいと 必死に抑えようとする姿。 そんな2人を、見せ物か それ以下としか 思っていないような、嘲るような瞳。
# 類 .
類の目には涙が溜まっていたが もう眠っているであろう 司を起こすまいと 声を必死に殺した。
月に一度、村の会合で 村の重要事項を決める。 その日も変わらず 寝込んでいた類のために 両親は薬草をとりに 森へと向かっていた。 会合で類やその両親の 処刑についての話が出た時、 類が初めて救った あの木こりだけが、 両親と類の処刑に反対していた。
# 善 .
# 善 .
# 善 .
# 善 .
木こりは穏やかな男だった。 そんな彼が激昂する様子に 会合会場の空気が ぴり、と張り詰める。
# 類 .
# 善 .
類の登場に会合室はざわめく。
# 類 .
発熱のせいか 類は肩で息をしている。
# 善 .
# 類 .
類は苦しそうな呼吸の合間に 自分は処刑で構わないから、 どうか両親だけは 見逃してほしいこと、 この場で類たちを 守ることは木こりにとって 得策でないことを告げた。 木こりは顔を歪める。 「こんな運命、幼い子供が 背負っていいものじゃない」と。 年相応に死にたくない、 助けて、と泣き喚くことも できるだろうに、 この子供は何処か自分の感情を 置き去りにしたように話す。
# 類 .
そう言い残して 体を重たげに引き摺りながら 類は去って行く。
# 善 .
木こりはその後ろ姿を 追いかけたが、 類は神隠しに遭ったかのように、 その場から消えてしまっていた。
翌朝、類の願いも虚しく 類の両親は処刑台のある 広場へと連行されていた。 それを伝えに来た木こりは 焦っていて、相手が病人なのを 忘れたかのように、 類を乱雑に抱えると 広場へと駆け出す。
# 類 .
# 類 .
類の声には 不安と焦燥が乗っている。
# 善 .
木こりは項垂れる。
# 善 .
類が前を向くと、 縄で括られた両親と目が合う。
# 類 .
# 類 .
冷徹の仮面を被った村長が言う。
# 長 .
# 親 .
両親が自分の名を呼ぶ。
# 善 .
# 善 .
涙をこぼしながらも、 身を寄せ合っている父と母を 両手いっぱいで抱きしめる。
# 善 .
# 類 .
泣き崩れる類を木こりは 再度抱き抱える。 2人の縋るような目に頷き、 その場を離れる。 両親の処刑は粛々と、 呆気なく終えられた。 両親に向けられていた 嫌悪の視線は、当然類に向く。 木こりに抱えられている類に 村長の手が伸びた瞬間、 木こりは走り出した。
# 長 .
村長の鋭い声が響く。 狂った目、手、声。 隠しようのない悪意が、 類にだけ注がれている。 視えてしまう。 木こりは森や山に 慣れているだけあって、 進む足取りは しっかりとしていて速かった。 森に入った瞬間、 突然叫び声が聞こえた。
# 類 .
直感的に、そう思った。 空間や時空ごと 歪んでいるのではないかと 言うほど大きなそれは 人々を吸い込んでいく。 その場に残ったのは 両親の死体と、数人の人々、 村長に木こり、類だけだ。 こうなってしまえば ルールも何もない。 木こりは追ってくる人々を 容赦なく殺しながら進んだ。 猟師紛いの事もやっていた 木こりの銃の腕前は相当のもので 火事場の馬鹿力と言うやつか、 狙いを外す事なく 的確に追っ手を屠っていった。 残るは村長だけとなった時、 吹き矢が木こりに突き刺さった。
# 善 .
木こりの体が斜めに傾き、 類の体が投げ出される。 吹き矢には即効性のある 毒が塗られているようだった。
# 類 .
# 善 .
木こりは走る類にも聞こえる様 大きな声で叫ぶ。
# 善 .
怒声にも近いそれは 類の耳にもしっかり届いた。 雨の降り出した森を類は走る。 流している涙も、 痛いくらいの雨が隠してくれた。
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