朝起きたら青にいしかいなくて、
青にいの様子もなんだか変だった。
レンジの前でぼーっと 突っ立っている青にい。
橙
名前を呼んでも返事はなくて、 少し大きい声で「青にい!」って 呼んでみたら
青
青
と、いつもの調子で挨拶された。
その後もいつも通り一緒に ご飯を食べていたから、 気にしないようにしていた。
でも、ご飯食べてる時に黄ちゃんが
黄
と話しかけてきた。
黄
橙
いつもの青にいと言えば...
青
紫
紫
青
黄
桃
橙
赤
桃
赤
紫
赤
赤
青
赤
青
黄
青
黄
青
紫
...みたいな感じやからな...
それに...
橙
黄
いつもは六人でご飯を食べているのに 今日は三人。
今日は...何かが違う。
黄
青にいに確認しようとする黄ちゃん。
橙
なんとなく、それを止めた。
黄
なんで止めたのか、自分でも よくわからない。
だけど...
橙
そう、思った。
黄
橙
黄
黄
黄ちゃんは意外にも俺の意見を 聞き入れてくれた。
橙
青にいのこと...よく見ておかないと...
しばらくして、青にいが 食器洗いを始めた。
普段は紫にいか桃にいが やってくれてるけど、今日は いないからだと思う。
青にいには申し訳ないが、 俺はとりあえず食器だけ下げて、 黄ちゃんとゲームをすることにした。
ゲームを始めたのは良いものの...
黄
俺...ゲーム苦手やしな...
黄
黄
黄
黄
赤がいればなんとなく丸く収まるが、 今日は赤がいない。
それに、黄ちゃんの当たりも俺に 対してだからかいつもより少し強い。
橙
橙
本当に、わからないのだ。
黄
黄
橙
わかる気がない...。
俺はそもそもわかろうとさえ していないということなのか。
だとしても才能というのはやはり どんなことでも必要だし、ゲームの 才能が少し欠けてるのだとは思う。
橙
...才能がないから。
黄
青
青
まだ言われるのか、と覚悟した時、 青にいが助けに入ってくれた。
普段こんな喧嘩をしているのは 桃にいと青にい、もしくは 俺と黄ちゃん。
どの喧嘩にしろ、紫にいが 止めに来ていた。
だから、青にいが止めに来ることが すごく新鮮だった。
黄
青
青
青にいもゲーム上手い方なのに...
俺の気持ち...わかるのかな...
青
それは俺にとっても困る...
黄
黄
黄
黄
黄
黄ちゃん...大人になったんやな...と 一人感心する。
橙
黄
別に今回のことに関して 怒っていないし、謝ってほしいとも 思っていなかった。
ただ...
橙
少し、悲しくなるだけ。
橙
橙
橙
チームプレイだとしても、 バトルだとしても、俺が下手なせいで 楽しくなくなったらどうしよう、と どうしても考えてしまう。
迷惑なのではないか、と。
ただ、それだけ。
黄
黄
たまには可愛いことも言うんやな...
黄
橙
本当は聞こえている。
「またやりましょう」と。
黄
青
青にいが笑った。
いつもの...青にいやな...
青
そう優しい声で言う青にい。
橙
黄
照れながら催促してくる黄ちゃん。
橙
青
いつもの日常だって、思ってた。
待っても待っても3人は 帰ってこないし、青にいももう 何時間もリビングに来ていない。
勉強でもしてるのかな、と思って 昼ご飯とかは自分たちでやったけど、 さすがに夜になっても 戻ってこないのはおかしい。
それに3人のことも心配やし...
橙
そう呟き、俺は階段を登った。
橙
そう声をかけ、とりあえず 青にいの部屋を覗いてみたが、 そこに青にいの姿はなかった。
橙
よく見ると、赤の部屋のドアが 少しだけ開いていることに気づいた。
青
泣いてる...?
心配になった俺は、もう何年も 入っていなかった赤の部屋に 足を踏み入れた。
橙
橙
青
驚いたようにこちらを見る青にいの 目は赤く腫れ上がっていた。
青
目をこすってわざとらしく笑う。
無理に笑ってることくらい、 俺でも気づく。
青
なんかあったって... ありすぎなんやけど...
橙
橙
そう伝えると、青にいはきょとんと した顔をして、数秒間黙った。
青
青
時間も知らんかったんや...
橙
青
青にいは少し俯いて、何かを考える ような仕草をした。
青
青
きっとそれ以上に心配なことや 不安なことがあるはずなのに、 それでも謝ってくれる青にいは やっぱり優しい。
橙
青
青
橙
走って部屋を飛び出す青にい。
突然すぎて、何も聞くことすら 出来なかった。
...どういうこと?
一体何が起こってるんや...
考えても考えても答えは 見つからない。
橙
赤のベッドに腰掛ける。
橙
ぼーっと机の下を眺めていると、 ノートが一冊落ちていることに 気づく。
橙
中を開くと、日記だった。
20○□年10月25日
今日から日記を書いてみようと思う。
特に理由はないけど、なんとなく。
いつまで続くかな。
せめて三日坊主にならないように...
1番初めのページは、 そんな始まりだった。
“三日坊主にならないように”と 書いていたが、次のページの日付は 10月31日で少し笑ってしまった。
20○□年10月31日
今日はハロウィンなんだって。
「トリックオアトリート」って みんな言ってた。
言わなかったけど。
青にいとかは紫にいにすごい ねだってたかも。
そんなにお菓子好きなのかな。
ずっとこんな内容が続いていくのだと 思って、ただただページを めくっていた。
でも...
橙
その先の内容は決して明るいものでは なかった。
赤が、ずっと性別のことで 悩んでいたこと。
誰にも認められない苦痛を 感じていたこと。
俺たちの言葉が、傷つけて しまっていたこと。
学校でも、いじめられていたこと。
どこにも居場所がなかったこと。
自殺を決意していること。
兄ちゃんたちがいないのって...
橙
赤は女の子。
それは決められた運命で、二度と 変わることなどないと思っていた。
赤が「俺は女じゃない。男だ」って 言い出したときは、俺もまだ子供 だったし、全く理解できなかった。
何度も何度も 「違うよ。赤ちゃんは女の子だよ。」 なんて、わかりきったことを 伝え続けた。
それが赤を 傷つけていることも知らずに。
いつしか、何度言っても 変わらない赤を 見放すようになっていった。
俺はもちろん、兄弟全員。
黄
黄
これは、ゲームに限らずなこと なのかもしれない。
俺たちは、赤のことを理解しようと さえしてなかったのではないか。
橙
俺たちが殺したってこと...?
赤を傷つけていたってこと...?
いじめにも気づけなかった...
赤を...見ていなかった...
不安やら焦りやら申し訳なさやらが 俺の心を乱していく。
桃
桃にいの...声...?
夢...?
現実...?
確かめるためなのかさえ わからないが、ノートを手に、 廊下の方に近づく。
桃
桃...にいだ...
橙
桃
俯く桃にいの視線は俺の右手にある。
桃
橙
桃
そう言ってベッドを指差す桃にい。
言われるがまま、俺は ベッドに腰掛ける。
桃にいは扉を閉めると、 俺の隣に座った。
桃
今にも泣きそうな声で 俺の名前を呼ぶ桃にい。
桃
桃
橙
桃
それは...理解したくなくても、心の どこかで理解してしまっていたこと。
でも...
橙
桃
桃
紫にいまで...?
桃
桃
橙
泣きながら謝る桃にいに、怒ること なんてできるわけがなかった。
橙
橙
ただ、それだけ...。
桃
質素な部屋に沈黙が流れる。
橙
橙
桃
桃
橙
桃
桃
桃
橙
桃
橙
桃
桃
桃
母
紫(幼少期)
桃(幼少期)
母
紫(幼少期)
桃(幼少期)
母
母
紫(幼少期)
母
紫(幼少期)
桃(幼少期)
母
紫(幼少期)
母
母
母
紫(幼少期)
母
桃(幼少期)
母
母
紫(幼少期)
母
母
母
母
母
母
母
母
紫(幼少期)
桃(幼少期)
母
母
桃
桃
橙
桃
桃
橙
橙
橙
橙
橙
橙
桃
桃
桃
橙
橙
なんとなくここにはいられなくなり、 俺は部屋を出た。
黄
黄
自分の部屋に向かう途中に、偶然 黄ちゃんに出会ってしまった。
橙
俺は何も言うことができず、 そのまま部屋に入った。
橙
静かな空間に一人。
勝手に涙が溢れる。
必ず抱きしめてくれた紫にいは、 もういない。
橙
橙
橙
これから先もずっと、6人で 生きていけるって思ってた。
でも、それを壊したのは俺たち。
最初から理解する気なんてなかったの かもしれない、なんて今さら気づいた ところで赤も紫にいも戻ってこない。
橙
赤。
また会いたいなんて言ったら...怒る?
怒る...やろな...
...最初から赤のことを理解する気が なかったんや、って黄ちゃんの言葉で やっと気づいた。
ほんまにごめん。
たくさん...ひどいことしたよな。
たくさん...傷つけたよな。
紫にいは赤と同じ選択を してしまったけど...
俺は生きることで本当に反省してる ことを証明したい。
わがままなお願い、聞いてくれる...?
もし...
もし、最後まで命を全うできたら...
ゆるして。
コメント
3件
ブクマ失礼します
今回も最高でした(*^^*)!!!