青
起きて一番初めに聞いた言葉は、 それだった。
黄
そう尋ねてみたけれど、僕には 関係ないそうで。
これ以上問い詰めても青にいも 困るだけだろう、と思い、 「...そうですか」と一言返す。
とりあえず橙にいを起こせ、との ことだったので、僕は仕方なく 橙にいの部屋に向かうことにした。
橙にいの部屋に行く途中、僕は ある場所で立ち止まる。
黄
長いこと入っていない赤の部屋。
少しだけなら、いいよね。
黄
黄
ドアを開けた先には、何もなかった。
正確には、ベッドと机はあったけど、 誰も使ってないみたいに綺麗だった。
黄
ノート...。
ノートの存在を、僕は知っていた。
もしかして...
黄
前に一度だけノートを覗いた時に 見えてしまった。
“さよなら”という四文字が。
黄
なにが理由でもないが、 ため息が出てしまう。
とりあえず...知らないふり、だよね...
“弟”だから...
数年前ノートの存在を知って、赤には 申し訳ないけど、時々覗いてた。
男の子なんだ、って伝えてきたときは 少し驚いてしまったけど、
ノートを見て本気なんだって思った。
あとは...赤が「赤ちゃん」って 言われた時だけ、悲しそうな表情に なるのに気づいた。
だから、認めないといけないって 思うようになった。
見るたびに酷い内容になっていく それに僕は怖くなって、お兄ちゃん たちに何度も相談した。
黄
紫
黄
紫
黄
紫
黄
紫
紫
黄
紫
紫
黄
黄
桃
黄
桃
黄
桃
桃
桃
桃
黄
桃
桃
黄
親のいないこの家で、上二人の意見は 絶対であり、その責任もまた、 上二人にある。
「弟なんだから」
赤のことになると、兄たちは そればかりで、僕の話に耳を 傾けようともしなかった。
だから、きっと今も...
黄
黄
本来の目的をすっかり忘れていたが、 橙にいのことを起こすために2階に 来たことを思い出した。
僕は慌ててノートを閉じ、 橙にいの部屋に向かった。
黄
橙
黄
橙
黄
黄
黄
橙
橙
手を伸ばして、起こせ、とアピール してくる橙にい。
黄
黄
橙
力を込めて引っ張り上げたのに、 座ったままの姿勢で動かない 橙にいに少し腹が立つ。
黄
黄
黄
「う〜ん」という曖昧な返事を 聞き流し、僕は部屋を出た。
リビングに来たが、青にいの 姿は見当たらない。
黄
そう思いキッチンに向かうと、 明らかに温め終わっているレンジの 前で、突っ立っている青にいがいた。
黄
青
黄
黄
青
ようやく気づいたかと思えば、 なんとも間抜けな声で返事をされた。
黄
黄
黄
青
青
黄
全く兄らしくない行動の青にいに、 いつものことだがため息が出る。
黄
青
まだぼーっとしている様子の青にいに 多少呆れつつ、ご飯の用意を進めた。
青
橙
黄
5分ほど経って、全員分の 用意ができた。
結局青にいがほとんど 準備してくれたので、やはり お兄ちゃんなんだな、と思う。
青
橙
黄
橙にい...なにも気づいてないのかな...
仕掛けるか...
黄
橙
黄
あくまで、何も知らないふり...
黄
橙
何も知らなそう...?
橙
どっちだろう...
どちらにしろ、僕は 知らないふりをしないと...
黄
黄
どう動くかな...
橙
黄
橙
やはり知ってるのか...?
黄
橙
「そんな気がする」
橙にいの予想は、多分当たっている。
青にいはこの様子だと本当に 何も知らない。
つまり、青にいに聞いても青にいが 混乱するだけで、何もヒントが 得られない。
だからここは...
黄
黄
こう答えておくのが無難だろう。
この後青にいがどう動くか見て、 何をするか決めよう...
そう考えていると、食べ終わった らしい青にいが立ち上がり、 食器洗いを始めた。
いつもとは違うけど行動的には普通...
僕もいつも通り動くか...
黄
黄
橙
橙
黄
橙
橙
渋々ではあったが、橙にいをゲームに 誘い出すことに成功した。
やり始めたのはよかったのだけど...
黄
やはり当たりが強くなってしまうな...
黄
黄
一生懸命なのもわかってるし
ふざけてるわけでは ないのも知ってる...
だけど...
黄
協力ゲー選んだのが悪かったのかな...
黄
橙
橙
“わからない”か...
その言葉を聞いて、なぜか 赤のことを思い出す。
赤のことを認めるように説得しても、 耳を傾けなかった兄たち。
兄たちは、赤のことをわからなかった わけではない。
認めなかったわけではない。
ただ、わかろうとしなかった。
認めたくなかった。
ただ、それだけ。
橙にいの言ってることが、 それと重なってしまった。
黄
黄
橙
橙
言い返されると無性に腹が立つ。
黄
青
青
ブチギレ寸前だったその時、 青にいによって言葉を止められた。
黄
青
青
「橙くんだって頑張ってる」。
それは確かにそうで、頭ごなしに 否定するわけにはいかない。
青
黄
黄
黄
黄
黄
いくらイラっとしたからって、 さっきのは流石に言いすぎていた。
これは僕にも非がある。
橙にい...怒ったかな...
橙
黄
橙
橙
橙
橙
橙にい...いつもそんなこと 思ってたんだ...
赤のことをみんながみれて いなかったように、僕も橙にいの ことをみれていなかった...
違う...違うよ橙にい...
黄
黄
何で照れてんだろ、僕。
黄
橙
聞こえてるくせに。
黄
怒りと恥ずかしさとが混ざり合って、 少し強い口調になる。
青
青にいが...笑った...
青
本当に知らないんだ...
橙
いつも通りいつも通り...
黄
橙
青
これからどうなっちゃうのかな...
青にいはあの後リビングから いなくなり、それから見ていない。
二人でゲームをしていたけど、 そろそろお昼なので、 お腹が空いてきた。
黄
橙
橙
橙
そう。
まだ紫にいと桃にいも帰っていない。
正直、赤と同じようになっていても おかしくないと思ってきていた。
赤だって確証はないけど、 きっと僕の予想は当たっている。
橙
青にいは多分赤の部屋にいる。
今ごろノートを見て驚いているのでは ないだろうか。
そこに橙にいが行けば パニックになるに違いない。
ここは止めるべきか...
黄
黄
黄
精一杯の嘘。
大丈夫かな...
橙
橙
バレずに済んだな...
黄
橙
黄
橙
黄
橙
橙
黄
橙
黄
橙
黄
橙
黄
黄
黄
橙
黄
黄
橙
黄
橙
黄
橙
橙
黄
黄
橙
紫にいってすごかったんだ...
黄
橙
黄
橙
なんだかんだ完食し、 食器洗いまで済ませることができた。
黄
橙
現在時刻18時。
あの後洗濯とかもして、結構 家事は頑張ったと思う。
もう夜ご飯の時間だけど...
黄
橙
橙
赤、紫にい、桃にいがいないまま。
青にいも部屋から出てきていない。
黄
橙
橙
黄
今の止め方はさすがに 不自然だったかもしれない...
黄
黄
弟なりに...止められた...かな....
橙
橙
黄
これだったら自然...かな...
橙
橙
黄
きっと橙にいなら気づいてない...はず
黄
橙
黄
橙
橙
黄
黄
橙
橙
黄
黄
...青にい
降りてこないな...
橙
橙
さすがに限界...だよね...
黄
黄
橙
黄
橙
黄
橙
黄
橙
橙
黄
橙
黄
青にい...大丈夫かな...
橙にいもパニックに ならないといいけど...
食べ終わったら行ってみよう...
そう思いつつおにぎりを一口頬張る。
中の具は、赤の大好きな 明太子だった。
ご飯を食べ切り、上に来てみた。
一応青にいの部屋も覗いたが、やはり そこに青にいの姿はなかった。
黄
僕の予想は当たっていた。
半開きになった赤の部屋のドア。
そこから漏れる二人の声。
青
青にいの声...少し震えてる...?
橙
橙
青
青
橙
青
青
青
青にいらしい心配だな...
橙
青
青
まさか...外出る?
盗み聞きしていたと思われると 嫌なので、一応隠れてみる。
橙
橙にいの困惑した声と共に、 青にいは部屋から飛び出してきた。
声をかけようかと考えたが、 なんとなくそれは違う気がしたので やめておいた。
黄
ふと壁に目を向けると、 落書きがされている。
これは僕が幼稚園くらいの時に 書いたんだっけ。
黄(幼少期)
赤(幼少期)
赤(幼少期)
黄(幼少期)
黄(幼少期)
赤(幼少期)
赤(幼少期)
赤(幼少期)
黄(幼少期)
黄(幼少期)
赤(幼少期)
赤(幼少期)
黄(幼少期)
...喜んでもらいたかっただけなのに 紫にいと桃にいに怒られて 二人で泣いたっけ。
黄
大好き...だったんだよな...
お兄ちゃんたちのこと...
今は...きっと嫌い...だよね
桃
桃にい...?
桃にいの声...だよね...
上に上がってくる気配がしたので、 とりあえず自分の部屋にこもる。
桃
橙
泣いてる...?
桃
桃
やっぱり見たんだ...。
橙
桃
廊下をちらりと覗いてみると、上着を クローゼットにかけている 桃にいがいた。
かけ終わると、すぐに赤の部屋に 戻って行った。
桃
桃にいの声も震えてる...
桃
桃
紫にいのことも...か...
橙
桃
桃にいも間に合わなかったんだ...
橙
桃
まだ生きてた...?
桃
桃
桃
橙
なるほど...
紫にいは赤のノートを見て慌てて 行ったけど、もうすでに 赤の息はなかった。
そこで自分も、としているところを 桃にいは見て、そして止めた。
しかしその言葉は紫にいの 耳には届かず、紫にいも亡くなった...
黄
桃にいが亡くなってないだけまだ 良い方だとは思うけど...
橙
桃
桃
橙
赤の日記からして、学校でのいじめも 要因の一つだとは思う。
でも、桃にいの言う通り、僕たちが 大きな要因にはなっているはずだ。
桃
桃
桃
橙
“わかってやれなかった”...
わかろうとしなかっただけじゃん...。
桃
橙
約束...僕も知らない...
桃
桃
桃
絶対にみんなで協力すること。
否定しないこと。
必ず、生きること。
この三つがお母さんとの約束だった。
そう、桃にいは話していた。
桃
桃
橙
桃
桃
こんなに悩んでいる桃にいは 初めて見た。
驚く反面、その姿を見て、 何も思わない自分もいる。
そんな僕は、おかしいのかな...。
橙
“兄ちゃんだけの責任ではない”
これは橙にいの言う通りだと思う。
桃にいだけが悪いとは僕も思わない。
橙
廊下でわざと会って 知らないふりするか...
そう思い、僕は部屋から出る。
赤の部屋からこちらに歩いてくる 橙にいがいた。
黄
黄
全て知っているのに、 「どうかしたんですか...?」なんて 聞く方がきっとどうかしている。
橙
橙にいは何も言うことなく、 自分の部屋へと入っていった。
黄
何も知らないふり...しないと...
赤の部屋の前で立ち止まる。
黄
ドア越しに、話しかけた。
桃
返事が返ってくる。
黄
桃
桃
黄
黄
そう言って、僕は部屋に入った。
それから、橙にいにしていた話を もう一度僕にしてくれた。
弟なりに、精一杯振る舞った。
でも...泣けなかった。
もう、怒りを隠しきれなくなった。
黄
桃
黄
桃
黄
黄
黄
黄
桃
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
桃
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
やっぱり。
コメント
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続き楽しみです!頑張ってください\(*⌒0⌒)♪