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抱きしめて欲しい……

痛いって思うくらい、

苦しいって思うくらい。

お願い……

そう言って自分が涙を流していた。

目の前には━━━━。

午前5時

朝、

起きた時には俺の隣には誰もいない。

当たり前だがなんだか悲しい現実。

隣に誰かがいた事なんてないのに

なんだか、物足りない。

自分が包まれていた布団は

昨日から一気に気温が下がって

もう冷たくなっていた。

昔からの週間で

窓を開け、伸びをすると

嗚呼、今生きてる

そう思う。

おはよう。

そう呟いても

挨拶を返す人はここにはいない。

インスタントコーヒーを飲む。

そう言いたいところだが

コーヒーは実は苦手だから

カフェオレとトーストを持って

椅子に座る。

リモコンを手に取りテレビをつける。

ニュースキャスターは

全国各地の秋の名所を紹介している。

あ、ここ。

一駅越こえたところにある自然公園。

今日は休日。

予定もないし、行ってみることにした。

ザクザク

足で踏んだ落ち葉が鳴る。

朝早い秋の名所は

年配の人が散歩したり、

ジョギングをする人が数名だけ。

俺みたいな10代や20代の人は

1人も見えない。

綺麗……

思わず口から零れた。

おじいさん

君も紅葉を見に来たのかい?

あ、はい。

そうなんです。

おじいさん

そうか、そうか。

おじいさん

最近の子はここにきても紅葉じゃなくて、

おじいさん

スマホの画面ばかりじゃ。

おじいさん

お前さんのような若いものもおるじゃのう。

そういえば。

スマホ家に置いてきてしまった。

充電したままだ。

一番綺麗に見れる場所って知っていたりしますか?

おじいさん

そうじゃのう。

おじいさん

ここをずっと行って左に曲がると木に隠れた獣道と階段がある。

おじいさん

それを登ったところに樹齢80年くらいの大きな木があるじゃ。

おじいさん

もう足腰も悪くて行けないが10年前ばあさんと見に行ったら喜んでくれてのう。

いい思い出ですね。

おじいさん

人気のないところだから行くのなら気をつけるんじゃぞ。

ありがうございます。

言われた道を歩く。

ただひたすらに、無言で。

階段を登っている途中で

目的の大きな木の一部が見えだした。

運動不足な俺には

少し急で、長い階段だった。

階段の一番上に来た。

わあ……

思っていたよりも大きな木だった。

おじいさんが言っていた通りだった。

風が強く吹いたその時。

俺は紅葉し色ずく葉の中に

桜を見た。

あれは、

人?

桃色の髪が風になびいていた。

それは今にも散ってしまいそうで、

俺には少し寂しくて、怖く感じた。

俺の感情を揺さぶった本人は

顔に本を被せて

木の上で寝ていた。

背格好からして若い。

自分と同じくらいの歳くらいの青年だ。

危なくないのかな。

大きな木とはいえ、

寝返りをうてば落ちてしまう。

結構な高さだから

落ちれば大怪我になるだろう。

あ、

木の周りを見ると

簡易的な梯子がかかっていた。

揺れる縄梯子を落ちないよう

ゆっくりと登る。

あのー

そこ危ないですよ。

起きてください。

んあ……?

起きた。

あのここ危ないので降りて寝た方が……

うわぁ!!

えっ……

目を開けたら知らない人がいたんだ。

それは驚くだろう。

けれど

そこまで大きな声を出されるとは。

驚いて梯子から手を離してしまった。

危なっ!

人に言う前に自分が気をつけなければ。

そう学んだ。

大丈夫か?

あ、ありがとうございます。

そっちの手で梯子つかんで。

はい。

ゆっくりと手を伸ばし移動する。

俺が完全に梯子に捕まるまで

桃色の髪の青年は

俺の手を話さなかった。

すみません、助けていただいて。

全然いいよ。

危なかったな。

なんで登って来たんだ?

あなたが寝返りうって落ちたら危ないと思って。

お節介でしたよね。

青年は大人びた顔立ちで

20代くらいだと思う。

俺のために登ってくれたのか。

ありがとな。

そう言って頭を撫でてきた。

お、俺は子どもじゃないです!

高二です!

え、まじか。

中学生かと……

俺も高二だからタメな。

え、あ、うん。

とりあえず危ないから降りて話そうぜ。

分かった。

俺は桃。お前は?

俺は赤。よろしく桃くん。

こちらこそ赤。

赤はなんでここに?

ここに来ていたおじいさんに大きくて綺麗な木があるって

教えてもらったんだ。

ああ、あのじいさんか。

俺はここで本読んでたんだけど

風が気持ちよくて寝ちゃってた。

危ないから木の上で寝ちゃダメだよ。

ごめんごめん。ありがとな。

赤は高校どこなんだ?

俺は苺ヶ丘だよ。

まじ?俺も!

俺2組!!

俺は6組。

桃くん音楽科なんだ。

ああ、将来声に関する仕事に就きたくて。

赤は凄いな6組は進学科じゃん。

頭いいんだな。

良くないよ。

俺だって……

ん?

さ、桃くんて大人っぽいんだね。

最初大学生かと思ったよ。

赤は中学生だと思ったけどな笑

し、失礼だな……

……。

どうした?悩み事か?

お願いがあるの。

桃くん。

俺に出来ることならやるぞ。

……ありがとう。

俺を

俺の願い。

この寂しさを誰でもいいから

埋めて欲しい。

誰でもよかった。

このときは。

抱いて欲しい。

は?

俺たちの寂しさを。

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